閑話 思いを胸に
メインヒロインを忘れぬようにと思って急に書きたくなった。
公開はしていないのだが、書いている作者の方が恥ずかしくなった。
「すやぁぁ・・・・・」
・・・真夜中、ライたちは家でそれぞれの部屋で寝ていた。
ヤタは自室の木の枝にとまって寝て、
ロウはリーゼと一緒にぐにゃりと体の形を崩して寝て、
ルミナスは精霊たちが真夜中の身に歌う子守唄を聞きながら寝て、
アルテミスは特注のタコツボの中に入って寝て、
スルトは衣服が邪魔っかしいのでぬいで布団で寝て、
ミアンはとぐろ巻きつつ寝て、
エリーは部屋の明かりをつけて文字の練習をしている最中によだれを垂らして寝て、
ハクロは・・・・ベッドに寝ているライの顔をみながら起きていた。
なんとなく眠れないときがあり、今日はその時の様だったので自室のハンモックから降り、天井裏から部屋に侵入したのであった。
「ふふふ・・・・よく寝てますよねライ様は」
その寝顔を見て、ほほえましく思いながらふと村でのライとの記憶をハクロは思い出していた。
今は大きな家を買って、ライが成長しているのもあってそれぞれ別室で寝ているのだが、昔ライのそばにハクロだけの時は一緒の部屋で寝ていた。
ライが小さい時、子守唄を歌ったり、本を読んだりしたものだが今はもうそのことはしていない。
成長したのだと思っても、どことなく寂しく感じるのである。
(まあ、従魔が増えたってのも原因でしょうが・・・・・)
ヤタから始まり、あれよあれよという間に従魔が増えていき、独占できなくなった。
ライは全員に対し、まんべんなく対等に扱ってくれるのだが、それでもなんとなく不満はある。
ただ、ライが喜ぶとかそういう物ならハクロはよかった。
だけど・・・・物足りない。
昔から一緒で、何処へ行くにも従い、ついていき、森の中に罠を仕掛けて獲物を捕らえたりしたあの頃のような感覚ではない。
愛しいと思える気持ち・・・・それが、大きいのだ。
魔物使いと従魔の絆というよりも、恋心・・・・純粋な「好き」という気持ちがあるのであった。
ハクロはなんとなくそのことは意識し始めていた。
まあ、似たような想いは従魔全員(ルミナスは従魔ではないけど含んで)抱いているような感じもハクロは感じ取っていた。
こうして一緒に、家族のように接し、全員同じような思いを抱いているのだ。
その中でも、ハクロは自分が一番思えているような気持であったのだが。
とはいえ、ハクロはモンスター。ライは人間。
その一線を踏み越えるのにまだ勇気がなかった。
現状、その一線を一番踏み越えられるのはハーフダークエルフであるルミナス。
彼女と子を成せば、生まれる子はクォーター、もしくは人間。
次に越えられるとしたら・・・リーゼである。
ドラゴンと人との恋話は昔からあり、生まれた子は非常に身体能力が高い竜人かドラグニル、もしくは普通の人間として生まれる。
だが、ハクロやヤタ、アルテミスなどの場合は生まれた子は同じ種族でモンスターである。
モンスターの子は、モンスター・・・・ドラゴンなどの例を除いては覆された例がない。・・・ラミア・ドラゴンであるミアンはそのあたりは微妙だが。
親が自分達とは言え、生まれたモンスターがどういう行動をとるかは予想がつかない。
モンスターは大抵が人を襲い、被害を加えたりする・・・そういう部分があるのだ。
その不安感が、ハクロにあと一歩を踏み出させずにいたのである。
「・・・・でも、愛しいのは変わらないんですよね」
寝ているライの顔にそっと自分の顔を近づけるハクロ。
間近で見ると、初めて会った時からずいぶん成長したように思える。
あの時、森で迷子になっていたライと出会って従魔になって過ごしてきた日々。
かけがえのない、大切な「思い出」という名の宝物・・・・。
その宝物を与えてくれたライに対し、ハクロは感謝と愛する心を持つ。
そっとライが起きないように軽く抱きしめて、そのぬくもりをしっかり感じ取る。
生きているからこそのぬくもり、愛しい存在・・・・そう、まるで生まれる前から愛していたかのような、そんな気持ち。
充分感じ取った後、ハクロはライを起こさないようにそっと自分の部屋に戻り、ハンモックに乗ってやっと眠りにつくのであった・・・・・。
次回から本編やっとまともに動き始めますよ。なんか閑話が多くてすいません。




