第39話「男たちの決意」【Bパート 固まる決意】
【2】
「笠本はん、預かってたモン返すで」
ガイたちと入れ替わりに見舞いに来た内宮が、携帯電話を手渡した。
その画面には、神妙な面持ちをしたジェイカイザーのアイコンがピョコピョコと跳ね回っていた。
『裕太ぁぁぁっ! 無事だったかぁぁ!!』
「ジェイカイザー……声、でけぇよ」
『死ぬほど心配したんだぞ! 心配しすぎて、毎日6時間ほどしかアニメを見れなかったんだぞ!』
「おい、全然元気じゃねえか! ったく……お前は、仕方ねえやつだな」
苦笑いしながら、緊張で固まっていた気分が解けていくのを感じる。
このバカらしい剽軽さが、今の裕太には救いだった。
「裕太、足……大丈夫なのか?」
「心配すんな進次郎。さっき薬を貰ったから、じきに痛みが引くはずだ。金海さんも、見舞いありがとな」
「はい! もうすぐレーナさんも来ますからね」
「あいつは……別にいいだろ」
突然ピリリ、と裕太の携帯電話が鳴り響いた。
慌ててスピーカー部を指で抑え、病室から飛び出す裕太。
鈍く痛む足を気合で抑えながら、携帯電話の使用が許されている廊下の端で足を止める。
「……もしもし」
「裕太くんかね。……スグルだ」
低い声が、電話越しに裕太を揺する。
その声質は、決して労いや心配の声をかけてくれるではなかった。
「話は聞いた。守ってくれよと、託したというのに……」
「……申し訳ありません」
「君というやつは、何をしているんだ! エリィを奪われて、何を呑気にのうのうと────」
「何を言うとるんや、このダボがああぁっ!!!」
携帯電話を奪い取った内宮が、病院獣に響き渡らんかという勢いで吠えた。
細い目を見開き、額に血管を浮かび上がらせ、怒りに震えていた。
「笠本はんが……好きな女を目の前で奪われて平気なはずないやろっ!! 笠本はんはなあ、足を撃たれとるんや! こん中で一番、銀川はん助けに飛び出したいんが誰か分かっとるんか、こんの……どアホォッ!!」
迫力に、周囲が静寂に包まれた。
何事かとざわついた人たちが、遠巻きにこちらを見つめている。
「あんさんも、娘さんが攫われたちゅうて心配なのはわかる。けどな、笠本はんに……エリィはんの想い人の傷口に塩を塗るようなマネして……!!」
「内宮、かわってくれ」
「笠本はん、でも……!」
「いいから!」
渋々、といったふうに内宮が携帯電話を裕太へと返す。
裕太は心を落ち着かせ、ゆっくりと口を開いた。
「銀川の親父さん。エリィが攫われたのは、俺のせいです。責任は……俺が取ります」
「責任だと?」
「俺が、エリィを必ず助け出します……! だから──」
少年は大きく息を吸い込み、そして
「エリィを連れて木星に挨拶しに行くまで、待っててくじゃぴ!」
そして盛大に、噛んだ。
───Cパートへ続く




