ニア村の真夜中
今回は主人公は不在
・・・あたりに静寂漂う深夜、平和なニア村に似つかわしくないような黒づくめの集団が動いていた。
「おい、あの村で一番大きな家で間違いないよな?」
「ああ、この村の村長の家でロズ第1王女がここに泊まっているという家で間違いない」
目立たぬように、小声で確かめ合うその集団。
彼らはある貴族に雇われた暗殺者集団でもあった。
「貴族籍剥奪は辛うじて免れたが、爵位を下げられた逆恨みで受けた依頼なのがな」
「まあ文句は言うな。金さえもらえればいいからな。とはいえ、ここまでで全く隙が無かったからな」
ここまでの道中にあった盗賊の襲撃・・・実は、彼らが誘発した者である。
それとなく情報を流し、襲撃するように誘導したのだ。
まあ、この工作は一応成功すれば御の字だったものであるが。
「ことごとくあっという間に盗賊どもが薙ぎ払われたよな・・・」
「成功するのか疑いたくなった・・・」
とにもかくにも、依頼を受けたので何とか成功せねばならない。
彼らのような、暗殺を生業としている裏の集団にとっては、失敗は「死」を意味するのだから。
「とはいっても、やつらがザストに戻ってからでいいんじゃないか?」
やつらとは、ライたちの事である。
さすがに家の距離があるのですぐには来ないだろうとは思うが、それでも不安が彼らにはあった。
「まあ大丈夫だ。音もたてずにやりさえすればす、」
「「「そこにいるのは何者だ!!」」」
「なにっ!?」
いきなり背後から聞こえてきた声に、彼らは驚く。
彼らの服装は黒づくめで、夜中ではその姿は見にくい。
そのうえ、一応暗殺者集団なので気配も消してはいたはずである。
それなのに気が付いたのはだれかと思ってみると、そこには村人と思わしき三人組がそこに威風堂々と立っていた。
ただの村人ではないことは、彼らの勘でわかった。
「我らは!!」
「ここニア村に在住する!!」
「元王城の騎士団長!!」
それぞれがポーズを取り、堂々と名乗るさまに、つい彼らはぽかんとした。
「『閃光の針』騎士団元団長ジャージ!!」
「『赤い血潮』騎士団元団長バンベル!!」
「『激流の鯉』騎士団元団長ガッベン!!」
「「「我らニア村守護三人組!!」」」
びしっと彼らが堂々とポーズを取り、まるで背後で爆発が見えたような気がした。
はっと我を取り戻したのは、この暗殺集団のリーダであった。
「元王城騎士団だと!?」
・・・そもそも、娘をこんな村に疎開させる国王がいるのであろうか。
国王の娘という立場には常に危険があるものである。
そこで、各地の村には実は王城で勤めていた騎士団を引退した者たちが特別任務としてついていたのだ。
彼らの任務は、「王族が来た時の守護」である。
以前、ロズ王女がいたハッポン村にも実は同じような人物たちがいたのだ。
まあ、めったに村に王族が来ることはなく、老後の穏やかな隠居生活を送るのがほとんどであったが、王族が訪れればこうしてしっかりと任務をこなすのであった。
「くそっ!!撤退し、」
「・・・・うるさいでありますな」
「へ?」
どしぃぃぃぃぃぃぃぃん!!
「「「!?」」」
暗殺者たちがこの場から素早く逃げだそうとした時であった。
何かが上から急降下して、彼らを押しつぶした。
「真夜中になんか変な気配を感じてみれば、何でありますかこの者たちは」
そこに現れたのは、ライたちの家から怪しい気配を感じて見に来たミアンであった。
「・・・・たしか、ライ君の従魔のミアンさんだったか?」
いきなりのミアンの登場に、驚く三人組であったが、そこは元騎士団長、すぐに気を取り戻した。
「そうであります。まったく、なーんか変な動きを感じてきてみればいい大人がなにあんなことをしているのでありますか」
暗殺者たちを押しつぶしてはいるが、ミアンは気にも留めずに、先ほどの三人組の行動に関して批判を言い始めた。
彼女にとって、今足元でくたばっている暗殺者たちはどうとでもすぐにできるが、先ほどの三人組の行動を問題視したのである。
・・・・・その後、朝になるまで三人組はミアンに説教されるのであった。それまで、暗殺者たちは押しつぶされたままであったが。
ミアンが実力的には一番上なんだよね。
というか、暗殺者たちと三人組があわれすぎる・・・・・




