第15話「裕太のいない日」【Bパート サツキの妹?】
【3】
「「妹ぉ!?」」
昼食を終え、ベンチに座ったまま雑談モードに入ったエリィ達。
彼女らがサツキの口から聞いたのは、先程の女の子がサツキの妹だということだった。
「水金族にも姉妹とか兄弟の概念ってあるのねぇ」
「い、いえ。そういうことではなくてですね、私の身体の妹だと思うわけですよ」
「「???」」
サツキの説明を聞いて、同時に首を傾げるエリィと進次郎。
自分の説明が伝わっていないとわかったのか、サツキはうーんうーんとしばらく考え込むポーズをした。
「えーとですね。私のこの姿って、モデルが居るんですよ。水金族で人間に擬態する個体は、悲惨な事故とかで亡くなった人間の姿を借りるんです」
「悲惨な事故……」
「飛行機の墜落事故とか、宇宙船の爆発とか、コロニーの崩壊とかですね」
「……ということはあれか。さっきの子はサツキちゃんの姿のモデルになった女の子の妹、というわけか」
腕組みしていた進次郎が納得したようにうんうんと頷く。
エリィは冷静に今の情報を頭のなかで整理していた。
何らかの事故で亡くなった女の子。今のサツキの姿は、その女の子の外見を借りている。
そして、亡くなった女の子の妹がさっきの子。
ようやく理解はしたが、納得はできなかった。
エリィがあれこれ考え混んでいると、突然ジェイカイザーが何かに気づいたかのような、ハッとしたような声色で叫びだした。
『進次郎どの、まさか姉妹丼を狙っているのではあるまいな!?』
「おいこのクソエロボット。いくらエロゲ脳とはいえサツキちゃんに妹がいるだけでそういう発想には行き着かんぞ。恥を知れ恥を」
『ガーン!! ガーンガーンガーン……』
辛辣な返しを受け、セルフエコーでショックを表現するジェイカイザーが黙り込むのを気にせずに、サツキは説明を続ける。
「それで、姿を借りた人間の親類から離れたところで暮らすのが水金族の習わしなんですけど、あの子……どうやらこの近くに引っ越してきちゃったみたいですね」
「みたいですねって、どうしてそんなことがわかるのぉ?」
「あれ、言ってませんでしたっけ? 私と同じ水金族の端末はこの学校にも数人いるんですよ。各学年ひとりずつと、用務員さんと先生の中にもいて、相互に連絡とり合っているんです」
未だに底の知れない水金族ネットワークに舌を巻くエリィ。
聞けば、水金族は人間以外にも動物や無機物にも擬態している個体がいるらしく、今座っているベンチや向こうに見える木々、あるいは足元を這うダンゴムシすら水金族である可能性があるのだとか。
そう考えると、背筋が少しゾクリとした。
「……ええと。じゃあ、あの子を放っておくわけにもいかないわよねぇ。ハッ! まさか……『勘のいい子供は嫌いです』とか言って、始末した挙句にあの子に擬態させた仲間と入れ替えるんじゃ」
「しませんよ! とにかく、帰りがけにお話を聞いてみようと思います。さあ、もうすぐお昼休み終わりますし教室に戻りましょう!」
弁当箱を体内に吸収して鼻息荒く歩いて行くサツキの姿に、エリィはなぜか不安を覚えていた。
───Cパートへ続く




