第30話「炸裂! ダブルフォトンランチャー!」【Eパート 本国軍の圧力】
【5】
口を開き咆哮する翼竜型の魔術巨神〈ラノド〉を、〈ブランクエルフィス〉がビームブロードで縦一文字にぶった切る。
同時に、背後から青龍刀めいた実体剣を振り上げて襲いかかる〈メレオン〉に、スラスターとして機能しているガンドローンを向け、ビームを放射してその身体を貫き、爆散させた。
「こんなに相手が多いなら、相手は同士討ちが怖くて射撃は出来ないってこと! つまりは……!」
敵の集団の中でも、ひときわ大きい空間を見つけたレーナはバーニアを吹かせ、〈ブランクエルフィス〉をその空間へと潜り込ませた。
コンソールを右手で操作し、背部にX字を描くように4つ装着されているガンドローンを分離。
脳内で考えた各ドローンの運動イメージを操縦レバーを通して神経づてに伝え、発射トリガーにかかった指に力を込める。
「まとめて片付けて、ガンドローン!!」
レーナの叫びに呼応するように、ひとつひとつのガンドローンが戦場を走った。
小刻みに方向を変えながら敵機の隙間を駆け巡り、方向転換の度に細いビームを発射し、魔術巨神へと光線を差し込んでいく。
稼働限界までエネルギーを消費したガンドローンが、〈ブランクエルフィス〉と戻った瞬間、攻撃を受けた機体すべてが同時に爆発四散した。
「これだけやっても、ぜーんぜん減らないのね……!」
減った分が補充されるように、再び魔術巨神の群れに囲まれたレーナは、ため息をこぼした。
※ ※ ※
「大盤振る舞いだ、いくぜぇっ!!」
カーティスの気合とともに〈ヘリオン〉上部のミサイルハッチの蓋が一斉に開き、無数のミサイルを放出した。
ひとつひとつのミサイルが異なる敵へと突き刺さり、次々と爆散させていく。
レーダーへと目をやり、光点が一直線になっている角度を算出。
操縦レバーをグイと傾け、太い指でトリガーを押し込むカーティス。
大型レールガンから発射された鉄塊が、進行上にある魔術巨神を巻き込み破壊しながら音速で戦場を貫いてく。
「なっ! こんちきしょう!」
下方から攻撃を仕掛ける〈メレオン〉に対し、バーニアを浮かせ機体をホップ。
ヘリコプター形態の時にメインローターとなる左腕のプロペラを高速回転させ、そのまま敵へと突っ込ませる。
回転するプロペラの奔流に巻き込まれた敵機がズタズタの破片となり海に落下していくさまから目をそらし、再びレーダーに視線を移す。
「おいおい、これじゃあキリがねえぜ?」
※ ※ ※
「戦場でビームピストルを使い、華麗に敵を殲滅してこそ……天才だろうがっ!!」
自分に言い聞かせながら、進次郎はペダルを踏み操縦レバーを押し込んだ。
フルオートモードに設定された両腕のビームピストルが火を吹き、敵群へと光の雨を撒き散らす。
次々と爆発を起こし落ちていく敵機。
しかし、その弾丸を掻い潜ってきた一機の〈メレオン〉が全速で接近。
ビームピストルを握る右腕に刃を振るい、肘の部分から先を切り落とされる。
「にぃっ!?」
引き剥がそうと敵機の頭部を左腕で殴りつけるもビクともせず、メレオンのギョロギョロしたカメラアイが進次郎を睨みつける。
が、巨大な脚がその頭部を蹴っ飛ばし、離れたところに翠色に輝く光の拳を受け爆散した。
「言わんこっちゃない。天才が聞いて呆れるぞ」
背後から援護をくれた裕太の声と、ハイパージェイカイザーの姿に一息をつく。
今の状況で一人のままであれば、確実にやられていたであろうことは想像に難くない。
「フ……情に流され無謀を演じてしまったのは僕の未熟さが故と認める。しかしだな裕太」
「しかしもカカシもあるか。金海さんにいいところを見せようという姿勢は結構だが、返り討ちにされて泣かせたら元も子もないだろ?」
「む、しかし……」
「岸辺はん、そのダメージと武器で戦うのは無茶や。ここはウチと笠本はんに任し、艦の発進口でも見はうときな」
「そうさせてもらう。身の程を弁えぬようでは、天才らしくないからな」
※ ※ ※
背を向け、バーニア光とともに島に戻っていく進次郎の後ろ姿に、裕太は胸をなでおろす。
「笠本はん! 直上に3機くるでぇ!」
息つく間も無く、重力を活かし上方から格闘戦を仕掛けてくる〈メレオン〉の群がモニターに映る。
振りかぶった刃を受け止めるようにハイパージェイカイザーの手を開かせ、真上に上げさせる。
発生したフォトンフィールドが青竜刀の一撃を受け止め、一瞬怯んだ隙をついて射撃モードのジェイブレードを構え、発射。
緑の光が3機を巻き込むように天へと走り、通り道にいる敵を次々と爆散させ消滅させた。
(敵が固まっているなら、ウェポンブースターで一掃できるが……!)
裕太が気がかりだったのは、第二波の存在だった。
深雪の見立てではあるが、ほぼ確実に来るであろうグレイとの戦い。
やつとの戦いに消耗を持ち込むのは危険である。
これまでとの戦いから、2機の戦闘力が攻守ともに互角である以上、機体コンディションが勝敗を分けることは必然だった。
グレイが正々堂々を良しとしても、狡猾なフィクサの入れ知恵を聞き入れたなら勝ちの目は薄い。
第二ラウンドを全力で迎えるには、フォトンエネルギーを浪費する範囲攻撃には頼れない。
それが裕太が導き出した結論であった。
ジェイブレードで切り裂き、フォトンナックルで迎撃。
ショックライフルで足止めしたところを電磁警棒で指す。
わずかなエネルギー消費をも惜しみ、裕太は懸命に戦った。
しかし、それがいけなかった。
…………Fパートへ続く




