表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/398

第41話「火星の嵐」【Cパート 突入、火星の大地】

 【4】


 コックピットの中で発進シーケンスを進めながら、カーティスはロゼに渡しそびれた指輪を指で摘み上げる。

 これを渡せるか、あるいは拒絶されるか。

 内心、不安をいだきながら指輪をケースに仕舞う。


「カーティスの旦那ぁ、本当にこの飛行機で地上に降りれるんですかぁ!?」

「ああ!? 連中が降りれるっつってんだろ? だったら俺たちゃ信じるしかねえだろ!」


 キャリーフレームの輸送支援機という未知の存在たる〈ダイザー〉への、モウブが叫ぶ不信感はわかる。

 しかし、使ったことのないパラシュートや機体の保護機構に頼っている身としては、今更な話である。


「ビービー言ってる暇があったら覚悟決めろい! あのシェンとかいう小娘に遅れを取るぞ!」

「腹ぁ括ってますが、やっぱ怖えもんは怖えッスよ! なあジン!」

「ん、ああ……そうだな」


 煮え切らないようなジンの声。

 わざと通信機に入るように、カーティスはコンソールを殴りつけた。

 ガンッという重い音がコックピットに響き、通信先が静まり返る。


「今更、降りるなんてナシだぜ?」

「わ、わかっちゃいますよ。ただ、作戦が本当に成功するか……」

「なんじゃなんじゃ、いい歳の大人が怖気づきおってからに」


 これまで無言でいたシェンが、突然声を荒げる。

 年端も行かぬ少女からの喝に、ジンとモウブが黙り込む。


「我らがやらねば地球の危機。勝てば万々歳じゃろうが。できるとか、できないとかではない。やるしかないんじゃよ」

「そ、そうだよな」

「ああ、頑張ろうぜ!」


「よし、行くぞテメェら!!」


 覚悟を決めた4人を乗せた、それぞれの〈ダイザー〉が噴射口から炎を吹き、次々と宇宙へと飛び出していく。

 そのまま高度を落とし、火星の大気圏へと突入。

 予め決められた降下地点へ向けて、自動的に〈ダイザー〉が位置を調節しつつ地上へと向かっていった。


「……たしかに、こいつは怖えがよッ!」


 ガタガタと揺れる〈ヘリオン〉のコックピット内で、カーティスは手を震わせた。

 〈ダイザー〉から送られる情報から、機体底部が高温であることが通知される。

 その温度は並のキャリーフレームであれば一瞬で爆散する数値。

 この薄っぺらい航空機から一歩踏み外せば、一瞬にしてあの世行きという事実が戦い以上の恐怖を与えてくる。


 カメラ越しに映る機体底部の風景が暗闇を抜け、雲を抜け、薄っすらと赤茶色に包まれた地上が見えて来た。


 と、同時にレーダーに映る赤い光点。

 鳴り響くアラート。


「全員回避しろぉッ! 待ち伏せだッ!!」


 地上から放たれる無数のビームが〈ダイザー〉の底面を貫き、機体の側面をかすめる。

 攻撃を逃れようと防御を固めつつ、風穴だらけの板っペラから飛び降りバーニアを吹かせる。


 他の3機と共に赤土の岩板に着地した時点で、周囲は完全にネオ・ヘルヴァニアのものと見られる〈ザンドール〉に包囲されていた。




    ───Dパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ