第31話「光国の風」【Eパート 姫巫女と使徒】
【5】
食事を終え、宴会場からシェンに連れ出された内宮。
彼女の案内に従って赤い絨毯が敷き詰められた廊下を進み、階段で3階層ほど登ったところの個室に入るように促される。
そこで聞いたシェンの話に、内宮は度肝を抜かれていた。
「ジェイカイザーが神様やて?」
「そのような名ではありませんが、あの機械人形は間違いなく神像の姿とうり二つでございます」
内宮の前に、青く錆びついた銅の人形を差し出すシェン。
手にとってよく見てみると、細かい違いはあれど形状の殆どが、特に頭部のデザインは丸々ハイパージェイカイザーの姿と同じだった。
『私は勇者ではなく神だったのか!』
「機械神は自ら意思を持ち、使徒と共に舞い降り危機に瀕した世界を救うと言われております。改めて、先ほどの戦いにおける無礼をお詫び申し上げます」
『よいよい! 君のような美少女に頭を下げられたら何でも許したくなってしまうぞ! ワハハ!』
(ええい、調子のええやっちゃな。笠本はんを出してもらえるまでは気ぃ許したらアカンで……?)
(も、もちろんわかっているぞ……)
小声でジェイカイザーに注意する内宮。
裕太に対して便宜を図ってほしいという意思を出したら、また洗脳だ何だと言いがかりをつけられ面倒になってしまう。
とにかく今は情報を集める段階や、と内宮は自分とジェイカイザーに言い聞かせた。
「ああ、忘れておりました! 私としたことが!」
そういい、部屋にあるクローゼットを開けるシェン。
彼女は中に収められていた畳まれた布を何枚か手に持ち、内宮の前に丁寧に積み上げていく。
「そのような身なりではさぞお苦しいでしょう。この神御衣へとお着替えになってください」
「へ? ここで着替えろっちゅうことか?」
「さようでございます。何かお困りですか?」
「いや、だってなあ……ジェイカイザーが見とるし……」
「使徒は神に穢れなきその御身を差し出す者。つまりは使徒にとっては神は夫に等しい存在ゆえ、肌を晒すことには何一つ問題はありません」
『そうだぞー! 私に見せることは何の問題ではないぞ!』
「ええい都合のいいところだけ迎合しおってからに! ひゃあっ!? シェンはん、ちょっとタンマ!」
「いけません! 穢れた衣は神術の気を削ぎます! 今すぐにお脱ぎになったほうがお身体のためです!」
シェンが手際よくボタンを外し、内宮のシャツを強引に脱がす。
そのままズボンを下ろされ、あっという間に下着姿にされてしまった。
息つく間もなくシェンは内宮のパンツを下ろし、ブラジャーも手際よく剥ぎ取っていく。
一糸まとわぬ姿となり内宮は慌てて局部を手で隠すものの、着させづらいと力づくでシェンに両手を抑えられ、あれよあれよという間に神社の巫女服のような格好に着替えさせられてしまった。
「もう、お嫁にいかれへん……」
『うひょひょ……! 内宮どのもエリィどのに負けず胸はけっこうあったのだな! 安産型の下半身もまた……いやぁ眼福眼福!』
「このエロAIめ……笠本はんが戻ったあかつきにはジュンナはんにしばき倒さすぞ!」
『私は神だから大丈夫だ! ワハハハハ! 待てよ、今の内宮どのはつけてないし履いてない……しばらくはチラリズムが楽しめそうだな!』
拳を震わせ怒りを顕にする内宮のことなどお構いなしに、気持ちの悪い笑い声を上げるジェイカイザー。
実体のない相手は殴れないので、ひとまず自分を落ち着かせる。
着替えの終わった内宮を見て、にっこりと微笑むシェン。
「これでよし、です。さて、私は席を外しますが、外は狼藉者の多い危険な地。くれぐれも部屋から出られませんようお願いします」
「せやかせやか。そういや、かさも……やない、狼藉者ってどこに連れて行かれるんや?」
「問題事を起こした者は、地下牢に閉じ込めるのが決まりとなっています。危険ですのでくれぐれも地下には行かないでくださいませ」
「わかったわかった。ほな、さいなら~」
眉をヒクつかせながらもにこやかに手を振り、シェンが部屋から出ていくのを見送る。
内宮はシェンの足音が聞こえなくなってしばらくしてから、個室の扉をそーっと開けた。
「誰も……おらへんな?」
『内宮どの、どうするのだ?』
「笠本はんを探しに行くんや。うち一人だと心細ぅてかなわん。せめて無事だけでも確認せぇへんと」
『私がいるではないか』
「……あんさんはどちらかというと、うちの敵や」
『ガーン……』
ショックを受けるジェイカイザーを放置し、足音を立てないよう抜き足差し足。
内宮は地下を目指して城の中を歩き始めた。
…………Fパートへ続く




