表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/398

第31話「光国の風」【Cパート 相反する扱い】

 【3】


「ここに入っていろ! 逃げ出そうとは思うんじゃないぞ!」


 鎖かたびらに身を包み槍を持った兵士の手で、乱暴に独房へと放り込まれる裕太。

 兵士が立ち去ってから、裕太は痛みに耐えながら立ち上がった。

 壁にかかった燭台の炎だけが明かりの薄暗い閉鎖空間。

 床は砂利だし、壁は苔むした石造り。

 お世辞にもいい環境とは言えない。


「くそーっ、何なんだよここは!」

『牢屋、独房、刑務所。このどれかだと思われます』


 ズボンのポケットから聞こえたジュンナの声に気づき、携帯電話を取り出す。

 電波は相変わらず圏外だが、捕まったときに没収されなかったようだ。


「どれかって言うか、どれもっていうか……」

『それよりもご主人様、ここに来るまでの風景はご覧になりましたか?』

「いや……コックピットから引きずり出されてすぐボコボコにされたからな。痛てて……」

『このコロニーの形態は、私が知るコロニーのどれとも合致いたしません』

「何だって? それってどういう……」

『建築様式、装備等は古代中国のものと類似しておりますが、完全でもない。恐らくは未知の文明によって成り立つコロニーではないかと思われます』

「でも、日本語話してたぞ?」

『ヘルヴァニアも異世界《タズム界》も公用語は日本語に酷似する言語でした。ですのでそれはアテにならないかと』

「そうか……」


 独房の隅の、藁が積まれたような簡素な寝床に裕太は横になった。

 携帯電話の中にいるデータはジュンナだけ。

 内宮とジェイカイザーの身を案じながら、裕太はぼんやりと炎のゆらめきが照らす天井を眺めた。



 ※ ※ ※



「な、なぁ……ジェイカイザー。うちら、なんでこないなことになっとるんや?」

『私に聞かれても困るが……』


 綺羅びやかな畳敷きの広い宴会場。

 ステージの上で舞を踊る女性たちを前に、豪華な食事の盛られた卓。

 なぜか携帯電話にジェイカイザーがいる状態でここに連れてこられた内宮は、未だ事情が飲み込めないでいた。


「神の使徒よ。楽しんでおられますか?」


 戦いの中で聞いたものと同じ凛とした声が背後から聞こえてくる。

 内宮が座布団に座ったまま振り向くと、頭の左右で黒い髪を結った変わった髪型の女の子が、長い髪と羽織ったマントを揺らしながら歩いて来た。

 見た目12、13歳ほどにしか見えない少女が、戦いの中でシェンと名乗っていたのを思い出す。


「使徒やて?」

「突然のことで混乱されているのはわかっております。あなた様は神像をり我らを救いに向かわれる途中、反政府軍の者に神像を奪われ人質となっていたのでしょう?」


 つらつらとデタラメなストーリーを語るシェン。

 嘘をついているようには見えないことから、どうやら彼女らの中では“そういう”ことになっているらしい。


「何言うとるんかサッパリや。笠本はんはどこに行ったんや?」

「あなたをさらった男なら、今は独房に封じております」

「独房やて? うちも笠本はんも反政府軍とかやないんや! はよう出したってーや!」


 内宮の懇願を聞き、哀れむような表情になるシェン。

 これは十中八九、話が通じていない。


「可哀想に、あの男にたぶらかされたのですね。混乱が解ければ、あなたは使命を思い出すはずです。それまでは、わたくしどもでお助けいたしますからごゆるりと」


 マントと長髪を翻し、宴会場から立ち去るシェン。

 こちらの事情で話をしても、妄言扱いされてしまうようだ。

 内宮は一旦冷静になり、漂流中に空いた腹を満たすため箸に手を付けた。




  …………Dパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ