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中間試験と、非日常



お久しぶりです。更新再開でございます。

そんな訳で第二章、始まりです。


今回は入寮祭から一ヶ月近くが経ち、五月の下旬、前期中間試験からのスタートです。

テスト期間中に謎の事件が頻発し、そして寮祭で皆が大きな戦いに巻き込まれていきます。


そして恒例のお薦めBGMのコーナー。今章は零章一章とガラッと雰囲気を変えて、

ヒンディー・ダンス・ミュージックなどをオススメします。

インド系のダンス音楽のことです。EDM要素強いのも良し、エスニック色全開なのもイイ。インド映画のサントラなんかも合うかも知れません。

お暇があれば色々聴いてみると面白いかも、です。




  *


「……カオスだな」


「まあね。この期間はいつもこんな感じだよ」


 ナユタとカラハは二人並んで、男子寮の玄関脇の廊下に設置されている大きなホワイトボードを眺めていた。


『急募・神道学概論のレジュメ。北二〇五の佐山』『倫理哲学のノート求む。南三一一・一教灰田』『国史概論のテスト範囲の資料持ってる人いませんか北寮三〇九号室竹中』


 巨大なホワイトボードを埋め尽くさんばかりに、このような類の文言が所狭しと書き込まれていた。


「中間テストだからねえ。皆必死なんだよ」


「だからって。欠かさず講義出てりゃア大丈夫じゃねェの? 特にノートとか資料とか、毎回ちゃんとしてりゃ平気だろうに」


「寮生が皆、ちゃんとしてると思う方が間違ってるよ、カラハ」


「……そういうモンなのか」


 呆れるカラハにナユタは苦笑を漏らした。


 そう、明日から大學は前期中間試験という魔の期間に突入するのだ。


  *


 普段から非日常感のある寮の日常は、テスト期間になると本物の非日常と化す。


 通常ならば消灯時間になると部屋の電灯を消さねばならず、公共の場以外の他の部屋への訪問は厳しく禁止されているのだが、テスト期間中は部屋の明かりは落とさずとも構わない上に、他の部屋への訪問も自由となる。多少ならば声を出しても怒られる事は無く、コピー機も二十四時間使い放題だ。


 勿論それは試験の勉強をする為の特例措置なのだが、ここが男子寮である以上、皆が皆勉強に勤しんでいるかといえば決してそうではない。


 当然、適当に点が取れればそれで良い、という考えの者が寄り集まって良からぬ事を致すのが、男子学生というものの常である。


「おーい、マシバあ。今晩三一四の守屋の部屋で卓立てるってよ。お前来ねえ? カードじゃなくて牌だぜ、牌!」


 自室へと戻ろうと廊下を歩いていると、一班の桜谷が声を掛けて来た。


「何お前ら、勉強しねェで麻雀かよ」


 苦笑を返すカラハに、桜谷は屈託無く笑う。『卓を立てる』とは麻雀をするという意味である。どうやらこのテスト期間の環境を利用して、普段ならばこそこそと談話室で隠れてカードでやる麻雀を、誰かの部屋で牌を使ってやろうという魂胆のようだ。


「まだ中間だろ、そんな必死こかなくてもイケるイケる」


「まあそうだけどよ。分かった、暇あったら顔出すわ」


「ええ、ちょっとカラハ、大丈夫なの」


 ナユタが脇腹を突っつくが、カラハは事も無げにはははと笑う。


「ンなどっぷりはしねェって。それに明日の試験はノート持ち込み可のヤツばっかだしな」


「自信たっぷりだなあ。後で泣いても知らないよ。持ち込み可って言ったって、肝心のノートは大丈夫なの?」


 呆れるナユタにカラハは牙を見せて笑う。もう、と溜息をつくナユタの肩をポンと叩き、カラハは胸を張った。


「馬鹿にすンなよ? 俺ァ自慢じゃねェが、一回生の時は取った講義全部オール優で通ってンだ」


 マジか、と真顔になるナユタに、再度カラハは牙を見せてニヤリと笑った。


  *


「……うっわ、マジだ。カラハのノート綺麗すぎ。何これ。このノートあったらテスト余裕じゃん」


 カラハのノートを見せて貰ったナユタが絶句する。な? と自慢げなカラハの顔とノートを交互に見遣り、ナユタは溜息を吐いた。


 夕飯も食べ終わり風呂にも入り、二人はいつものようにナユタの部屋でまったりとお茶を楽しんでいた。いつもと違うのは、カラハが自身の勉強道具一式を持ち込んでいる点にある。


「そのルックスで勉強まで出来るとか。完璧超人すぎでしょ、カラハ。しかも字まで綺麗だし。なんかずるい」


「ずるくねェよ。実力だっての。講義もブッチしねェで全部ちゃんと出てるしな」


「そういやそうだね。イメージと全然違うっていうか」


「……皆、俺にどんなイメージ持ってンだか」


 ナユタの淹れてくれたハーブティーを飲みながらカラハが嘆く。一応、テスト勉強の名目でナユタの部屋に居る訳だが、どうやらその必要は無さそうだった。ちなみに同室の後輩である猪尻は、テスト勉強をするべく同じ学科の一回生の部屋へと出掛けているらしい。


 そこへ、コンコン、とドアをノックする音が響く。どうぞー、とナユタが入室を促すと、扉の隙間から宮元が顔を出した。


「お邪魔しまんにゃわ。おっ、カラハもおる、丁度エエわ」


「どうしたの宮元君。って、ああ、どうせお目当てはコレでしょ?」


 ナユタが明日のテストに持ち込む予定のノートをひらひらさせると、話が早ぅて助かるわ、と宮元はわははと笑った。


「ちょいとそれ、コピーさせてくれへんやろか」


「いいけど、確か持ち込み自体は自筆じゃないと駄目じゃなかったっけ。コピーだと多分取り上げられるよ?」


「ゲッ、マジか」


 狼狽える宮元にカラハが悪い笑みを浮かべながら、いい方法教えてやろうか、と囁いた。


「えっ何やカラハ、バレへん方法あるんか!? 是非教えてえな」


「そうだな、コピーしたやつを製本してノートに仕立てるってのが常套手段だが、もっと簡単なのはルーズリーフ使うやつでな」


「おっ、ルーズリーフに直接コピーするんか! 確かにそれだとバレにくいわな!」


「でな、コピーする際に色味を調節すンだよ。薄めでやるのがコツでな、そうするとシャーペンで書いたっぽく見えるんだわ」


「おお! 早速試してみるわ! ぐふふ、おヌシもワルよのう」


 こそこそ話す二人の会話に、ナユタははぁと溜息をついた。全く何をやってるんだか、と呆れた目で眺めていると、不意にそれは起こった。


 ──バチンッ!


 突然大きな音を立て、部屋の電灯が消えたのだ。


「え、……何? 停電?」


「何や突然、しかもこないな時に。迷惑極まりないな」


 ナユタと宮元の二人の会話を余所に、カラハは難しい顔をして無言で宙を睨んでいた。しばらく経っても回復の見込みが無い事を悟ると、仕方無ェな、と闇の中ゆっくりと立ち上がる。


「ちょっと様子見て来る。二人は部屋でじっとしてろ」


「え、大丈夫、カラハ?」


「心配要らねェ。夜目は利く方でな」


 そう言い残して部屋を出るカラハの前には、黒を塗り込めたが如き重く凝る闇が広がっていた。


  *





そんな感じで始まりました、第二章。

今回ではヒトミ&ツクモの女子寮コンビやオウズ教授などが活躍の予定です。

勿論他のメンバーも頑張りますし、新キャラも出てくる予定です。

そしてはっきりと公言してこなかったカラハの秘密が明らかに……! 乞うご期待、です。


ところで現在、ムーンにて連載中のスピンオフがありまして、そちらをほぼ毎日更新しているので、こちらの更新頻度は若干緩やかな予定です。

ゆるゆるとお付き合い頂ければ幸いです。



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