冬の健康診断 セカンド
本日2話目
これって物語の中だと時間が進んでいるのがよくわかるね
ツバキもライの従魔に加わって数日、ギルドでは再び健康診断の時期となった。
「健康診断の時ってやっぱドキドキしますよね」
「・・・普段は気にしないようなものも多いからね」
「まあ、そこまで気にすることもないじゃろう」
従魔の健康診断だが、今年も行われることになった。
去年よりも従魔の数が増えているので、測定には時間がかかりそうだが・・・。
「あの、エリーさんは人型とミミックの状態の二通りも測りますのでお願いいたします」
『わかったぜよ』
「ミアンさん、全長を測りますのでピシッと真っ直ぐお願いいします」
「尻尾の先までしっかりと頼むであります」
モンスターは様々な体格があり、身体の構造なども人と違うのでそれぞれに合わせた健康診断をしなければならない。
鱗が痛んでいないか、角や牙が折れていないか、吸盤の吸着力が落ちていないかなどのそれぞれに合わせた測定となる。
ウルフ、ゴブリン、トレント、オーガなど様々な従魔たちが並ぶこの空間は、さながら魔物の集落のようにも思われた。
「こういう時って、あたしらは楽でっせ」
「ほとんど人と変わらない測定ができるものね」
ボルトオーガのスルト、雪女のツバキの場合、体つきががほとんど人間の女性と変わらないので一番人に合わせやすく、測定するギルド職員たちにとっても楽であった。
対して、ハクロやミアン、アルテミスなど蜘蛛やドラゴン、タコの部分がある組の場合、その部分の測定が面倒でもある。
ロウも、身体がスライムなので伸び縮み自由であり、一応普通の状態で測定しなけらばならないめんどくささがある。
リーゼは、人化した姿はほとんど変わらないようなので、水龍時の姿での測定があるのだが、何しろトップクラスのサイズなので特注の測定器が必要であった。
「開いた角度は・・・・もう少し大きく開けますかね?」
カタカタカタタと肯定を示すかのように、箱の姿・・・ミミック本来の姿に戻っているエリーは口というべきか、ふたという部分を大きく開けた。
・・・・この健康診断、実はモンスターの体調管理だけではなく、そのデータも集められているのである。
普通、敵対してくるモンスターたちであるが、従魔であるならばその隅々までよく調べやすい。
ロックゴーレムだと、関節部分が実は球体関節だったり、ウルフ系統だとその脚力は種類によって差があるなどの発見があるのだ。
モンスターを研究するような学者もこの世界には普通におり、この健康診断から得られるデータは彼らにとっても非常に貴重なものでもあるのだ。
特にザストでは珍しい従魔がいるのでその情報は研究者たちにとっては喉から手が出るほど欲しい代物ばかりである。・・・・ライの従魔たちが特にね。
上位種、超希少種、神獣種、幻獣種のデータは研究者たちにとっては甘露にも等しい極上の物であろう。
一応、個人情報というかそう言った大事な部分は秘匿されるが・・・。
「うーん、アルテミスさん。この3本目の吸盤だけ他よりちょっと吸い付きが弱いですが」
「む?そうかのぅ」
「ミアンさんの鱗のうち、こことここのが痛んでますね」
「そろそろ脱皮も近いでありますからな。痛んだところもまとめて変わるはずであります」
「ウミュー」
「ロウチャンは去年より身長がちょっと伸びてるね」
「もう少し開けそうですが・・・・」
ガタガタガタガタと、もうこれ以上は無理と言っているようなエリー。
「あれ?ツバキさんの服はどこへ?」
「ああ、雪で出来ているから溶けたの」ね
「雪で出来ていたの!?」
「・・・・このバストサイズは反則でしょう!!ハーピーならもっとつつましくあるはずよ!!」
「・・・クイーンハーピーでだからね」
「ドライアイの疑いが1つありますね・・・」
「どの目ですか?」
バチィ!!
「わっ!?」
「あたしの角は今ちょっと放電しているからね。金属は危険やで」
その頃、外の方では・・・・
「まだですかね・・・・?」
「今しばらくお待ちください」
「長いよね本当に・・・・」
リーゼの全長を測ろうとしたところ、去年よりも伸びていたようである。
とにもかくにも、何とか全員の健康診断は終了した様であった。
結果は2,3日中に各従魔宛に送られて、見ることができるのである。
「うーん、ちょっと全体的にサイズアップですかね」
「吸盤の吸着力が不安じゃな・・・・・。対策の薬を作っておくかのぅ」
それぞれちょっと心に不安を抱えながらも帰路につく。
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「今年精神的な意味でダメージを負う方がいますネ」
健康診断終了後、ザストのギルでは落ち込む女性職員が多かった。
皆、健康診断で関わっているのだが、人じゃないのに人以上のスタイルを持つライの従魔たちに各自の自信を撃沈されたのである。
去年もいた人は、辛うじて生きてはいあるが、今年からの人はものの見事に息を引き取っているかのような状態であった。
「なにあのサイズ・・・・何を食べたらああなるのよ・・・・」
「引き締まりとか、どれだけですか・・・・」
「体重は私たち以上でも、人間換算したら物凄いスタイル維持ができているのよね・・・・・」
「というか、ほとんど人に近い体を持つツバキさんも、あの服でつつましやかだと思っていたら、まさか着やせするタイプとは・・・」
「・・・これは重症ですネ」
この後、ギルド職員たちも健康診断が実施されたのだが、その時にワゼがもっとも注目を浴びることは言うまでもなかった。
「私は魔道具デスヨ。文句を言うなら製作者の方へ言ってくだサイ」
「「「「「いや本当になんでなのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」
そう絶叫する女性職員たちの声は、遠くにある王都に届いたとか、届かなかったとか・・・・・
今回の健康診断での女性職員唯一の癒し:ロウ(まだ子供のような幼さがあるため)・・・末恐ろしい子かもしれないけどね。
スリーサイズとかは非公開です。
次回から、ちょっとコテ入れというか物語動きますよ




