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霊力の有無と、符の力



お久しぶりの更新になります。間が空いてしまってすみません。

またもや起きた暗転、二度ある事は三度ある。と言う訳で、探索開始です。

それではどうぞ。




  *


「ああ、今日も来ましたわね」


 憂鬱そうにヒトミは呟いた。隣ではツクモと能古が、やっぱり、という表情で顔を見合わせる。


「こう毎日続くとうんざりしますね」


 ツクモが狐火を出現させて明かりを確保すると、ヒトミはすまなそうな表情で頷いた。後輩達の顔を眺め、そして気合を入れるかのように勢い付けて立ち上がる。


「仕方無いですわね。──手早く済ませて、とっておきのお菓子でもいただきましょう?」


「わわ、が、頑張りますっ!」


 能古が携帯を握り締めて立ち上がる。ツクモもそれに続いた。三人は連れ立って、暗闇に塗り込められた廊下へと歩みを進めた。


 狐火で照らした廊下には当然のように何の気配も無い。ヒトミとツクモは戦闘装束に着替えると、慎重に一階の廊下を進んでゆく。


「今日はどう回ってみます、ヒトミねえさま?」


「そうですわね。結局昨日も一昨日も行かなかったから、今日は二階を見てみましょうか。ノコノコちゃんのような人が他にいないとも限りませんし」


 ──一般的に、強い霊力を持つ者は女性の方が多いと考えられている。その理由については、民俗学や宗教学、或いは心霊科学の観点から様々な推論がなされてはいるが、どれも決定打に欠けていた。事実だけが宙に浮いたままだ。


 しかしながら実際にあやかしと戦う術士には男性が多い。これは単純にフィジカルや環境の差である。多少の霊力を秘めていたところで、その力を攻撃に転嫁出来なければ意味が無いのだ。武術や術式の鍛錬を積み、攻撃の手段を得なければ霊力があろうとも逆にあやかしの餌となるだけだ。


 故にイズミ程でなくともヒトミやツクモのような人材は貴重なのであるが、──しかし能古のように、霊力を持った人間がこの寮に他にも存在している可能性は大いにあった。


「もしかしたら、異変に気付いていても一人で隠れて怯えている子が他にもいるかも、って事ですね」


「あの、も、もし、そういう子がいたら、どうするんですか」


 噛み噛みの能古の問いに、ヒトミは緊張した面持ちのまま静かに答える。


「保護します」


「で、でも、それだと、ヒトミ先輩やツクモちゃんの正体が……」


「それでも。──一人で心細く震えている子を、見過ごす事は出来ないでしょう?」


 凛とした佇まいで笑むヒトミを、能古ははっとして見上げた。そうだ、二人はそんな事厭わずに自分を助けてくれたではないか、と改めて思い出す。


「そ、そうですね、そうですよね……。うん、うん! わ、わたし、頑張ります!」


 フンスと鼻を鳴らさんばかりの能古の返答に、ツクモは思わず笑みを零す。ヒトミも口許をほころばせた。


「さあ、行きましょう。二階を一通り見回ったら、三階に登って……それから神殿に向かいましょう」


「はい!」「はいぃー!」


 三人は気合を入れ直し、中央階段を登り始めたのだった。


  *


「では、今日は宮元君と私は別行動を取る事にしましょう。何かあったら直ぐに式を飛ばして連絡します」


「気を付けてね、パパ、宮元君。敵が出て来たら戦わずに逃げて、直ぐに知らせて」


「承知しました」


 ナユタの部屋の前で五人は打ち合わせを済ませた。寮生長の手にはナユタに渡された何種類かの符が大事そうに握られている。


 後ろでランタンを持つ宮元が軽率に口を挟んだ。


「でも、その符があったら攻撃も出来るんやろ? 知らせは送るにしても戦こうたらアカンのか? ワイもお前らみたいにカッコよう戦こうてみたいわ」


 軽薄な宮元の言葉にカラハが眉をしかめた。呆れたように吐き捨てる。


「あのな、お前らは霊力が殆ど無ェんだ。俺らに関わった事で僅かに、例えばこの中で動ける程度の霊力はあるが、そもそも自発的に戦えるような手段を持っちゃアいねェだろ」


「……一応僕の霊力を込めてあるから符で攻撃は出来るけど、目眩ましとか時間稼ぎぐらいに思っといて。くれぐれも戦おうなんて思わないで」


 カラハの強い口調をフォローするかのように、ナユタが念を押した。冗談やがな、と肩を竦める宮元に、シャレになんねェぜ、とカラハが牙を見せて笑った。


 ──術を使うには霊力が必要だ。火を点けるだけならばマッチで事足りるが、燃やし続けるには油が要るのと同じだ。発動するだけならば符があれば可能だが、攻撃する程の術ともなると霊力というエネルギーが必須となるのだ。


「──さて、そろそろ出発しようか。さっき打ち合わせた通り、僕らは南寮から神殿を目指すから、寮生長と宮元君は北寮を回って欲しい。最終的には神殿で落ち合おう」


 鳩座が声を上げると、皆は揃って頷いた。皆の顔に緊張が満ちる。


 ──また物騒な夜は始まったばかりだ。


  *





霊力についての考察は色々ありますが、取り敢えず自分の中ではこうかな、という論というか設定は固めてあって、それに従って世界を構築して書いております。

鳩座はともかく寮生長と宮元が何故動けているのかについては、宮元は前の事件の際に妖力を使った事で僅かではあるが霊力が備わったという事になっております。

寮生長に関しては、以前あやかしとの戦いに巻き込まれたというのもありますが、それ以後補佐としてナユタ達と共に行動したり符を扱ったりしている為に霊力が染み付いた、というような感じです。


さてさて、今度は何が起こるのか……。次回更新をお楽しみに、なのです。


そして★評価やブックマーク、レビューなどで応援して頂けると励みになります。

また、感想などお気軽に頂けると泣いて喜びます。気に入った回にはいいねを付けて下さると頑張れます。

是非是非、宜しくお願い致します。


  *


現在、この作品のスピンオフとして、ノクターンやムーンライトで作品を幾つか公開しております。

なろうと同じ「神宅真言」の作者名で活動しておりますので、もし興味を持たれたオトナな方は是非検索してみて下さい。



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