密かに進む企み
ビウインから戻って、ライたちはいつもの冒険者業を再開した。
「マッサージ待ちの人多すぎやで」
スルトは自分が受け持つマッサージ屋の前に並ぶ列を見て、ちょっとぐふぅとか言いそうな状態になっていたけど。
「しかし、戦争がまだ終わっていないんですね」
「まだまだ戦況は硬直状態の様な感じらしいよね」
王国と帝国の戦争はまだまだ続いているらしく、いまだに参戦募集の張り紙が張ったままである。
まあ、こっち側に実害がなければ基本参戦はしないつもりだ。
「『プラントイーター討伐』とかも面白そうよね」
「『ジューメンダス草の採取』、『眼球草採取』なども依頼もよさそうじゃな。余りは我の薬品づくりに使えるのじゃ」
今日もギルドで依頼探しだけど、なかなかいい依頼が多い。
「『メタリックジュエリーの討伐及びその素材入手』って言うのがいいかな?」
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「メタリックジュエリー」
輝く鉄の様な体色をしたスライムのようなモンスター。「○○スライム」と言った感じではないのは、スライムとは全くの別物ではないかと言われているためである。通常、スライムの場合例外はあるがその体内にはしっかりとスライムの形成の元となる核がある程度の大きさである。しかし、メタリックジュエリーの場合、体内ではなく体外に核があるという。強固で、中々壊れないので厄介性はスライム以上である。
金属を好んで食べ、鎧なども見る見るうちに捕食してしまうので別名「鎧殺し」とも言われている。
死後、ただの金属の塊と化す。
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「僕らの中には金属の鎧とかつけているのはいないもんね」
「エリーはどうですかね?その開閉部分のつがいとかは」
『金属とはちょっと違うぜよから多分大丈夫ぜよ』
大丈夫そうなのでとりあえず、この依頼を僕らは受けることにした。
「攻撃手段としては、その核を破壊したほうが良いけど何か手はあるかな」
「我の水魔法、ツバキの氷の技、ミアンの炎魔法の温度変化によって無理やりもろくして壊せるじゃろうな」
「それでだめなら保険としてロウに飲みこんで溶かしてもらいましょう」
スライムの核を溶かすスライムとはこれいかに。まあ、気にしないでおこう。
「場所は・・・ああ、前にドンパチがあった場所ですね」
要は、ザスト防衛戦の時のすぐ近くの平原である。
「今から向かえば、夕方ごろには帰ってこれるかな」
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「ふむ。あれが魔物使いのライとやらか・・・・・」
冒険者たちの中で、ライの動向を見ていた人物がいた。
ローブを深くかぶり、目立たないようにしていながらもライたちの様子をじっくりと観察する。
「見た目は17歳ごろになりそうな青年だが、あの若さであれだけの従魔・・・・ぜひとも我が改革派に入ってくれればいいかもしれないが、一筋縄ではいかないだろう」
その人物はビウイン教改革派の者だったが、勧誘して模様としているライに関する情報を集めてみると、改革派に確実に反対する可能性が高かった。
ビウイン教改革派の考えでは、「モンスターは神の使いではなく、我々が扱う資源」としている。
だが、ライの従魔たちに対する態度は資源としてではなく、かと言って無理やり従わせるような存在でもない、「家族」として接しているように見えた。
調べると、ライはどうやら従魔たちに対して昔から家族として対等に接することが多く、大事に扱っているようなのだ。
このままでは、資源としてのみモンスターを見る改革派とは完全に対立することになるだろう。
かと言って、敵対されるのは好ましくない。下手すれば保守派の方から何とかして取り込んでくる可能性もあるのだ。
どうにかして引き込む手段がないか、その人物は集めた情報を持ってギルドから去るのであった・・・・
水面下で、知らぬところでは企みがあるようだ。




