驚いたところで
前回の続き
・・・・どうも、この女性はエリー本人の様だ。
いや、モンスターって事だから本体?
「えっと、本当にエリーなのか?」
コクコクと吊るされながらもうなずく女性・・・エリー。
着ている服の装飾や、その髪形や肌の白さは確かにあのミミックの特徴があるけど・・・・。
「ミミックって、人になったっけ?」
「聞いたことがないですよね」
「初耳なのじゃが・・・」
全員首をひねる。
「人の姿になるモンスターは、『人化の術』や特殊な条件進化があると、昔友人に聞いたことがあるんですが・・」
リーゼがそういった。
この中では一番経験が豊富そうだし・・・その友人って何なのかは気になるけど。
「だけど、ミミックが人の姿になったというのは長生きしてますが初めてですよ」
「うーむ、どういう事でありますかな?」
「ロウの場合と似ているけど、これまた謎だな」
ロウもスライムだけど、少女の姿をとるから似たようなものかもしれないけど、知れは体が柔らかいスライムだからまだ納得はできるとして、頑丈な箱がこうなるのは納得がいかないような気がする。
「エリー・・・でいいんだよね?元のミミックの姿に戻れるかい?」
こくりとうなずいたので、縄をほどいた。
ほどいた後、エリーは体育座りをしたかと思うと・・・
ぽんっつ
コミカルな音がして、元のミミックの姿になっていた。
かたかたとふたを揺らして本当だったと言っているみたいに見える。
「・・・・まじでエリーだった」
「なんというか・・・リーゼの人化とはまた違った感じですよね」
リーゼの場合、身体が光って大きくなったり小さくなったりしているけど、エリーの場合はどうやら体育座りして人化できるようで・・・・。
「ミミックが人化するのは驚いたけど、あの店主のお爺さんはこのこと言っていなかったよね?」
「となると、ライ様が従魔にした時に可能になったとか?」
しかし、驚き過ぎてもはやなんといえばいいのやら。
「しかしのぅ、この場合ミミックと言っていいのやらわからぬ」
「人化できるミミックと言ってもいいかもしれないけど、こんなケースってあったかな?」
「ないですね」
「見たことも聞いたこともないでありますな」
これ、ロウの時と同じようにややこしいことになりそうだな。
「・・・でも、よくよく考えれば案外おかしくないかもしれないであります」
ミアンがふと何か思いついたようにつぶやいた。
「ミアン、それってどういうこと?」
「ミミックは通称『人喰い箱』。宝箱に擬態して、寄ってきた者たちを喰らうモンスターであります。こうして人の姿・・・それも、女性の姿になって、あほぅな者たちをおびき寄せることもできるなと思ったのであります」
ミミックはダンジョン内にしかいないモンスター。ダンジョンの中で、じっと待っておびき寄せて獲物を喰らうミミックが進化したら・・・このような形になってもおかしくないという事か。
「でも、さすがに人の姿になる話ってのに結び付けにくいな・・・」
「詳しいことはとりあえずザストに帰ってから考えたほうが良いかもしれないわね。ギルドマスターに相談してみましょうよ」
とにもかくにも、僕らはザストに戻って考えることにするのであった・・・・。
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「うーん」
「どうしたんですカ?」
「いや、何か厄介ごとを引き受けさせられたような気になって・・・・」
辺境都市ザストのギルドマスター、アーガレストはなんとなくめんどくさい予感にかられていた。
「そうですか、では、こちらの書類に目を通して置いてくだサイ」
どすんっ
「・・・ものすごく多くないか?」
ワゼが持ってきた書類の山を見て、アーガレストは顔を引きつらせる。
「ザストの領主様の看病しにいってさぼりましたよネ?その残り分と今日の分だけですヨ」
ついでに、ワゼは何となくライが高い確率で何かめんどくさそうなことを持ち込んでくることを見越して、その関係書類も混ぜてはいたのだが・・・・・・。
ワゼの有能さはとんでもないかもしれない。




