別視点から見ると悪者っぽい
今回前半はモンスターの視点からです
・・・・その日、ある山のふもとにてギガンテスが率いるサイクロプスの群れは全員が何か恐怖の予感を感じた。
自分たちは強い、それは全員の考えと一致している。
事実、彼らはこれまで近くを通りかかった馬車を襲撃して、生きていた者たちを食べたり、暴れたい時には木々をなぎ倒して暴れたりしてきた。
たまに、ちまちまと攻撃をしてくる者たちがいたが、自分たちの強さの前には歯が立たなくてつぶしていったし、目玉を狙ってきたやつは容赦なく食らいちぎってやった。
其のため、自分たちは完全無欠に強いと思い、リーダーとしてなっているギガンテス筆頭に今日まで好き勝手生きてきたのだが、何か得体のしれない悪寒がしていた。
そう、まるで自分達では勝てないような恐怖の何かが近づいてきているような。
死神が、自分たちの首を狙っているかのような、そんな恐怖感が群れ全体に覆っていた。
「ぐごぉぉぉぅぅぅぅっる!!」
リーダーであるギガンテスが、そんな群れの不安感を払しょくするために雄たけびを上げた。
【ここからは彼らの雄たけびは翻訳されます】
「なにしている!!俺たちは何におびえる必要があるんだ野郎ども!!」
「ですが、何かものすごい寒気が・・・」
「馬鹿野郎!!俺たちは古今東西完全無欠の無敵の集団だろ!!この俺が率いているこの集団に何が恐れるものがあるんだ!!」
「ですがギガンテスの兄貴、兄貴こそ足が震えているですぜ」
「あほぅ!!サイクロプス1号!!お前に言われたくはないわ!!これは武者震いってやつだ!!」
自分が何かにおびええているのを隠すかのように、ギガンテスはそう叫ぶ。
「でも、武者震いってことは何かと戦うってことっすよね?」
「いいか!!今日も俺たちは好き勝手に暴れる!!その何かってのはそのうちに暴れるんだ!あらかじめ武者震いが起きても不思議ではないだろう!!」
「なるほど、さすが兄貴!!」
ギガンテスのその言葉に、周りのサイクロプスたちは歓喜する。
その時であった。
ザシュッツ!!
「・・・・え?」
何かがものすごい勢いで飛んできて、サイクロプスの一体の目玉を貫く。
何が起きたのかを把握する前に、そのサイクロプスは絶命した。
「さ、サイクロプス3ごーうぅぅぅぅぅ!!」
ギガンテスは叫ぶ。目の前で、先ほどまで元気だった仲間が死んだからだ。
「野郎ども!!戦闘準備だ!!」
敵の襲撃ということに気が付き、ギガンテスはすぐさま他のサイクロプスたちに戦闘態勢を取らせる。
先ほどは油断してはいたが、もうこの戦闘態勢になればスキはない。
「おまえら!!目を守っておけよ!俺たちはそれがつぶれたりしたら死んじまうからな!!」
ギガンテスはそう叫び、他のサイクロプスたちはその指示にしたがおうとした瞬間、
ピン!!
「はいっつ!?」
どっしぃぃぃぃん!!
足に違和感を感じてすぐに、ギガンテスとサイクロプスたちは地面に倒れ込んだ。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!!足がねぇぇぇぇ!!」
みると、ひざから先の部分がきれいに切断されており、二度と立てなくなっていた。
このままでも出血死という可能性があったのだが、そうは簡単に行かなかった。
「あ、兄貴ぃぃぃぃ!!」
「ぎゅわぁぁぁあ!!」
「へぶぁっつ!!」
次々と、周囲の他のサイクロプスたちの断末魔が上がる。
ギガンテスが根性で見渡すと、他のサイクロプスたちの眼のあったところがつぶれていたり、焼かれていたり、血を吹き出していたりと様々だったが、全員絶命しているのはわかった。
「お、お前達・・・・・畜生、いったい誰がやったんだよこのやろぉぉおぉお!!」
ギガンテスは吠える。昨日までは一緒に好き勝手やっていた仲間たちが、今では言葉も発しない屍になっていることに対しての怒りで。
ふと、ギガンテスは気が付いた。
自分の目の前に誰かがいた。それも、自分よりはるかに格上だと感じる存在を。
「最後にこいつで終わりでありますな」
長い胴体をしており、その手には見たこともないような物凄く長細く、先の部分が鋭くとがっている武器を持っていた。
もはや、死は免れられないとギガンテスはすぐさま悟った。
だが、ここで黙ってやられてしまえば死んでしまった仲間たちに顔向けはできない。
「こうなったら、貴様だけでもぶっ倒してやるぅぅぅぅ!!」
手元には、武器がなく、足は膝から先が無くなっているので立って攻撃もできない。
だが、自分には最後の武器としてこの拳がある。
幸いにして、拳が届く距離にその存在はいたのだが・・・・
「・・・その気迫は見事でありますが、我輩だけがここにいたとでも思ったのが貴様の敗因であります」
がきぃぃぃぃん!!
「!?」
あたる直前、何かものすごくかたいものがその拳を防いだ。
眼を見開いていると、何か白い直方体のようなものが・・・
「さて、最後に我輩に攻撃しようとしたその気迫を讃えてすぐにでも葬り去ってやるであります」
そう言い放ったその存在は、一瞬でギガンテスの目の前にまで迫る。
その目の直前に其の細長くて先がとがっている武器が付きつけられたその瞬間、ギガンテスは己の過去を思い出す。
サイクロプスの上位種として生まれ、その後にサイクロプスたちをまとめ上げて過ごしたその日々を。
好き勝手に生きて、仲間たちと過ごしたあの日々を。
そしてまたこうも思う。このようなことになったのは、そこまで好き勝手して過ごした報いではないのか。
好き勝手生きるために、面白半分で動いていたやつらを潰し、砕き、喰らったその報いではないのかと。
だが、不思議と後悔はなかった。こうして死ねば仲間たちのところにいけるのだ。
そう考えると、こうして最後に本当に自分より格上の相手に殺されるのも悪くはない。
これまで強者として過ごしてきたが、その自分よりもはるかにものすごい相手。
そんな相手に殺されるものまた悪くはない。
己の眼がつぶされ、意識が消えていくのをおぼろに感じながらも、そのサイクロプスは何処か満足したかのような笑みをたたえるのであった・・・・・・。
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「なんじゃこやつ?殺されたというのに・・・・不思議と笑みのようにも見えるな」
ミアンは首をひねった。
今しがた命を奪ったギガンテスだが、なぜか満足そうな笑みを浮かべているように見えたのだ。
「ミアン、そっちは終わったのですかー」
「おー、そっちもでありますか」
他のサイクロプスの近くから、ハクロたちも出てきた。
まず最初に、ハクロの糸を何重にも巻いて固めて作った槍を用意した。
そして、適当なサイクロプスの目玉にその槍を投げ当てる。投げたのは、腕の力が強いハクロだ。
そして、それで警戒して驚いたサイクロプスたちの足元に素早く言って、物凄く細い糸で切り裂いていって素早く足を絶つ。
あとは全員で協力して魔法で目をつぶしたり、槍で目をつぶしたり、糸で奥からえぐったりするだけの簡単なお仕事。
念のために、一番手ごわそうなギガンテスに対してはミアンとエリーが対応することにした。
ギガンテスが最後の力を全力で込めて腕で殴ってきたが、そこは箱の姿になったエリーが前に出てその物凄い防御力でカバーし、ミアンがトドメを指したのであった。
「にしても、やっぱりちょっとえぐいな・・・」
ライは思わずつぶやく。
周囲には、足がひざのさきから切り落とされて、目玉があった場所から血を流す死体だらけである。
「さて、この死体を回収しないとね。エリー、頼めるかい?」
ジャックが尋ねると、エリーはコクコクとうなずいてまずはギガンテスの死体のところに行った。
そして、その箱の状態でのふたを開けると、一瞬でその大きな死体はエリーの中に吸い込まれていった。
どうやらエリーは元のミミックの姿の時に色々収納ができるらしく、大きな獲物でもこうやって運ぶことができるようだった。ミミック・・・宝箱の姿だけに、その内部に収納できるってことかな?
ただ、内部では普通に時間が経つ様なので永久保存とかそう言うことはできないようだったが。
それでも、こうして荷物運びの手段を得たのはジャックたちにとっては大きなことでもあった・・・・。
ある意味、四○元ポケットの様なものともいえる。




