第4話「ドラマの中の戦争」【Hパート 甘美な映像 無情な現実】
【7】
結局、撮影は中止となりエリィ達がエキストラとして出演する話も自然とチャラになってしまった。
しかし、肝心のジェイカイザーの映像は〈ドゥワウフ〉との戦闘を編集するとかで撮れたらしく、後日裕太の貯金口座にはギャラが振り込まれていた。
そして、その映像が使われるドラマの放映日。
「サツキちゃん、その漫画の3巻取って」
「はいどうぞ、進次郎さん!」
「笠本くん、お菓子無くなっちゃったわよぉ」
「……何で俺の部屋にお前らが集まってんだよ」
ベッドの上で好き勝手くつろいでいるエリィたち3人に勉強机から文句を言う裕太。
辺りには彼らが読み終えた、またはこれから読む漫画本が縦に積み上げられている。
「そりゃあ、笠本くんとジェイカイザーの勇姿がテレビに映るのを見るためよぉ!」
「だったら自分ちで見ればいいだろ! 何で部屋に集まってんだよ!」
眉間にしわを寄せる裕太に対し、進次郎がわざとらしく眼鏡をクイッと持ち上げた。
「本来ならば僕達もドラマに写れるはずだったのだがな。それに、あの時勝てたのは僕らのアドバイスがあったからではないのか?」
「ぐぬぬ……!」
それを言われては反論できなかった。
進次郎のアドバイス自体は役には立たなかったものの、結果的に勝利に結びついたことには変わりないからである。
「いいから、見終わったらちゃんと片付けてから帰れよな」
「はーい! あ、もうすぐ時間ですよ!」
サツキに言われて、裕太はリモコンの電源ボタンを押してテレビを起動した。
前番組のあとのコマーシャルが終わり、ちょうど例のドラマである『スパート!!』が始まるところだった。
オープニングが終わり、ドラマの流れを食い入るように見つめる4人。
『な、なんだか恥ずかしくなってきたな! だが、これでお茶の間の女性がたに私が認知されるのか』
「見てたとしてもどーせオバちゃん連中ばっかだよ」
『そうとは限らないだろう!』
「お黙りジェイカイザー。うるさいわよぉ」
『むぐぐ……』
「あ、もうそろそろっぽいですよ!」
サツキが指差し、一斉にテレビ画面に注目する。
ドラマのシーンが代わり、子供がテレビを見ているシーンに切り替わった。
『来るぞ、来るぞ……!』
「しっ! 黙ってろ…!」
カメラのアングルが子供の顔から、テレビへと変わり画面いっぱいにあの河川敷が映し出された。
「悪の機械戦士め! この私の剣を受けよぉ!」
爽やかな声とともに剣を構え、振り下ろすロボットの姿が映る。
──が。
『わ、私ではない……!?』
画面に写っているのはシルエットこそジェイカイザーにそっくりであるが、色もパーツの形状も全く違う別のロボットであった。
しかも、声に至っては。
「この声、鳴神さんじゃないか? ほら、あのアニメの主人公やってた」
「進次郎、よくちょっと聞いただけで声優の名前わかるな」
「ま、天才だからな僕は! わははは!」
そうこうしている内にドラマのシーンが切り替わり、ロボットの搭乗シーンが終わってしまった。
『い、一体何が……!?』
状況を理解できずに声を震わせるジェイカイザー。
「CG合成で、別のロボットに差し替えられたな」
『わ、私の存在が女性がたに……』
「無理じゃないかしらぁ? 声なんて声優さんが当ててるしぃ」
「完全に別人? いえ、別ロボットでしたね!」
『うおおお! 私の苦労は一体ぃぃぃ!!』
サツキの無邪気な言葉にとどめを刺され、ジェイカイザーは絶叫した。
……続く
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登場マシン紹介No.4
【ドゥワウフ】
全高:8.1メートル
重量:12.3トン
少し前まで米軍の主力を担っていたクレッセント社製の旧型陸戦用キャリーフレーム。
童話に出てくる種族ドワーフから名前を取っているが、全体のシルエットはゴリラに近く、手足が太い。
軍用だけあり、強固な装甲を持ち重量も民間用に比べると遥かに思いながらも動きは軽快。
また、性能の高いジェネレーターを装備しているため稼働時間も長い。
旧式なため軍放出品として何機かが民間に回っているが、中東の過激派団体などに使われている機体も存在する。
【次回予告】
警察からのオファーで、新型キャリーフレームのテスト操縦を頼まれた裕太。
裕太の後に操縦席に据わったエリィは、戦いでの無力さを払拭するため、裕太に模擬戦を挑む。
新型が勝つか、ジェイカイザーが勝利するか。
互いの意地をかけた戦いの火蓋が、切って落とされた。
次回、ロボもの世界の人々第5話「裕太 VS エリィ」
「あたし、キャリーフレームの知識だけは誰にも負けない自信はあるんだからぁ!」
『それは耳年増ということだな!』
「ほんっとうに失礼ねぇ!」




