吹雪の夜に
夜まで経っているんだな・・・
2016/12/15一部加筆しました
ビュォォォォォォォォォォ・・・
「吹雪がまったくやみそうにもないね」
「まったく止む気配がないですし、このままと薬草を探すのがままなりませんよ」
吹雪をやり過ごすためにかまくらを作製し、こもったライたちであったが、あたりが暗くなってもまったく止む気配がなかった。
1,2時間ぐらいで止むかなとは思っていたのだけど、まったく吹雪が収まらないし・・・
「ふむ・・・これはもしかするとじゃが・・・」
「いくら自然現象でもここまではないはずであります」
と、何やら吹雪を観察していたアルテミスとミアンの二人が何か気が付いたようである。
「何かわかるのか?」
「主殿、この吹雪じゃがおそらく自然の物ではないのじゃ」
「というと、人為的なものってことか?」
「いや、人為的なものとも言い切れないのじゃが・・・・」
「というか、「人」とつくかどうかが・・・」
珍しく、二人ともはっきり言わない。
「どういうことだ?」
「いや、最初は魔法か魔道具の可能性を考えておったのじゃよ」
「ですが、その二つではここまで長時間で広範囲のものを引き起こすのは無理があるのであります」
「と言うと何か別なものが原因ということか?」
「その原因として考えられるのが・・・」
「モンスターの仕業という事でありますな」
・・・・魔法や魔道具でも、天候を操作するのはあるらしい。
だけど、長時間この状態を維持し続けることができるのはモンスターの力である可能性の方があるらしいのだ。
「魔法というよりも、その特性というか、そのモンスターの意思によって引き起こされるもののタイプかもしれないのじゃ」
「じゃあ、この吹雪の原因であるモンスターがいるっていう事なのか」
「だけど・・・・ここまでの物を引き起こせるのを考えると、ちょっと我輩たちでは相性が最悪かもしれないであります」
「相性がって・・・・吹雪ってことは氷を操るモンスターで強力な奴の可能性があるからだな」
このメンバーだと、普通の氷を使うモンスター程度なら力技のごり押しがいけるが、ここまでの吹雪を引き起こせるモンスターは相当な実力があるとみて間違いないらしい。
それに当てはまるのが、ドラゴンや神獣種、幻獣種の一部らしく、どれも強力なモンスターばかりだそうな。
神獣種であるミアンと、ドラゴンの一種である水龍のリーゼの強さを考えるとシャレにならないのがよくわかる。
そんでもって、このメンバーだと仮に相手が氷を操る強力なモンスターだった場合は、対抗できるとすれば・・・・・
「ミアンの炎の魔法、ルミナスの精霊魔法で火精霊のものぐらいか」
「我の水魔法の場合、氷にされて威力は増すかもしれぬが、利用される可能性の方が高いのじゃ」
「私の糸では防ぐ程度ですかね」
「・・・風をおこしても、吹雪には対抗ができない」
「カチコチニナルー」
「本来得意な場所は水辺で、こういう雪山だと氷龍が有利」
『私は物理なら結構防げますけど、凍らされたら意味ないですし・・・』
「電撃でもいまいちかな」
まともに相手できるのが二人しかいない。
「あの・・・ここ雪山なので、火精霊が見当たらないのですが」
「ってことは」
「火の精霊魔法は使えないのです・・・」
・・・うわぉ、これ相手が強力な氷のモンスターで、襲い掛かって着たら確実に負けるね。
今さらながら、このメンバーの重大な弱点を垣間見たような気がするよ。
「・・・って、それでこの吹雪がモンスターの仕業だとしてもどうしてこの状態にし続けているんだろうか?」
襲い掛かるならば、いつでも襲い掛かってきそうなものだけど、さっきからその気配すらないし・・・。
「あちらからしてみれば、いつでも襲えるのじゃろうな。じゃが、案外こっちが弱るのを待つ作戦かもしれぬ」
「となると、結構賢いってことだから・・・・やっぱ幻獣種とか神獣種の可能性があるってことか」
そこまで作戦深いならば、その可能性が非常に大きい。
神獣種であるミアンと戦闘した時だって物凄く大変だったのに、それと同等でかつこちらの戦力が激減している状態なのは危険すぎる。
「下山しようにも、この吹雪では襲われたら・・・」
「あ、ミニワゼを持ってきているから、ザストに通信してワゼになんとかできないか相談してみれば・・!!」
『おかけになっている場所は、現在恐ろしく通信状況が悪くなってマス。天候の影響が大きいのだろうと思われますので、回復をお持ちくだサイ』
「・・・・わかっているよ!!」
天候に左右されるんかい!!
「こういう時に限って、あの万能メイドも役立たずじゃのぅ」
「完璧超人魔道具でも完全ではないってことか・・・」
とにもかくにも、このままの状況は非常にまずい。
寒気というか、もはや手段が・・・・寒気?
「・・・そういえば、なんかものすごく寒くなってきたような」
「あれ・・・そういえば・・・」
「確かにものすごく冷えてきたのじゃ・・・」
かまくらの効果で暖かいはずが、いつの間にか内部の温度が極端に下がっていた。
吐く息が白くなり、寒さで鳥肌が立つ。
手足がかじかみ、ちょっと髪が凍り始めた。
「こりゃ不味いかもしれないであります・・・・かまくらの許容温度以下に外が低下した様でありますよ」
「具体的には?」
「絶対零度」
・・・・そりゃ、かまくらの中も冷えますわ。
だんだん手足の感覚がなくなってくるぐらい冷えてきた。
「寒い・・・寒い・・・」
「まるで、雪山に遭難したようですよ・・・」
「へぇ、そうな」
「言ったら余計寒くなる!!」
お約束のボケが出てきたが、この状況は非常に・・・・まずい・・・
「あ、なんか眠く・・・・」
「ライ様寝たらだめですよ!!」
寝たら凍死してしまうのがわかるけど、体温が非常に下がって物凄く眠く・・・
「・・・だったらこうする」
「ん?・・・むぐっつ!?」
ヤタが抱きしめてきて、その豊満な胸に顔をうずめさせられる。
って、なんか肌の感触がじかにするんですが!!服脱いでいるよねコレ!!余計冷えるというか、苦しいんですけど!!
「・・・こういう遭難した時は、裸で触れ合うのが良いと本で読んだ」
「むぐぅぅぅっつ!!」
それ、絶対間違っているよね!?あっているかもしれないけど,凍死以前に窒息死するんですが!!
「でしたら、私も!!」
「ならば我もじゃな」
「ウミュー」
「我輩も全体を巻き付けるでありますよ!!」
「私もそうしようかしら」
『参加するぜよ!』
「あたしも!!」
ちょっとまって!!まじで窒息しどころか圧死するって!!
ライの心の叫びもむなしく、気温低下と状況によって思考低下しているらしく、皆同様の行動を取った。
裸の美女たちに抱き着かれているという、ザストにいる男性たちから見れば血の涙どころかライに呪詛を送りそうな光景であるが、その中心にいるライは窒息と圧死とその皆の裸という羞恥心による恥ずか死寸前であった。
全員に慕われているようだけど、凍死の前にその死に方になりそうである。
(あ・・・・もう意識が・・・・・)
だんだんとライの意識は沈んでいったが、周囲の皆の気持ちがどこか心地よい感じに思え、そのまま何が何だかわからないような幸福感と共に、気絶するのであった。
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SIDE???
「・・・・・・」
その光景を見ていたそのモンスターは、どうコメントして良いのかわからなくなった。
いや、ほんとはこの山に何やら人がまた来て、追い返そうと思ったが籠城された。
で、いっそ吹雪でこのまま凍死させようかと思ったのだが・・・・・
その人間の周りにいた女性たちが、全員その中心にいた人間の男性に対し集まってくっ付いていった。
しかも服を脱ぎ、自身の体温をその男性に分け与えようかとしているようである。
・・・だが、その様子から見て、その人間の男性はその周囲のモンスター(モンスターでないのもいるが)たちに慕われているのが分かる。
心から思っていないとできないような、そんな感情が見て取れた。
自分は、昔から人に見られるたびに自分ではなく、その希少価値によって狙われてきた。
だけど、あそこまで他の人というかモンスターたちに慕われている人なら・・・・・・もしかすると。
ふと、どことなく惹かれるような気持を感じ、そのモンスターは彼らに接触してみようかと思うのであった・・・・。
コレ、ライが目覚めたらまた何か羞恥心とかで気絶しそう。
純情な青年だからね・・・・
というか、この状況ってどういえばいいの?酒池肉林?




