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第33話「降臨祭の決戦」 【Hパート さらば、光国】

 【10】


 それからは、大騒ぎだった。

 光国グェングージャΝ(ニュー)-ネメシスが現れ、あわや警備の〈ザイキック〉と戦闘になりかけた所を裕太たちが割り込んで止め。

 それからリンファ──もとい、マザーとサツキ、それからシェンと合流し顛末の説明を受ける。

 そして……。


「ええっ!? 母様を演じるのを辞めるじゃと!?」

「はい。私が自らを偽ったせいで、ヤンロンを不幸にしてしまいました。それにリンファは、私の正体がバレた時には皆に愛された姉様あねさまとして、シェンが成長するまで光国グェングージャを守ってくれとも言われていましたから」

「じゃが、突然そんなことを公表すれば……間違いなく国は混乱する!」

「その混乱をおさめるのも、皆さんを騙していた私への罰です。ですが必ず、やり遂げてみせます」


 マザーの意思は固かった。

 大切な人の思いに殉じる、その姿は下手な人間よりも、はるかに人間らしかった。


 翌日、リンファの死とマザーが成り代わっていたことは、国中に広く伝えられた。

 ある者は女帝の死を悲しみ、ある者は愛された者の帰還を喜び、そして彼女が女帝代行へと就くことには、驚くほど反対は少なかった。

 それは彼女が女帝として働いていた頃の功績をたたえてか、それとも姉様あねさまと呼ばれ慕われていた頃を鑑みてなのかはわからない。

 しかし、確かに光国グェングージャの人々はマザーを女帝として、友として、仲間として歓迎していた。

 反対派も、いずれは彼女の努力によってその心を溶かしていくだろう。


 けれども、もとに戻らないものもある。

 ヘルヴァニアの後継を名乗る組織へと旅立っていったヤンロン。

 リーダー格だった彼が居なくなったこと、それから女帝の死によって活動理由を失ったことで反政府軍は解散。光国グェングージャに平和が戻った。

 しかし、姿を消したその男一人の存在が、シェンとマザーに深い影を落としているのも事実だった。



 ※ ※ ※



「では、これでお別れじゃな。使徒様、それから裕太」

「俺の名前、初めて呼んだな」

「ふん、もうおぬしは罪人ではない。首輪などつけ振り回して、すまなかったの」


 丁寧に頭を下げ、謝罪するシェン。

 裕太はもう彼女への怒りは持っていなかった。


「ま、散々だったけどいい……思い出にはなったよ」

「そう言ってもらえると助かるのう。そうじゃ、ヤンロンのことじゃが……」

「シェンはん、わかっとるで。うちらでとっ捕まえて、首根っこ引っ掴んでここに持って来たるわ」

「すまないのう。おぬしらには迷惑をかけっぱなしじゃ」

『神として許すぞ! わっはっは!』

『あなたにはその権限はないですよ、ジェイカイザー』

「ハハハハ……」


 笑い合いながら手を振り、シェンと別れた裕太と内宮。

 ふたりはΝ(ニュー)-ネメシスのタラップを登り、艦の中で待っていたエリィたちと合流する。


「お別れ、終わった?」

「ああ。色々と落ち着いたら、また来ような」

「せやな!」

「うーん……」


 裕太と内宮の顔を交互に見て、考え込むエリィ。

 どうしたんだ、と裕太が聞く前にサツキが真っ直ぐに手を上げた。


「はいっ! わかりました! お二人の距離が少し縮まっています!」

「「え?」」

「やっぱりぃ! ふたりでなんか、ラヴコメ的なあれとかこれとかあったんでしょ! そうでしょ!?」


 エリィに詰問され、笑う内宮の横で目をそらす裕太。

 否定はしないが、ここでいろいろと揉めるのも体力的にしたくない。

 話題を変えようと、サツキの方へと振り向く。


「そうだ。金海さんが俺たちの場所を突き止めたんだっけか?」

「もう、話をそらさないのぉ!」

「はいっ! お母さんからビビッと情報が来まして、みんなに言って迎えに行かせたんです!」

「その時には一度日本に戻っていたから、訓馬さんからもしもの時のためってドアトゥ粒子の入った小瓶を何個か渡されたのよぉ」

「エリィさんは待ちきれないからって、コロニーにつく前に裕太さんの所にワープしたんです!」

「ああんもう! それは言わない約束でしょお!」


 ぷりぷりとサツキに怒るエリィの姿を見て、裕太は改めて自分のいるべき場所に帰ってきたんだなと感じた。

 そう思っている間にΝ(ニュー)-ネメシスが発進し、窓の外に光国グェングージャのコロニーが小さくなっていっていた。


「よーし、じゃあ今から地球へ……」

「地球へは帰れないわよ、50点」


 真紅の髪を結ったツインテールを揺らしながら、レーナが進次郎とともに歩いてきて言った。

 その言葉の意味を理解できない裕太は、彼女へと詰め寄る。


「何でダメなんだ?」

「お姫様が散々急かしたから、無理やり急いだ結果資材が心もとないの。だから最寄りの木星に行って、そこで補給してからね。地球は」

「木星か……」


 太陽系第五惑星・木星。

 そこは地球人類とヘルヴァニアの関係が始まった場所。

 そして、エリィの生まれ故郷である。


 初めて訪れる惑星で起こるであろう問題を、このときの裕太は想像すらできていなかった。



───────────────────────────────────────


登場マシン紹介No.33

【クイントリア】

全高:7.9メートル

重量:6.1トン


 反政府軍・黒鋼くろがねの牙が協力組織より借り受けたJIO社製のExG能力者専用の新型キャリーフレーム。

 装甲の地の色は深緑色であるが、漆黒の塗料にコーティングされている。

 この塗料は対ビーム・コーティング加工を施された新素材であり、薄皮のように包んだ場所にあたったビーム攻撃を一度だけ剥離することによって無効化する。


 両肩に装着された特徴的な球体状のユニットは大型ガンドローン・インベーダー。

 インベーダーは対ExG能力者を想定した特殊兵装であり、球体であることによって砲身の向きを悟られない仕組みとなっており、「見てから動く」を高速で行う能力者に対しては天敵とも言える射撃機構を備えている。

 また、内部に埋め込まれて見えづらい砲身は遠近両用の新型ビーム発振装置であり、サーベルのように短いビームを発しながら回転することで、まるで土星の輪のようにビーム刃を展開し強力な近接攻撃をも可能としている。

 その特性上、インベーダーは分離しての運用が基本となるが、肩部に装着したままビーム砲台としての活用も可能。

 インベーダーは大型故に相手から狙われることも想定し、かなり頑丈に作られていることもあり緊急時には追加装甲として攻撃を受け止める働きもある。


 携行武器はビームセイバーとビームライフルといった標準的なもの。

 インベーダーと同時攻撃することによって火力を増させるための大型兵装を持たせようと当初は予定されていたが、インベーダーを運用するのに必要なエネルギー量が想定以上に多くなったため中止。

 そのため効率化が進みきっておりエネルギー消費が少ないセイバーとライフルを兵装として選んだという経緯がある。


 また、インベーダーの重量がかなり大きいため盾などの防御兵装を所持することもできず、またエネルギー問題でビームシールドも搭載不可。

 そういった事情により守りはビームコーティング塗料頼みという性質上、激しい戦闘を行うには相応の技量を必要とするピーキーな機体でもある。





【次回予告】


 木星へと向かい、数日間の平和な旅路を進む裕太たち。

 一方、日本では反ヘルヴァニア思想を持つ集団・愛国社の活動が活発になっていた。

 愛国社の鎮圧と親からの結婚催促に疲れ果てる照瀬は、独身仲間でもあり古い友人の軽部のもとへと足を運ぶ。

 そこには、女性と仲良さそうに過ごす裏切り者の姿があった。


 次回、ロボもの世界の人々34話「シット・イン・マインド」


「富永ァッ! お前は仲間だよな! なあっ!?」

「はい! 最近はガイさんに食事や映画にお呼ばれすることも多々ありますが、私は照瀬巡査部長の味方であります!」

「お前もか! この、裏切り者ォッ!」

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