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第39話「男たちの決意」【Eパート 大人の熱血】

 【4】


「あのバカ、考え無しに突っ込みやがって」


 真っ直ぐに〈ザンドール〉の元へと向かったジェイカイザーを開いた窓から眺めながら、カーティスは呆れの声を出した。

 病室は見舞いに来てた連中の大半が、裕太を追いかけ、残ったのはシェンだけである。


「おぬしは行かぬのか?」


 持ち主の居なくなった裕太のベッドに、生意気にも横になりくつろぐシェン。

 異国情緒ただよう少女の考えてることが、いまいちカーティスにはよくわからなかった。


「ガキンチョ連中と違って、俺様はクールだから熱血はしねえんだ。だから怪我人らしく、おとなしく寝てる!」

「薄情なやつじゃのう」

「お前こそ、付いていかなくていいのか?」

「わらわは地球に降り立ったばかりで慣れるので精一杯じゃ。強すぎる寒い風やら、生臭い植物の香りやらが……きつくてかなわん」

「コロニー生まれのテンプレセリフどうも。ったく、連中は警察にでも任せて……ん?」


 カーティスはチラリと見て気になった、裕太が飛び出し際に投げ捨てたシェンのメモを拾い上げる。

 彼らは宇宙ステーションの方に興味が集中していたようだったが、カーティスが気になったのはその傍らに浮かぶ円筒形状の物体だった。


「なあ、異国の嬢ちゃんよ。この絵……見たまんまを正確に描いたンだよな?」

「もちろんじゃ。こう見えても風景の記憶には自身があっての。わらわが描くのは見たまま現実の風景じゃ。何か問題があるのかの?」

「このコロニーみてぇな物体、端が蓋されてねえ」


 円筒形の底面にあたる箇所を指差すカーティス。

 そこは黒く塗られ、内側の模様まで立体的に描かれている。


 本来スペースコロニーとは、宇宙空間という過酷な世界に密閉した建造物を浮かべることで住居とするものである。

 しかしシェンが描いた絵のコロニーは、密閉どころか片側が開放されていた。


「……確かに、わらわの国があるコロニーとは、ちと趣が違うようじゃな。建設中とかではないのかの?」

「それなら、建造用の大型フレームが外壁をとっ囲んでるはずなんだが……」


 そのとき、カーティスの頭に電流が走った。

 もしもこの考えが正しければ、うかうかしている時間はない。

 先程の発言を撤回するように、カーティスは立ち上がった。


「……熱血しないんじゃなかったのかの?」

「事情が変わったンだよ。早くカタつけねえとマズイかもしれねえ……!」



 ※ ※ ※



 裕太が到着した頃には、大勢は決していた。


「ガイ!? エルフィス!?」


 地面に転がる右半身を赤熱させて切り離された〈赤竜丸〉。

 膝をついて剣を杖代わりにしてふらつく魔法騎士マジックナイトエルフィス。


 そう、悪い方向に大勢が傾いていた。


「勇者どの……こやつら、強いでござる」

「まるでこちらの動きが読まれてるようだ、用心しろ……!」

「ふたりとも、もう戦うのは無理だ! 後は俺に任せろ!」

「……かたじけない!」


 ガイが〈赤竜丸〉の手で魔法騎士マジックナイトエルフィスを引っ掴み撤退する。

 ふたりを追おうとする〈ザンドール〉であったが、裕太たちが行き先を塞ぐように牽制射撃をすると、新たな脅威の出現に2機のの敵がゆっくりと振り向いた。


「……オヤジたちの口ぶりからすると連中、ExG能力者かもな」

『2対1で、ブラックジェイカイザーの乗り手がいない以上は合体もできん。勝てるのか?』

「もちろん! ……と言いたいけど、正直言うとペダルを踏む足が痛くて辛い」

『ならば、短期決戦だ!!』


 市街地のためジェイブレードではなく、ショックライフルを握らせ間合いを詰める。

 外しても他に影響が無いよう、足元を狙って発射。

 しかし狙った〈ザンドール〉は射撃を行うよりも早く後方へと飛び退き、手に持ったビームライフルを連射。

 咄嗟にビームセイバーを抜き、上方へと逸らすようにビームを切り払った。

 

 その間フリーになっていた〈ザンドール〉が後方からビームアックスを振り上げつつ接近。

 ジェイカイザーからの知らせでその攻撃を察知した裕太は、咄嗟に振り返りビームセイバーでその一撃を受け止めつつペダルを踏み込み前進。

 敵機を押し込み体勢を崩させ、その隙に警棒を突き刺そうとするも、逆側からもう1機の〈ザンドール〉が接近していたので止む無くバーニアを噴射。

 上方へと飛び退き事なきを得る。


「……やっぱり相手が複数だとキツイな」

『市街地ゆえに強力な火器も使えぬのも相まって……厄介だな』



 ※ ※ ※



「あかん、笠本はんが押され気味や」

「50点、なにやってんのよ!」


 裕太の動向が気になって飛び出した内宮たちであったが、機体もなく戦う力もなく、遠目から野次ることしかできないでいた。

 あとから来た進次郎とサツキも、この距離からではどうしようもなくヤキモキしている。


「なあジュンナはん、あのジェイカイザーと合体するマシンは出せへんのか?」

「無理ですね。あの機体の転送機能はマスターの……エリィ様の携帯電話に紐付けしているので、連れ去られた今はできません」

「肝心な時に……なあ金海はん、水金族の能力で助けられへんか?」

「お助けしたい気持ちはやまやまですが、この状況だと拳銃程度しか出せませんので……」

「ぐぬぬぬ」


 警察には通報してあるが、照瀬たちが到着するまで裕太が持つとは限らない。

 何もできない歯がゆさに拳を震わせながら、内宮は見ていることしかできない自分に苛立っていた。


「せめて2対2にできればええんやろうけど……何や、この音?」


 上空から聞こえてきたバラバラとけたたましくなる音に、真上を見上げる。

 そこに浮かんでいたのは、緑色のヘリコプター。

 いや、ヘリコプター形態に変形したキャリーフレームだった。



    ───Fパートへ続く

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