第40話「ヘルヴァニアの民」【Jパート メッセージ】
【9】
「お久しぶりです、笠本裕太さん」
Ν-ネメシスの艦橋へと入った裕太へ、深雪がクールな表情のままペコリと礼をした。
他のブリッジクルー達はすでに配置完了しており、いつでも発進できるといった感じの中、裕太はなぜ深雪に一人呼ばれたのかがわからなかった。
「遠坂さん、俺に用があるって聞いたけど……」
「エリィさんから、メッセージが届きましたから。最初にあなたに見せたほうがいいかなと思いまして」
「エリィから!?」
裕太は逸る気持ちを抑えながら、深雪に促されるままに艦長席のコンソールを覗き込む。
そこには確かに、エリィの文体でメッセージが綴られていた。
「受け取ったのはつい先程です。差し支えなければ、どのような内容かお伝え頂ければ」
「……俺達への応援の言葉以外だと、火星の地上にある基地から送られるエネルギーで宇宙ステーションが守られている……って書いてあるな」
「ふむ……敵の狙いがコロニー・ブラスターである以上、宇宙ステーションの攻略は必須でしょう。なので、その件については後ほど作戦会議ですね」
「なあ、このメッセージ俺の携帯にコピー取っていいか?」
「もちろんです。アドレスをここに入力してください」
※ ※ ※
────裕太へ。
あたしは無事よ! だけど、あなたの撃たれた傷は大丈夫?
このメッセージは、いろいろ頑張ってネオ・ヘルヴァニアの基地の中から送ってるわ。
なぜかネオノアがあなたの無事を知っていたけれど、やっぱり実際に会って無事を確かめたい!
ネオ・ヘルヴァニアはコロニー・ブラスターっていう巨大兵器で地球を脅すつもりみたいよ。
けれど、その兵器をコントロールしている宇宙ステーションは火星の地表にある要塞からエネルギーを受けて、バリアーを張っているんですって。
だからこの凶行を止めるには、地上と宇宙で同時に攻撃を仕掛けないとダメそう。
色々書きたいことはいっぱいあるけれど、それは助かってから一杯話しましょ!
告白の続きも、聞かなきゃいけないし!
それから、ロゼさん。本当の名前はロザリーさんだけど、カーティスさんとの事にすこし迷いがあるみたい。
盗み聞きした内容から私のExG能力でピンときたことだけど、もしかしたらカーティスさんと一緒に暮らしていたときのことを幸せに思っていたのかも。
もしもカーティスさんもあたしを助けに来てくれるなら、ロゼさんのこと教えてあげて!
ちょっと文章を見直す余裕がなかったから、もしも内容が変だったらゴメンね!
火星で会えるって、あたし信じてるから!
銀川エリィ
それが、エリィから送られてきたメッセージの全文だった。
廊下で携帯電話の画面越しに文章を読み終えた裕太は、目尻にたまった雫を拭い取り、ギュッと拳を握りしめて決意を固めた。
「……ジェイカイザー、絶対にエリィを助けような!」
『ああ! そして、青く美しい星・地球をネオ・ヘルヴァニアの魔の手から守るのだ!!』
奇しくも、ジェイカイザーが本来作られた目的と合致することになった今回の戦い。
しかし、その救う相手の中にハーフではあるがヘルヴァニア人であるエリィが入っているのは、その目的がジェイカイザー自らが助けたいと思った相手だからである。
エリィを、そして地球を守るための戦いが、始まろうとしていた。
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登場マシン紹介No.40
【エイジス】
全高:7.8メートル
重量:9.3トン
赤茶色の装甲が特徴である、クレッセント社製の軍用キャリーフレーム。
ギリシア神話において女神アテナが用いる防具「アイギス」から名前を取られただけあり、堅牢な守りを主とする機体。
肩部のバリアフィールド発生装置から発せられる障壁によって、全方向からのあらゆる攻撃を防ぐことが可能である。
内側から射撃する際は、射線にあたる部分のバリアが自動的に一瞬解除されるため、バリアを張りながら攻撃することが可能。
しかし、バリアフィールドの維持には膨大なエネルギーが必要であり、またエネルギーの制御が不安定なため強い攻撃を立て続けに受け続けると危険。
また、バリアにエネルギーを割かなければいけない都合上、大火力兵器を用いられないのが弱点である。
【次回予告】
ついに裕太たちΝ-ネメシス隊と、ネオ・ヘルヴァニアが激突する。
地上基地を制圧すべく火星の大地に降り立ったカーティスたち。
彼らを待ち構えていたのはネオ・ヘルヴァニアの大軍勢と、ロザリーの姿だった。
かつて誓いあった者同士が、戦場で再び交錯する。
次回、ロボもの世界の人々第41話「火星の嵐」
────貫くのは男の意地か、女の気迫か。




