呪い期限最終日:後編
ワゼ暗躍中
SIDEワゼ・・・・inビウイン
時刻はすでに真夜中になっており、あたりは暗くなっていた。
「・・・・これで完了したでしょうかネ」
ワゼはそうつぶやき、背後を振り返った。
背後にあるのはビウイン教の大聖堂・・・・本来は、ビウイン教最高職の法皇の家でもあるが、先ほどワゼはそこに強行的に押し入った。
フードで姿を隠しつつ、その場にいた全員の目の前に置いたのは、このビウイン教で行われてきた不正を明確に示す証拠の山。
コピーも大量にとって、原版もすでにワゼの手中に収めていた。
呆れたというか、こういう宗教は最初はいいものの、時間が経ちすぎて発酵したのか保守派、改革派どちらにも腐りきった部分があった。
すべてミニワゼたちによって洗い出されており、少々強引な拷問も行って自白させたものもある。
その事を突きつけると、その場にいたビウイン教の関係者たち全員の顔が青色を通り越して真っ白となっていた。
この章個すべてを各国にばらまかれたら、もうはっきり言ってビウイン教そのものがぶち壊れることになり、破滅である。
もちろん、腐敗していないようないい人もいるのは知っているが、その人たちにとってもこの事実は葬り去りたいというか、消し去りたい恥ずべき汚点だと思えるだろう。
なお、ワゼはローブで姿を隠してはいたが、すでに抱いたどこの誰かのめぼしはついているだろう。
しかし、その証拠を消し去ろうにもすべてワゼが抑えており、何かちょっかいでもかけようものなら・・・・すべてが白日のもとにさらされる。
こちらの情報の侵害だとか言って訴えようにも、それをしたらどこからどうやってそのようなことがわかるのかだという糾弾もあるし、ビウイン教は完全に手詰まりとなった。
・・・特にひどいとワゼも思えたのは、改革派の方である。
保守派の上層部の腐敗しているところをきらって別れたはずなのに、その改革派の中心人物その物が思いっきり腐っていたのだ。
惰眠、暴食、色欲・・・・人間の三大欲求をまともに超過して受け入れているのである。
しかも、改革派の教えの中には「モンスターは資源」「犯罪奴隷にするぐらいなら速攻死刑」とか言っているのだが、その人物はそれをさらに曲解し、よけいひどかった。
モンスターは資源と言うことで、奴隷販売の中にあるモンスターたちで、人と色欲的なことが可能である者たちを買い取って自身の色欲を見たし、犯罪奴隷扱いにして気に食わないやつを速攻で消し去る・・・もう性根がこれでもかと言うほど腐っていた。
なので、流石にこちらは黙るわけにもいかずにすべて白日の下にさらけ出してやった。
今頃自身の行ってきたことがすべてバレて、隠そうにも隠せないような状態にしている。
・・・モンスターに関しては、ワゼのしご主人様・・・ライの従魔とも過ごしていたこともあり、こちらは救おうかと思っていたが、全員体が残虐的嗜好によってダメになっており、もはや介錯するしか手がなかった。
そこは、魔道具であるワゼの心でも辛かった。彼女たち・・・ちょっとオスが混じっていたが、もし、ライと出会えていたらもしかしたら別の人生もといモン生をおくれたであろう。
「・・・まあ、これ以上生きることもできないような状態でしたし、自ら死を望んだことなので良しとしましょうかネ・・・」
とりあえず、当面はビウイン教からの面倒ごとが来ないようにしたので、ワゼは大急ぎでライのもとに戻るのであった・・・・・・。
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SIDEライ
「今晩で死ぬか死なないかが決まるな・・・・・」
「主殿、こちらが不眠薬じゃ」
アルテミスに薬を渡され、ライはグイッと飲んだ。
紅桜による3日以内の死。
それは紅桜によって所有者自身が刺されて死を迎えるものであり、今晩はその期限ぎりぎりに当たる3日目の夜である。
この3日目を完全に乗り切れば、死を免れるはずだが・・・・・・そこまでに自身の目で確かめるべく、ためらいもなく不眠薬を飲んで寝ないようにした。
「紅桜は・・・・ここにあるしね」
紅桜そのものは、離れておくことができる範囲に設置。
そして・・・・
「寝ずの番です!!」
やる気満タンのハクロがそばにいた。
他の皆も周囲に集まり、こちらも全員不眠薬を飲んでいる。
・・・なお、この不眠薬はあくまで睡魔を抑えるものであって、連続服用は危険なものらしく、今日一日だけの使用に限られている。
「・・・まもなく日付が変わる時刻」
全員寝ないで油断せずに起きていて、時計を見たヤタが時刻を知らせる。
「すいません、用事が終わりましタ」
と、ワゼが部屋に入ってきた。
いつも通りのメイド服で、見た目はほとんど変わっていないようだけど・・・時間的に遅いし、本当に何をしていたんだろうか?
ワゼも加わり、さらに厳戒態勢となる。
「ワゼ、どこ行っていたの?」
「少々、掃除しに遠出をいたしてましタ」
・・・掃除をしにどこまで行ったんだろうか。というか、掃除って遠くまで行くものなのか?
「にしても、紅桜に異常はなし。現状ライ様を視察する気配がありませんね・・」
ワゼに対して疑問は持ちつつも、現状の報告がなされていた。
「油断しているときが一番危険じゃよ。我も薬品調合中にうまくいったと思ったら、爆発したからのぅ・・」
「何を調合していたの?」
「かゆみ止めで夏の時じゃよ。蚊が一番うっとおしくてな・・・」
モンスターでも蚊刺されはいやらしい。
「日付が変わって、所持して3日目が終わるまであと10分であります」
時間が経ち、もう外は完全真っ暗、全員厳戒態勢の中、ミアンがそう告げた。
「あと5分・・・」
「あと3分・・・・」
「あと1分・・・・」
「あと20秒・・・・」
「・・10」
「・・9」
「・・3」
「2」
「・・・・・1」
「「「「ゼロォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」」」」」
ついに、紅桜に刺されることもなく3日目を終えた僕らは、呪いによって刺されることがなかった瞬間!
「ふぁぁぁぁぁっ・・・」
「あひぇ?ものすぎょくねみゅく・・・」
「あふぅん・・・」
全員一気に眠気が襲ってきた。
「あ・・・不眠薬の効能切れじゃ・・・・思ったよりも早・・・」
どうやら、服用していた不眠薬の効果が切れ、一気に眠気が来たらしい。
そのあまりに早い効果切れによる睡魔に、僕らはあらがえずに眠りについたのであった・・・
・・・この場合、朝目覚めるとどうなるかな




