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第42話「宇宙要塞攻略戦」【Dパート 戦いの火蓋】

 【4】


「糸目の嬢ちゃん。頼まれてたヤツ、やっておいたぜ?」

「おっ! ホンマかヒンっちゃん! おおきに!」


 裕太が内宮とともに格納庫へ足を踏み入れると、整備班長のヒンジーがドヤ顔で内宮へと語りかけた。

 何のことだと尋ねる前にスキップで足早に搭乗機の方へと向かう内宮。

 その背中を追っていくと、ふたりが言っている意味がわかった。


「これって、〈エルフィス(ストライカー)〉じゃねえか!?」

「へへーん、せやで笠本はん!」


 〈エルフィス(ストライカー)〉、それは英雄・銀川スグルが裕太を打ち負かしたエルフィスである。

 ビーム・スラスターという特殊な推進機構を有したその形態は、高機動戦闘を可能にしつつ火力を損なわないという特徴を持つ。

 その機体の強力さは、裕太自身の身で体感している。


「いつの間にバックパックを? 内宮お前、エルフィスしか持ってきてなかっただろ?」

「なんでも、3ヶ月前にうちらを地球に送り届けた後にバックパックだけスグルはんが置いてってくれたんやと。なあヒンっちゃん?」

「ああそうさ。スグルの野郎、新しいバックパックを作るからいらねえとか抜かしやがってよ。マークツーに載せようかと思いつつ放置しっパナだったんだなこれが」

「それを、うちのエルフィスに装着してもらったっちゅうことや! エヘン!」


「いいけど千秋、ぶっつけ本番で乗りこなせるの?」


 通りかかったレーナの一言に、「ゔっ」とだけ言って固まる内宮。

 一大決戦の直前に乗りなれない機体への換装など、よくよく考えてみれば自殺行為である。

 しかし意地なのかプライドなのか、内宮は顔に光る線を浮かび上がらせながら「できらあっ!」と啖呵を切った。


「うちかて、そんじょそこらのパイロットちゃうで! どんな機体やろうと、乗りこなしてみせるわ!」

「大丈夫なら良いけど。それじゃあ50点、ジュンナ、千秋……搭乗!」


 レーナの掛け声に合わせ、一斉に自らの機体へと駆ける一行。

 裕太もまたジェイカイザーのコックピットに駆け寄り、そのままパイロットシートへと飛び込んだ。


 システムを起動し、灯るコンソール画面。

 周囲の風景が全天モニターへと投影され、機体のセットアップが進んでいく。


『裕太、勝てるのか?』


 不意に、コンソールに写ったジェイカイザーの顔アイコンが問いかける。


「ジェイカイザー、怖いなんて言うなよ?」

『怖くなど無い! だが今までのどの戦いとも違い、敵は強大だ。それをこれだけの数で攻め落とせるものかと』


「敵を殲滅することが勝利条件ではありませんよ、ジェイカイザー」


 ジェイカイザーのアイコンの隣に、〈ブラックジェイカイザー〉のコックピット内でケーブルを伸ばしまくったジュンナが表示される。

 いつもと変わらず無表情なままだが、その変わらない冷静さはジェイカイザーに効くことだろう。


「私達の目的はマスターの救出、並びにコロニー・ブラスターの掌握です。要塞へと強襲し中枢を握れば容易に敵を無力化できるでしょう。敵の全滅はそれを成すための手段の一つに過ぎません」

「ジュンナの言うとおりだぞ、ジェイカイザー。それに、何度もとんでもない状態から勝ってきた俺たちなら、やれるさ」

『……そうだな!』


 発言に強気さが戻ったところで、レーナの〈ブランクエルフィス〉が格納庫と宇宙を隔てるジェルカーテンの前に立っていた。

 裕太はゆっくりとペダルに力を込め、その背後までジェイカイザーを歩かせる。

 後方には同様に、ジュンナ機と内宮機が一列に並んでいた。


 それぞれの出撃準備が完了した途端、コンソールに深雪が映る。


「作戦開始です。みなさん出撃してください」


 彼女の声に呼応するように、一斉に宇宙へと飛び出す4機。

 即座にジェイカイザーと〈ブラックジェイカイザー〉が合体し、ハイパージェイカイザーとなり戦闘の支度を終える。


 負けられない戦いが、始まった。




  ────Eパートへ続く

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