第37話「ナンバーズ」【Gパート 地球の土】
【9】
「……じゃあな、レーナ。それからΝ-ネメシスのみんな」
久々に踏む地球の土の感触に感動しながら、裕太は手を振った。
あれから、地球までの道のりは驚くほど穏やかだった。
ネオ・ヘルヴァニアも宙族の襲撃もなく、ここ代多市の山に降りるまで静かなものだった。
「50点も、姫様も、千秋も。それから進次郎さまも元気でね」
「また、次の大型連休あたりに顔を出しますよ」
「裕太くん、エリィをよろしく頼み……頼むぞ」
レーナと深雪が手を振り返し、スグルが口を震わせながら裕太の両肩を強く握った。
「本ッ当にぃぃぃ守ってくれよぉぉぉ! 泣かせたりしたら許さんからな!」
「わ、わかってますよ。な、エリィ」
「うん! 笠本くんが守ってくれるなら安心よぉ!」
「……だから私は安心できないんだよ! はぁ」
ため息を付きながらΝ-ネメシスへと乗り込むスグル。
後に続いて、レーナと深雪も艦へと戻る。
上昇していく巨大な戦艦を見上げながら、裕太は背後のカーティスへと視線を移した。
「んで、オッサン。その女性……どうするんだ?」
「ああ、ロゼのことか?」
「ロゼ?」
傍らで俯く頭に包帯を巻いた患者服姿の女性を指して、カーティスが得意げにニンマリとした。
「ボロボロになった私物からイニシャルがわかったからな。名前がないと不便だろ?」
「ロゼ、ねぇ。なあロゼさん、このオッサンかなりのスケベオヤジだけどいいのか?」
「私は……カーティスさんの力になれれば、それでいいですから」
頬を赤らめてカーティスに寄り添うロゼ。
そんな状態ともなれば「俺様にも春が来たぁぁ!」と歓喜する彼にツッコミを入れられる人間は居ないだろう。
久々の故郷へと裕太は足を踏み入れる。
大冒険を終えた達成感と、新たな面倒事への予感を胸に秘めながら。
それから数ヶ月、裕太たちの生活は穏やかなものだった。
次に世界が動くのは11月。
日本が寒空に包まれ始めてからのことである。
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登場マシン紹介No.37
【ディカ・ノン】
全高:12.7メートル
重量:11.3トン
地球圏の技術とヘルヴァニアの技術を組み合わせて作られたキーザ専用の重機動ロボ。
重機動ロボは旧ヘルヴァニア銀河帝国が運用していた人型機動兵器であり、重装甲・重火力をベースとした大型機となっている。
半年戦争においては耐ビーム装甲がなかったため一方的に地球軍に狩られる側だったが、この機体は標準的な耐ビーム構造を組み込んでいるため欠点であった守備面が補強されている。
完全に戦闘のための機体ゆえに、両腕の先が手型のマニピュレーターではなく大型ミサイルランチャーとなっている。
一斉発射で両手両肩両足に装備されたミサイル砲が秒間40発近くの弾頭を発射することが可能。
【次回予告】
木星から敗北続きの裕太は、全国高校闘機大会の秋大会を戦場として舞台の上で腕を磨いていた。
全国大会への切符を手にした裕太たちに練習試合を挑むのは、東目芽高校のライバル校として名高い義牙峰高校。
その助っ人選手として表れたのは、レーナ・ガエテルネンだった。
光の勇者と海賊の姫君が今、闘機場でぶつかり合う。
次回、ロボもの世界の人々38話「束の間の安息」
『待て、裕太。フレームファイトということは私の出番がないではないか?』
『ご主人様。私なんて最近は機体のサブAIとしての働きすらしてませんよ』
「仕方ねえだろ。ルールなんだから……」




