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秋になってくるころ

肝試しも終わり、夏も終わり、秋が深まってきた。


 木枯らしが吹くようになり、あちらこちらでは早くも冬支度を始める人達が出てくる。


 冬の間、依頼の数も減り、厳しい季節となるので今に内から冬越えをするために冒険者たちは稼ぎを求めて依頼に殺到していく。


 ついでに、



「なんか客が増えたんやけど・・・・」

「寒くなってくると足腰に痛みを訴える人が増えるからねー」


 ザストのギルドの一室、特別マッサージ室ではスルトが大忙しになっているのであった。


 この季節、関節痛なども増し、マッサージで取り除いてもらおうと客がよく殺到してくるようである。


 大半がスルト目当ての冒険者たちが多いのだが、一応真面目な人もいるのだ。


 ついでに、こっそりギルドマスターであるアーガレストも仕事をさぼってここに来たりしているのだが、毎回ギルド職員に連行されている。





「今日の依頼は何があるかな?」


 ライたちは一応冬越えの支度は済んでいるので依頼を受ける必要はないかもしれないが、食費の不安の方があるので真面目に依頼を受けていた。


「ん~、秋だからか依頼にも旬のものが多いですね」

「・・・討伐依頼に旬のものというのは変なような気がする」

「まあ、間違っておらぬがのぅ」


 討伐依頼がこの時期になって増えたが、どうも食用可能なモンスターが多い。


 その肉とかが目当てであるのは明白である。


「にしても、やっぱり再戦し始めましたよね」

「それで冒険者の数も減っているからかな?依頼の量がいつもより多いよ」



 王国と帝国の戦争は休戦状態だったのだが、ついこの間休戦が解かれて再戦し始めたようである。


 一応、参戦すればそれなりの報酬がもらえることもあり、この冬を乗り切るために行く冒険者もいるようだが、ライたちは基本不参戦のスタイルをとっていた。


 戦争というのがもともと好きではないし、さすがにそういう物に従魔たちを利用したくないというのがライの本音である。


 従魔たちの実力的には圧倒させることができるだろうが、その気がないというだけでもあるのだ。



「お、『キーカナッシーの肉の確保』とか良いかも」

「果実のようなモンスターで、その硬さは鉄並ってやつですよね」

『でも、中身は甘くておいしい果物様なやつぜよ』


 こういうおいしそうな依頼とかは歓迎である。

 

 とりあえず、その依頼をライたちは受けることにするのであった。


 まあ、このモンスターは果汁を飛ばして攻撃してきて、目を的確に狙ってくるという恐怖もあるのだが・・・。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「むぅ、再戦して未だに戦況は変わらずか・・・・」


 ルーナス王国の首都にあるルーナス城にて、現在、国王代行で政治をしている第1皇子プラントは、その戦況の報告を受けて苦い顔をしていた。


「はい、わが国と帝国のちょうど中間に位置する『アラモズ山』ふもとで両軍硬直状態であります」


 報告をしにきた家臣がそう伝えた。


「硬直が続いて、一進一退の状況か」


 攻めても守られ、守っても攻められ、互いになかなか戦況が動かなかった。


「できれば冬までには決着をつけたいところです。冬になれば、あのあたりは『アイスウルフ』や『コングアイスマン』、『シャーベットスケルトン』などというモンスターの出現も増えますので」

「氷の魔法や攻撃を仕掛けてくるモンスター・・・・できれば帝国側の方に攻撃してほしいものだ」

「残念ながら、モンスターはある意味公平かと」


 モンスターにとっては国とかそういう物は関係ない。


 ただ獲物を求め、攻撃を仕掛けてくるだけである。


 知性があるモンスターの中には、そういう分別がきちんとあるようだが・・・・・。




「ううむ、なかなか難しい問題だ。ここでものすごく強力な戦力を確保できればいいのだが・・」

「冒険者たちからも募集をかけており、中には高ランクの冒険者もいるのですが帝国側も同じようなもので・・・」


 正直なところ、訓練をしている兵士よりもモンスターを相手にしている冒険者の方がたいがい強い。


 臨機応変に戦え、グループとして組んでいる人たちの連携もより優れているのである。


 

「状況と金次第ってのもなかなか難しいところだな・・・・」


 冒険者の人の中には、金で裏切って帝国側につくことも、王国側につくこともある。


 昨日の敵は、今日の友。今日の友が明日の敵なんてこともあるのだ。


・・・・・まあ、さすがにそんなしょっちゅう裏切るようなやつは即刻味方から殺される可能性があるが。



「ここは、参戦をしていない冒険者に指名依頼をするという手段がありますが・・」

「だが、参戦をしていないということはその戦争には否定的な場合がある。無理に参戦するように依頼をした場合、最悪なケースとして帝国側につく可能性があるからな」


 ぐぬぬとその場にいる全員が頭をひねりながらうなる。


 その最悪のケースがあったら結構不味い。そもそも予算的な問題があるのだが・・・・・。



「・・・待てよ?今停滞している場所はアラモズ山だったよな」


 ふと、プラントは思いついた。


「はい、その場所で今両者互いに硬直状態ですが」

「その山はモンスターも出現したりして、両軍に攻撃をしてくるよな」

「はい」

「うまい事、帝国軍の方に攻撃が集中してくれればこちらが有利になるんだよな」

「その可能性は高いですが、そううまい事は・・」

「魔物使いの中に、あの山出身のモンスターを従魔にしている者はおらぬか?そこからモンスターをうまいこと誘導できればいいのだが」

「流石にそこまで詳しいことはわかりませんは・・・・誘導ですか」


 案外、悪い案ではないかもしれない。


 ともかく、戦況が変わる可能性があるので急いで調べ始めるのであった・・・・。








 

今回は、ちょっと真面目かな

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