寒き指名依頼
本日2話目
前半、ちょっとのんびり風味
今日は雪がかなり降り積もり、ザストのあちこちでは雪かきが行われていた。
ライたちの家もかなり降り積もったので、今日はギルドに行かず、屋根の雪下ろしをしていた。
とはいっても・・・・
「寒いのありますな・・・よっと」
「・・・ぐにいっと」
「飛びながら雪かきすれば、屋根から落ちる心配がなくていいよね」
ミアンとヤタが屋根の雪かきをしてくれている。
空を飛べるので、ヤタは足にスコップを持ち、ミアンは手と尻尾の先にスコップを持って飛びながら作業をしてくれるのだ。
ワゼがカイロとかいうモノを作り、それをミアンは服の裏側に大量に貼り付けて出ていてくれたけどね。
「しかし、このカイロとかいうやつって結構いいね。暖かいし、小さいから邪魔にもならないよ」
「中身は物凄く細かい金属片で、錆びる時に出る熱を利用しているのデス」
「このままの状態で使うのは安全じゃが、うかつに穴をあけたり水をかけると超・高熱を発するのは危険じゃがのぅ」
「間違った使い方をしなければいいってことですけどね」
1時間ほどかけて、やっと家中の雪かきができた。
ちなみにどかした雪は、雪だるまやカマクラにしたりする分以外すべて溶かしました。
ミアンって幻術魔法だけじゃなくて、炎の魔法も使えるようだしね。
・・・最初からこれを使えばいいのではと思うのかもしれないが、引火が怖いしね。
「さて、身体もあったまったけど一旦家の中に入るか」
「暖かいスープをすでに用意してますヨ」
え?さっきからワゼは外にいるんだけど、いつの間に用意したの?・・・・あ、ミニワゼがあったか。
スープを飲み、体の芯からあったかくなる。
そのとき、玄関の方で誰かが来たようなので、応対することにした。
「・・・何でギルドマスターが来ているんですかね?」
「結構重要な指名依頼だから、本当はギルドに来てくれればそこで言ったんだけど、ライ君たちは今日は来てなかったからね」
ギルドマスターがわざわざ我が家に来ちゃったよ。
「まあ、職員に行かせるのもあったけど、さぼりたかったゲフンゲフン、一応こういうのは自分の口で言ったほうが良いと思ったからね」
「今さぼりと言いませんでしたか?」
一応ギルドでは偉い人なのに、こういうところでなんか微妙な感じな人だよなほんと。
モッサンさんの件で僕らの中では評価が下がっている。
「というか、指名依頼って何ですか?」
「それがだね、今回は結構真面目な話し」
「いままでのは真面目じゃなかったのですか?」
半目で睨みつつも、とりあえず内容を聞いてみた。
なんでも、どこかの貴族からの依頼だというが・・・・
「その貴族の子供のための依頼でね、『魔欠乏症』という病気らしいんだ」
「魔欠乏症?」
「ふむ、その病かのぅ」
アルテミスはどうやら薬を作る立場上、その病気を知っているらしい。
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「魔欠乏症」
先天的なものと、後天的なものに分かれる病。生きとし生ける者たちにはわずかでも魔力があるのだが、その体に本来あるべき魔力がごそっと抜け落ち続け、生命力を削っていって衰弱死をしてしまう。
治療法はそれぞれ異なり、先天的なものは魔法を使える他者の魔力を流し込んでもらうだけでいいのだが・・・・
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「後天的なものじゃな?」
「そのとおり。なんでも立場上狙われるらしくてね、その病を引き起こすような毒を盛られたらしい」
立場上狙われるってどこの人だよ。
「後天的なものの場合、確か治療薬があったはずじゃが?」
「ちょうど買い占められたせいで品切れになっていたらしい」
用意周到ってことか・・・。
「だったら、早く新しく作れば」
「その原材料の一つがね・・・・ちょっと場所に問題があってさ」
どことなく頭を抱えるギルドマスター。
明らかにめんどくさそうな予感しかしないのだけど・・・・。
「原材料の一つはね、『白雪草』というある場所に生えている薬草なんだ」
「たしか・・・アラモズ山じゃったかのぅ・・・・って、確かそこは」
「そ、今の季節はモンスターがうじゃうじゃ出ているんだよね」
アラモズ山は、冬の時期にかなりモンスターの数が増えるらしい。
他の季節だとそこまで多くはないらしいが、冬にかなり増えるとは・・・。
「あと、他にも問題があってね」
「まだ問題があるんですか」
「今そこさ、戦場のすぐ近くなんだよね」
大・問・題じゃん!!
アルテミスは薬に詳しい分、関係する病にも詳しい。
医者的な感じですかね。医師免許や薬師免許はこの世界にはないけどね。
「モンスターじゃし、その辺は問題ないのじゃ」
「そもそも『海の魔女』って名がつくくらい有名だから、薬に関しては人よりもトップレベルじゃないかな?」




