ワゼに休日を 当日
本日2話目
SIDEライ&従魔たち&ルミナス
『というわけで、ワゼに仕事が回らないように私が今日働くことになりましたぜよ』
「ああ、いいとも」
ギルドの執務室にて、ギルドマスターのアーガレストは許可を出した。
「ギルドは働く人は歓迎だからね。ワゼさんがいつもよく働いてくれているのを知っているから、こちらも協力を尽くすよ」
『はい、どうも感謝しますぜよ』
「・・・にしても、何で語尾にいちいちそれを書くんだい?」
『いや、なんとなく』
「あの、エリーさんがなぜ受付に・・・?」
『ワゼの代わりぜよ』
その日、冒険者たちが集まるギルドの受付は騒がしくなった。
なぜなら、その受付にいたのはライの従魔であるミミックのエリーがいたからである。
なお、人の姿になっているときの服装はいつものままであるが、単にワゼの制服とサイズが合わなかったのであった。まあ、今日限りだしね。
『私の所有主が暇を出したので、今日一日ワゼが休暇状態となったんだぜよ。従魔全員での協力体制を引いていて、ワゼがしっかりと休日を過ごせるように、ギルドからの仕事が来ないように今日一日限りだけ働かせてもらうことを、一応ギルドマスターに了承してもらったのだぜよ』
ピシッとした顔で筆談をするエリー。
誇らしげな顔だが・・・・
「あの、ところでそこの文字書き順と読み方間違えてますよ」
『!?』
まだまだ筆談の練習中であった。人選ミスかもしれないとその場にいた全員は思ったが、まあこのぐらいは良しとしよう。
それに、ギルドでワゼに色々働いてもらっていたため、職員たちも協力をすることにした。
なお、エリーが受付嬢を担当していたこの日、ギルドでは長蛇の列ができたという・・・・・。
『あ、お昼には昼食の用意があるので一時帰宅するぜよ』
「それは別にいいですよ。ギルド職員の中には子育てで一時的に帰宅する方もいますし」
「うーむ、朝食は単純にオムライスにしたのじゃが、何でチャーハンとスクランブルエッグができたのでありますか・・・・?」
「まあ、おいしかったから大丈夫だよ」
ライたちは現在食器洗いをしていた。
水はアルテミスとミアンの魔法で出るため結構楽である。
また、しつこい汚れがある場合は、ロウに少々食べてもらって磨くこともできた。
こういう時って、スライムが便利だな・・・・・。
「『生活に役立つスライムの利用法:魔物使い編』って言うのがありますからね」
「あるんだ」
というか、それ魔物使い以外だとどうするんだろう。すごい気になる。
「ワゼは今頃休日を楽しめているんだろうか・・・・」
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SIDEワゼ
・・・・今日はご主人様からお暇をいただきましたしネ。
とはいえ、私には趣味とかそういう物もないですし、こうしてうろつくってのも悪くはないかもデス。
適当にワゼはザスト内をうろついていたが、ふと目に留まったものがあった。
「おや、新しい料理本ですカ」
ザストの本屋の前で、その本をワゼは見た。
ワゼ自身魔道具なので、一目見た本の内容はすぐに覚えられるから、こういう料理本を見たときは買わずに軽くぱららっとめくって内容を素早く覚えた。
「これで今度からさらにレパートリーが増えましたネ」
ふんふんと機嫌よく鼻歌が出るワゼ。
息をしなくてもいい彼女だが、そういうところは人間らしいようにできているようなのである。
ご機嫌なので軽く歩いてそのままうろつきまわる。
ときおり、ザスト内でもギルドでの仕事などで知り合った人たちとあいさつを交わしたり、空を眺めて何となく思索にはしる。
何気ないようなこういうことは、ワゼにとってはなんとなく楽しく思えた。
「・・・こういう休日をくれたご主人様には感謝ですネ」
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SIDEライ&従魔たち&ルミナス
「洗濯していて思うのじゃが・・・・」
「何かあるんですか?」
「いや、結構衣服が少ないなと」
「・・・着る服が少ないから」
洗濯を干しているときにつぶやいたアルテミスに対し、ヤタは淡々とその事実を述べた。
そもそも、ライたちが来ている服はほとんどがハクロ手製のものである。
というか、体の構造的に着られようにハクロが手直しした服や下着も多い。
不通に着用できる。下半身が蜘蛛、ドラゴン、タコ。上半身が翼と羽毛。全身がスライム。
と、このように分かれるからだ。
なお、エリーの場合、服によってはこの姿になったときの装飾が変わるのかと思われていたのだが、なぜか変わらず、しかも来ていた服が元の服とまた苦同じものになるという現象が起きた。
リーゼが人化するのに似ているものかと思われたが、リーゼの場合は衣服は変化がない。
謎なので、とりあえずしばらくはエリーの服装の変更はなさそうである。
ただ、下着などはさすがに既製品の物を全員使用しているのであった。
「じゃがのぅ、さすがに全裸で過ごす者はおらぬのぅ」
「それはさすがに恥ずかしいですからね」
「・・・でも、よくよく考えたらなぜ服を私たちは着るのだろうか?」
野生のハーピーなどはもろ裸だが、よく考えたらハクロたちは服を着ている。
「そういえばそうですよね」
「うむ、羞恥心があるのが原因じゃろうな。我らは人に近い考えを持てるゆえ、そのような部分も同じであろう」
なんとなく納得できる考えであった。
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SIDEワゼ
(そろそろお昼時ですネ。昼食はどういたしましょうカ・・・・?)
魔道具である彼女の基本動力は魔力だ。
こっそりライから魔力をもらって動けているのだが、食べ物を食すことによってエネルギーを得ることもできる。
「すいません、串焼き10本お願いいたしマス」
「あいよ・・・って、ワゼさんじゃないですか?」
適当に屋台で買うことにしたのだが、その屋台の店主は冒険者であった。
ランクが低いため、まだそこまで稼ぎが出せないのでこうして副業として屋台を営んでいたのだがワゼの事は知っていた。
「はい、今日はお休みですノデ」
「なるほど・・・じゃあ、ついでに2本サービスするよ。ワゼさんには冒険者全員がお世話になっていますからね」
「ありがとうございマス」
ついでに追加でもらえたので、ハフハフと食べるワゼ。
別に暑さなどは平気だが、なんとなくこうしてしまうのであった。
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SIDEライ&従魔たち&ルミナス
「お昼はおにぎりとみそ汁とサラダだよ」
「普通においしいですよ」
「サラダって言ってますけど、実質ただ葉をむいて洗っただけですけどね」
そのあたりは許して。
そこまで料理ができるってわけでもないからね。
何やかんやと一日が過ぎてゆき、ワゼが帰宅してきた。
「ただいまデス」
「おかえりー。休日はどうだった?」
「ええ、なかなか充実に過ごせましたヨ。夕食は・・」
「大丈夫、僕らで作っているからね」
「休日は寝るまでが休日です!!」
こうして、全員が寝付くまでワゼの事を世話してなんとかワゼの休日は成功したのであった・・・・・・。
ふぅ、疲れたなぁ。
ハプニングも特になく、何とか出来たけど・・・・・
後日談として、ギルドから「他の従魔たちを1日受付嬢として働かせてみないかい」という手紙が届いた。どうも、エリーが受付嬢として働いていたのを新鮮に思えたそうな。どうしよう・・・・・。




