・・・そういえば、ここに寄るのか
まあ、すぐに去るけどね。
お忘れの方はいるのかな?
「・・・・すんごい久し振りに来たなぁ」
現在、ライたちがいるのは、以前にも訪れたことがある都市。
「奴隷販売区画がある都市ですか・・・・」
そう、以前ルミナスの一件で来たことがあった「スイブ」というところである。
これから向かう予定の「宗教国ビウイン」だが、そこに向かう定期船はこの都市からしか出ていない。
というか、この都市とつながっている理由としては・・・
「・・・宗教都市ビウインは奴隷販売を禁じている国。かといって、他国でも奴隷を使用している国もあるし、自国で奴隷が販売できないのであれば、他国に輸出する方針らしいです」
「なんか矛盾しているような気もするがのぅ。奴隷の売買を禁じておる国なのに、他国へは奴隷を輸出・・・・ヘンな話しじゃ」
一応この都市には奴隷販売区画があるのだが、僕らは極力そこへ近づくのを避けた。
理由としては簡単である。
「そういう趣味の人もいるでありますからな」
通常、売買される奴隷というのは犯罪などを犯したものが落ちる身分である。
けど、趣向がおかしな人ももちろんいて・・・・
人と生殖行為が可能なモンスターも奴隷にして販売したりしているらしいからね。
いやもう、まともに言うのもはばかれるダークさだよ。
なので、全員強い忌避感があるのでそこには近寄らないようにするのである。
でも、ハクロたちの見た目は・・・・美しい。
それを狙ってムリヤリという可能性もあって、僕らはとっとと定期船に乗り込んだ。
「流石に、奴隷はなぁ」
モッサンさんの好みのサイズを持った奴隷もいるのだろうが、さすがに奴隷制度に対しては強い忌避感を持っているようで、手出しはしないようである。
「自らの欲望を満たすために行くかとも思ってましたけど・・・・・」
「失敬な、きちんと分別を湧きまぐぇぇぇぇつ!!」
「いつの間にでありますか・・・・」
自然と、気づかれないようにモッサンさんはミアンの胸を揉もうとしていたので、気が付いたミアンがモッサンさんを締め上げる。
「なあアル殿、こやつ売ったほうが良いのではないでありますか?」
「同意はするけど、さすがにダメでしょ」
とりあえず、油断も隙も無いので縛り上げておく。
「こういう奴隷という制度を人はなぜつくるのですかね・・・・」
ハクロの言葉に、従魔たち全員がうなずく。
モンスターからも愚かな行為としか思えないんだよね。
とにもかくにも気持ちを切り替えて、船はビウインに向けて出港した・・・・けど。
「おえぇぇぇぇぇっつ!!」
「ライ様、大丈夫ですか?」
「マイロード、私も同じでぅうううううう」
・・・・船酔いになりました。
馬車やリーゼに乗っても大丈夫だったのに、なぜ船酔いをするのだろうか。
他に船酔いをしているのは、ツバキと・・・・
カタカタカタタタア・・・・・
「あ、エリーが辛さのあまりに人の姿からミミックに戻りました」
「船酔いから逃げる方法としてはどうなんじゃ?」
エリーもどうやら酔ったらしく、ミミックの姿に戻ればないようですぐに元のミミックの姿に戻っていた。
「船酔いに弱いでっせなぁ。あたしらはぴんぴんしているとゆうのになんでやろうか?」
「体質というか、その辺だと思うのじゃ」
いや本当に、なんでハクロたちは平気なんだ?
こちらは本当につらく苦しいんですが・・・・
「船室に戻って休みましょうか?」
「そうするよ・・・・あ、他の皆はまだ外にいたいのなら別にいいけど・・・ツバキとエリーも部屋に戻ったほうが良いかもね」
「そういたします・・」
まだ日中ということもあり、他の皆には潮風をあたらせつつ、僕はこの際寝たほうが楽だと思って船室に入った。
1等客室は無理でも、2等客室は何とか取れているからね。
まあ、僕は一部屋で、他の皆の分の部屋も取っている。さすがにこの年頃になってくると、どことなく恥ずかしいというか、そんな感じがあるけど・・・・吐き気がホントひどい。
そこで横になりつつ、吐き気の波がおさまるまでまつ。
と、部屋にハクロが入ってきた。
「ハクロ・・・?まだ外で風にあたっていてもいいんだけど」
「ええ、ですが、やはりライ様が心配なので来ました」
そう言いながら、ハクロはもうすっかり使いなれた足を使って・・・・膝枕をしてきた。
あ、なんかこれ心地いいかも・・・・・・。
「ふふふ、身体が変わってよかった利点とすれば、こうしてライ様を膝枕できることですかね」
「前の蜘蛛の身体もよかったけど、これはこれで・・・・」
なんとなく安心感があるというか、ほっとするよ・・・・。
そのままライは、すぐに吐き気も収まってそのままハクロの膝枕で寝た。
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・・・・すやすやと寝息を立てるライの様子を見て、ハクロはその頬を軽くなでる。
その顔は、愛しいものを見るかのような、そんな雰囲気を持っていた。
幼いころから見てきた自身の主。
愛しき者でもあり、昔から一緒にいた大事な人。
前の身体ではこういうこともできなかったが、こうして両足をしっかりとえたおかげで、昔から憧れていた膝枕をライにすることができた。
・・・足がちょっと痺れるけど、気持ちよさそうに眠るライの顔をみて、その辛さを忘れる。
従魔なのに家族のように大事に接してくれたこの人を見ると、本当に心の底から愛しいとハクロは思えた。
けど、最近寂しいと思えることもある。
だんだん従魔も増え、みな平等に扱ってくれている分、自身が独占していたライの事を独占できなくなってきた。
変わらず接してくれているのはうれしいけど、もっとこう一緒に居たいという気持ちがハクロの心にあった。
なんとなく、心が命ずるままに、膝枕をしながらも軽くライをハクロは抱きしめる。
以前、胸で死なせかけた教訓から、頭からよし掛かれるようにして、そっとひざから自身の胸元に、ライの頭を置いて、その体をそっと抱きしめた。
もっと、もっと、もっと先の関係に進みたいという気持ちもある。
けど、自分は従魔。モンスターであり、そうおいそれとは進めない。
もどかしいような気もし、求めたいという本能がどうしてもあった。
けれどもこらえ、ライを抱きしめることによってせめてもの欲求をハクロは満たそうとするのであった・・・・・。
メインヒロインでもあるからなぁ・・・・ハクロは。
いつか爆発しそうで怖いとも思えるが。抑えられなくなる限界はいつだ!!
さて、いよいよ初めての他国上陸です!!




