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同じ事象と、違う場所


  *


「これが、男子寮の皆さんが仰ってた術式陣ですわね!?」


 一方女子寮でも、またもや同様の事象が起きていた。しかも今度は女子寮のホワイトボードに術式陣が出現したのだ。


「ヒトミ姉様、こちらの二匹はあたしが引き受けます! 姉様は陣を!」


「分かったわ、お願いねツクモちゃん!」


 ツクモがソフトボールよろしくアンダースローで狐火を蛇に当てながら叫ぶと、ヒトミが眼前の一匹を斬り伏せながら走り出す。素早い動作で蛇を避けながらホワイトボードに近付き、そして光り始めていた陣を真っ二つに斬り下ろした。


 硝子の割れるような音が響き、陣が消え失せるのと同時に、ツクモが残りの蛇を全て焼き尽くす。


「ふう、何とかなりましたね」


「陣も無事破壊出来ましたし、今のところ他に変わったところは無さそうですわね。──ノコノコちゃん、そちらの首尾はどう?」


「こっちもバッチリです! 上手くいきましたあ!」


 二人から少し離れた位置で携帯を持った能古がVサインを出す。能古はヒトミの発案で、万一例の陣が女子寮に現れた際にそれを撮影しようと構えていたのだ。


「お手柄ね、ノコノコちゃん!」


「これで陣が何なのか分かるといいですね!」


 ヒトミとツクモが能古の快挙に顔を綻ばせる。勢いづいた三人はそのまま探索を続け、やはりと言うべきか神殿で例の大蛇のあやかしを発見した。


「やっぱりあれが出るのはここなんですね」


 ツクモが静かに神殿を覗きながら呟く。広い神殿の畳の上に、巨大な黒蛇がとぐろを巻いて紅い目を光らせていた。


「どうします、ヒトミ姉様? 前回と同じ方法でいきますか?」


「火が効くというのは男子寮でもそうだったようですし……今回はわたくしも火を使います。ツクモちゃん、サポートお願いしますわ」


「分かりました!」


 既に二人は戦闘装束に変身済みだ。ヒトミは全身から美しい白く燃える燐光を立ち昇らせると、その姿を白い炎に変化させる。


「『武鶴飛翔・炎翼<ブカクヒショウ・エンヨク>』、参ります!」


『最大出力! 猛狐炎舞<モウコエンブ>!』


 ヒトミとツクモは同時に術を発動させると、バン! と勢い良く扉を開け放ち、一気に神殿の中へと飛び込んだ。ツクモの操る火狐が五体同時に大蛇に飛び掛かり、その黒く輝く鱗に炎の刃を突き立てた。


「アガ、アアガアアア!?」


 不意を突かれて大蛇がのたうちながら炎から逃れようと暴れるが、喰らいついた狐は決してその牙を離そうとはしない。足掻き叫びを上げる大蛇の大きく開いた口に、残る一匹の火狐がその身を潜り込ませ内部から大蛇を焼き焦がす。


 そして跳躍したヒトミが翼のように二本の剣を広げ、大蛇に迫る。その剣は巨大な炎に包まれ、あたかも火の鳥の如く羽ばたいた。


「覚悟なさい!」


 ヒトミは大蛇の眼目掛けて炎の剣を振り下ろす。剣は正確に蛇の紅い瞳を捉え、一気に頭部を刺し貫いた。


 ガクリ、と大蛇から力が失われ炎に包まれる。ヒトミは蛇の眉間を蹴って剣を両目から引き抜くと、大きく後ろに飛び退いた。


 三人が固唾を飲んで見守る中、断末魔の絶叫を上げながら大蛇の身体が徐々に光の粒となってほどけてゆく。炎と光の粒子が舞う光景は幻想的で、三人はその場に立ち尽くしながらただそのさまを見詰めていた。


  *


 一方男子寮では、前日とは別の場所に術式陣が出現していた。


「くっそ、何でこんな所に……!?」


「マシバ・カラハ、僕が行く! そちらはナユタ君と君で頼む!」


 鳩座が蛇を斬り伏せながら叫ぶ。玄関ホールの太い柱に刻まれた術式陣に鳩座が飛翔し刀を振るうと、例の如く硝子の割れるような音が響き、陣は崩れ去る。


 着地した鳩座が振り返ると、何匹もいた蛇がナユタの炎の結界で全て焼き尽くされたところだった。


「……陣の出現場所は一定ではないという事か。これは厄介だな」


「もしかすると前回の女子寮の陣は見過ごした可能性がありますね」


 鳩座の台詞に寮生長が相槌を打つ。溜息をついたカラハが剣を収め、緊張が解けたナユタが大きく息を吐く。


「ぐだぐだ言っててもしょうがねェ。次行くぞ次!」


「まさか大蛇まで違うとこにおるとか言わんやろな?」


「それだと厄介ですが……しかしあの巨体ですから、あれが動けるとなるとやはり場所は限られてきます。神殿か食堂のどちらかでしょう」


「じゃあまず神殿から行ってみる?」


 五人はぞろぞろと移動し、そして神殿にて前日と同じく鎮座する大蛇を発見した。そろり覗いて存在を確認すると、五人は顔を見合わせた。


「……どうするよ。また誘導するか?」


「カラハ、ここなら槍使える? だったら僕が符を飛ばして炎の結界張ればイケるかも」


「それなら僕が囮になろう。気を惹き付けている内に隙を突いて符を飛ばせばいい」


「うっし、それでいくか。気を引く役は俺もやンぜ、二人で掛かった方が危険度も下がるだろうよ」


 三人の話が纏まり、それぞれが配置についた。鳩座とカラハが二方向から攻撃を仕掛け、少し離れた場所から目立たないようにナユタが符を放つ算段だ。


 寮生長と宮元が見守る中、準備を整えた三人が顔を見合わせて頷き合った。すぅ、とカラハが息を吸い、そして。


「れでぃ……ごー!」


 合図と共にバン! と扉を開き、カラハと鳩座は同時に神殿へと飛び込んだのだった。


  *





またもや女子寮組が先に撃破。これはあれですね、戦闘要員が二人しかいないからこう、スピーディーに事が進むって感じですね。


謎のまま手探り状態で戦う日々。今後どうなるのか乞うご期待。



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