黒尾ダンジョン 3-2
投稿時間の関係で、黒尾ダンジョン3が短めになってしまいましたので、あわせて3とします。こちらも短いですがご了承ください。
「うちらも混ぜてもろてかまいまへんか?」
水着姿の水無瀬姉妹が、ロードスターに乗ってやってきた。
マツダではなく、BMWのほうだ。かっけえ。
オートキャンプ場は残念ながら海辺ではなく、ちょっと中に入った雑木林の麓にある。
だだ雰囲気はいい。
「あー、どうぞ?」
それにしても、彼女たちはどうやってここを知ったんだろう?
……俺たち、予定は明かしてなかったんだが。
<収納>の中に、大型バスを改造したキャンプバスを用意してある。
現地でそのバスを出して、バスの腹部の壁を展開するとあら不思議。
雨よけのある調理場のできあがりである。
昨今のキャンプ場は直火禁止のところが多いので、カセットガスの調理器を数種類持ち込んでいる。
シャワーやトイレはキャンプ場に併設されてるし、水回りはキャンピングカーにあるので純粋なキャンプよりずいぶん楽が出来る。
ちなみに、宿泊時にはもう1台キャンピングカーを出し、男性陣はそちらで寝ることになる。
ドナッティさんの料理の腕前がメンバー中最も高い。
料理を覚える期間がなかった俺や沙織、それにお嬢様であるケイティや水無瀬姉妹の料理スキルが残念なのは言うまでも無い。
ベンさんもいいところのお坊ちゃんで学生時代は勉強漬けだったそうで、包丁など持たせない方がましという状況だ。
意外なのが岩田さんの包丁スキルだ。
「高校時代に、バイトで」
などといっていたが、野菜の皮むきなども危なげない。
我が家の事情でいうと実は、うちのオヤジや兄貴あたりも料理はうまい。
俺は結局、足手まといだからやらせてもらえず今に至ってるわけだ。
肉や野菜はグリル型のバーベキューコンロで焼く。
アワビだのあじの干物、金目鯛やその他海の幸も串に刺したり貝ごと乗せたりしてじゅくじゅくと焼いていく。
ドナッティさんと岩田さんがビール片手に次々と焼き上げてくれるが、あがる端から誰かに食われる。2人とも、自分の分もちゃんと食ってよ?
夜九時頃までわいわいと遊んだあと、俺たちはキャンプカーに別れて休む。
翌朝。
岩田さんがごそごそ起き出したんで俺も起きることにした。
トイレを済ませた岩田さんがコーヒーを入れてくれたんで、ありがたくご相伴してると、女性陣のほうもバスから降りてくるメンバーが出始めた。
「こんな贅沢なキャンプ、はじめてです」
ドナッティさんが嬉しそうに笑いながら岩田さんからマグカップを受け取る。
「アメリカじゃ一般的じゃないんですか?」
俺が聞くと、アメリカでも普通キャンプカーといったらワゴン車がポピュラーで、学生時代はレンタカーで出かけたりもしたようだが、ウチが買った大型バスを改造した、ホテルなみの内装のような車は生まれて初めて見る、といっていた。
まあ喜んでもらえて何よりだ。会社の経費で買ったから俺が威張ることでもないんだけど。
ドナッティさんと岩田さんが起きれば、朝飯の準備となる。
彼らしか調理スキルがないからな。
全員が起きて朝食が終わると、後片付けをして宿に戻る。
キャンプカーを2台収納しなおして、SUVを出す。
「キャンプ楽しいねー」
沙織はご満悦だ。
実は、キャンプなら奥多摩もメッカだ。檜原や小菅にはオートキャンプ場もあるし、今度みんなでいっても良いかな。
宿に帰ってからは、改めて海水浴に繰り出す。
ここでも水無瀬姉妹が合流してきた。あんたらダンジョンはいいのかよ?
と思ったら、午後から潜る予定だそうだ。
タフだなあ。
2週目も終わりになると、俺たちが選任で当たっているドクターチームも、全員<リザレクション>をマスターできたようだ。
そこで、少し早いけど彼らには奥多摩に戻ってもらい、残りの期間を「教える側」に回ってもらうことにした。
なんでもそうだけど、教わる側から教える側に回ることで、更に深く理解が進む。
そんなわけで、砂川先生に頼んで、急遽彼らを奥多摩で引き受けてもらった。
この頃になると10層未満で訓練してるチームはほぼいなくなる。
そこで、自主訓練でスケジュールが空いているチームが潜るようになる。
土肥も夏本番で海水浴客が多くなるシーズンだけど、徐々に参加者の真剣みは増し、あまり海水浴やスキューバで遊ぶような顔ぶれは減ってくる。
「私たちに同行していただけまへんやろか?」
水無瀬静流さんが、ドクターを帰して暇をしている俺たちをめざとく見つけて頼んできた。
ちらっとほかのメンバーを見るが、特に不満もなさそうなので
「いいですよ」
と、彼女たちの訓練に帯同することにした。
「今日は何を?」
と聞くと、彼女たちは、20層の指導員資格にチャレンジするようだ。
通常なら、2チーム12人に資格保有者6名の3チームで当たるが、俺たちが水無瀬姉妹のチームに付き、もう1チームに資格保有者を付かせることにした。




