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蛇の開きと、クレーター



前回に引き続きバトル回という事で、オススメBGMのコーナーです。


Gargoyleの『神風ギャング団』など如何かな、と。

アップテンポながらも少し明るい曲調とノリの良い歌詞。息の合った男子寮組のバトルに丁度いいのではないかな、と。

宜しければお試し下さい。

それでは本編をどうぞ!




  *


「──来たね」


 玄関に手ナユタ、カラハ、そして鳩座の三人は大蛇のあやかしを待ち受ける。既にナユタの手によって何種類かの符が貼られており、そしてナユタとカラハの姿は戦闘装束へと変化していた。鳩座もまた、二人に追従するかのように背中に翼を生やしている。


 鳩座が握るのは愛用の居合刀のままだが、カラハの武器はいつもの三つ又の槍に持ち替えられている。準備万端、といったところだ。


 ──ザ、ザザザァ、ザザ……。


 不気味な鱗擦れの音が響く。大きな蛇がゆっくりと、まるで余裕部っているかのように悠々と姿を現した。


「ナユタ、準備はいいか。タイミング間違えンなよ?」


「侮って貰っちゃ困るね。カラハこそ、今度は逃げ出すなんてしないでよ?」


「お二人さん、余裕だね。さあ、宴会の仕切り直しだ」


 三者三様、揃ってニヤリと笑んだ。主役を迎える準備は整っている。


「──さあ、蛇さんこちら! 手の鳴る方へならぬ、鳥舞う方へ、いらっしゃいだ!」


 まずは鳩座が羽ばたきながらひらりひらりと大蛇に相対した。


 素早い動きで蛇を翻弄し、居合刀を何度も走らせる。カキンカキンと金属音が響き、刀はその都度鱗で弾かれる。──ダメージを与えられないのは承知の上。


 鬱陶しさに苛立つ蛇は鳩座を捕らえようと躍起になるが、翼を生やした鳩座の動きはそれを決して許さない。ひらりひらり、舞うが如く攻撃と回避を繰り返し、やがて知らず知らずの内に大蛇は思惑通りに誘導されてゆく。


「凄ェな鳩座。あれでもうちっと攻撃に重みがありゃア相当に強ェんだがな」


「人には向き不向きがあるもんさ、彼は今、期待通りの働きをしてくれているよ。──さあ、もうすぐ僕の出番だ」


 さりげなく誘い込んだのは柱に囲まれた一角。大蛇の全身がその区画に完全に入った瞬間、鳩座は身を翻して離脱する。戸惑う大蛇の姿に、ナユタがニヤリと笑んだ。


「術式、起動!──『熱鎖縛炎<ネッサバクエン>・螺旋』っ!」


 ナユタの声と同時に、柱に貼られた符が蒼白い炎を噴き出す。それはナユタの操るアマノミカゲの加護を宿した浄化の炎。


 たちまちに炎は鎖が如く伸び、渦を巻きながら蛇に絡み付き、そしてその動きを封じてゆく。


「グ。ゴ。ガアアアア!?」


 大蛇が巨大な白い牙から毒液を飛び散らせながら吠える。地を揺るがす咆哮はびりびりと、痛い程に空気を揺らす。


「カラハ、今だ!」


「おおよッ! トドメは任せなッ!」


 カラハが第三の瞳を輝かせながら叫ぶ。


 身体中から鈍銀の燐光が噴き出し、ふわり髪が靡きコートの裾が翻る。大上段に構えた三つ叉の槍に、光が集まって行く。


「──くたばりやがれッ!」


 気迫と同時、カラハが強く大きく、踏み込んだ。


 その一歩には音が無かった。いや、正しくは聴覚では捉えられない程の低い響きが、振動のように直接身体の芯を揺らす、そんな『音』であった。


 その踏み込みに伴って振り下ろされた槍は、尋常ではない圧と重みをもって、大蛇の頭へと吸い込まれてゆく。霊気の燐光によって創られた刃は大太刀の如く長大に、剃刀よりも確かな鋭さを誇って、蛇の中心を縦に通り抜ける。


 しん、と耳に痛い程の一瞬の静寂が通り抜けた。


 はらり、と靡いていたカラハの髪とコートが落ちる。それが合図かのように──蛇が、自らの重みに耐えかね縦半分に分かたれた。


 中心から綺麗にずれた身体が光の粒子となって溶けてゆく。同時にナユタの術による炎も霧散し、踏み込んだ姿勢のままだったカラハはそこでようやく立ち上がった。


「……中心を真っ二つか、凄いね。まるで蛇の開きだ」


 鳩座が呆れたように呟く。翼と刀を収めた鳩座は、カラハの霊気にあてられ全身に冷や汗を掻いている。一方、術を解いたナユタは装束のままへなへなと座り込んだ。


「蛇より君が怖いよ、カラハ」


 ナユタの視線はカラハの足許に注がれていた。カラハが踏み込んだ一歩、その痕がまるで爆発でも起きたかのように、小さなクレーター状にえぐれていた。


「悪りィ。ちィと本気、出汁すぎたか」


「……その言い方、まだ余裕ありそうだよね。ああ、四月の祭式教室の時のアレは、ホントだったんだ」


「お前、俺がフカしてるとか思ってたな? ……まァイイや。これ結界解いたら直るんだろ? そのつもりで気兼ね無くヤったんだがな」


「直らないなら大問題だよ」


 ナユタはふう、と大きな溜息を吐いた。大蛇のあやかしはもう、殆どが光の粒となってはらはらと散っている。


 そして最後の一粒が消えると同時。──暗闇は取り払われ、全ては元に戻ったのだった。


  *





はーい女子寮組に続き男子寮組も無事、蛇さん撃破です。

彼らにしてはかなり慎重な作戦でした。前回全然攻撃効かなかったからビビったのかな。

とは言えカラハがまたオーバーキル気味の攻撃力を発揮。これは『瞳』が開いてるせいですね、多分。

折角ナユタが術使ってるのに霞む霞む。


あ、戦闘シーンという事で前書きでオススメBGM書きましたが、前話にも前書きオススメBGM追加しました。

Gargoyleでお揃い。

今章は多分、歌無し劇伴としてはインド系ダンス音楽、バトルなどで盛り上げたい時の歌有りBGMはGargoyleで揃える感じですね。


さて、あの蛇は何だったのか、男子寮だけに現れた術式は? そして女子寮の新キャラちゃんは!? などなど……。

謎がまだまだ盛り沢山の第二章、ぼちぼち更新予定。引き続きお読み頂ければ幸いです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] カッコイイ、一言です。 この緊張感良いですね。 でも、戦闘終わっちゃったよ! 盛りだくさん期待しています!
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