表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
305/398

第40話「ヘルヴァニアの民」【Dパート 保留】

「でも地球に国を作るって、それはつまり地球に攻め込むってこと?」

「何も暴力で無理やり奪い取るわけではない。コロニー・ブラスターを向けて、地球人と会談を行うだけだ」

「コロニー・ブラスター……?」

「その一撃で惑星をも貫く、地球人が考えた光の矢だよ。君も火星に降りる直前に、見たのではないかね?」


 コロニーを冠した名前から、エリィは着陸前に宇宙で見た、スペースコロニーのような巨大建造物を思い出した。

 あれそのものが巨大なビーム砲の砲身だとすれば、地球を貫くという言葉も嘘ではないことがわかる。


「……それは、紛れもない暴力だわ」

「理性的な脅しさ。旧世紀に、地球人は自らの惑星を滅ぼしかねない核兵器を向けあって、国々は会談をしていたというではないか。それと同じだよ」


 仮面の奥に光るネオノアの目は、本気だった。

 言うことを聞かなければ見せしめに何でもしてみせようと、決意を固めている眼差しであった。


「でも、あたしに政治なんてできないわ。お母様にだって、何も習ってないもの」

「君は何もしなくても良い。ただ人々の希望の象徴として、笑顔を振りまく存在でいれば良いのだ」

「だとしても、今すぐに答えなんて出せないわ。下手をしたら一生を決めるような選択だもの。あなたが何者なのかも、あたしはわからないし」

「フム……では、私の顔を見せよう」


 立ち上がり、ネオノアが両手でゆっくりと仮面を外す。

 その隠されていた顔を見て、エリィは目を見開いた。


「あ、あなたは……!?」

「ふふ、見覚えがあるだろう。そう、私は……」

「……誰?」

「のおおっ!?」


 壇上で、男が派手にずっこける。

 いくら記憶をたどっても、その顔にエリィは見覚えがなかった。


「エリィ姫、本当に私を知らないのか? ネオノアという名前に聞き覚えはないのか? シルヴィア殿下からなにも聞いていないのか!?」

「ごめんなさい、本当にわからないわ。ネオノアって名前なら、この間お父様がネオ・ヘルヴァニアの王の名前って言ってたけど……」

「おのれ地球人め……まあ良い、仕方がない。長旅の疲れで決心がつかぬと言うなら、部屋を用意させてある。我らのもとで民たちの姿を見、決意を固めるがいい。……ゼロナイン!」


 ネオノアが指を鳴らし呼びかけると、軍服姿のナインがエリィの背後から姿を表した。

 ……その手に一冊のBL(ボーイズラブ)同人誌を持ったまま。


「お呼びでしょうか、ネオノア陛下」

「……ゼロナイン、その本は何だ?」

「ゼロセブンの精神攻撃に耐性をつけるための書物でございます。お呼びがかかるまでの時間を訓練に費やしていました」

「はぁ……そうか。それは、良いことだなウン。ゼロナイン、エリィ姫をお部屋にお連れしろ」

「はっ!」


 本を持っていない方の手で敬礼をし、指でエリィに付いてくるように呼び掛ける。

 歩き始めたナインの後を負いながら、その手に持つ同人誌にエリィは注目した。


「あ、刀剣コレクションの本ね。好きなの?」

「嫌いと言えば嘘になる。訓練のためにと手を出したが、なかなか興味深いからな。だが、実写ポルノ映像についてはまだ訓練が足りない」


 大真面目に訓練と言い、BL同人誌を握るナインの姿に、エリィはどんな顔をすればいいかわからなかった。



    ───Eパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ