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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第一章 始まりのダンジョン
8/48

8 シュート!

 


「ぬおおおおおッ!」


 縦穴を落下する。

 ほどなく足が壁に触れるが、相当の傾斜があり、転がりながらそのまま滑り落ちていく。

 45度を超えるような坂だ。


「んなあッ!」


 指を坂に突き立てるように止めようとするが、勢いがつき過ぎていてとても無理だ。先に指が折れそうだ。

 爪のはがれかけた指を離し、脚を突っ張って勢いを殺す。


 なんとか勢いは弱まってきたが、そのあたりで再び床が途切れ、体が宙を舞った。

【軽業】の効果でなんとか回転受け身を取る。


 くそっ、罠か……あれだけ気を付けていたのに、肝心な所で油断してしまった。

 情けなさと全身を襲う痛みに泣きそうな気分になりながら、周囲を警戒する。


 広い部屋の真ん中である。近くに松明の火がないため周囲はかなり暗い。

 遠くに松明の架けられた壁が見えるが、出口は見当たらない。

 暗い場所にあるならこの距離からでは見えないかもしれない。


【気配察知】がガンガンに警報を鳴らす。囲まれている……!

 いわゆる……モンスターハウスってやつか?

 冷や汗が吹き出し、全身に鳥肌が立つ。


 ヤバい。ヤバい!


 周りの闇にぼうっ……といくつもの白い人影が浮かびあがる。

 1、2、3……たくさん。

 輪郭の定かでないそれらは一斉にこちらに手を向けた。はっきり見えない口元が動き、呪文を紡いでいる。

 さらに足元からカチャカチャと骨が浮かんできて組み上がり数体のスケルトンを形作る。剣と盾を持ち、ボロ切れを身に纏っている。上位種か。


 動かなければ死ぬーー短剣を抜きながら包囲の手薄な一角に向けて走り出す。

 進路上の亡霊の胴体を切り払う。手応えはないが、分断された霊体は溶けるように掻き消えた。

 そのままスケルトンの斬撃をかいくぐり、勢いを殺さず走り抜ける。一撃が背中をかすめた。ひとまず壁際まで……



 と、そこで後ろから魔法が放たれる。

 振り返って【魔盾】を展開し、飛来する光の矢を受け止める。止め損ねた一発が左肩に突き刺さる。


「ぐうっ……!」


 呻きつつ、衝撃に傾ぐ体を無理矢理立て直し、走り続ける。止まったら終わりだ。


 なんとか壁を見渡せる近くまで走り、左右を見回すーー左は部屋の角、右に20メートルほどのところに通路がある。

 壁を殴るように押し、反動を利用して右に方向を変える。間一髪で迫っていた魔法の矢が壁を穿った。


 方向転換したせいで、最短距離を追ってきたスケルトンが追いつき、飛び掛かってくる。1階のスケルトンより遥かに素早く、動きがスムーズだ。


 短剣では勢いを止められない。【魔盾】を発動し、スケルトンの顔面を打ち据えるように迎え撃つ。盾で防がれるが、突き飛ばして体勢を崩させることができた。


 その隙に通路に向かって走るーー魔法の矢は間断なく撃ち込まれている。段々と走る先を狙い出す矢に追いつかれるギリギリで通路に逃げ込む。


 まだだ。

 通路を奥に向かって走る。背後から追ってくる気配を感じる。息が限界だーー


 通路の奥に扉がある。逃げる勢いのままーー鍵も罠もないことを祈りつつーーつんのめるようにして開けて、中に転がり込む。


 部屋は正方形で、四方に同様の扉があった。入ってきた扉を叩き付けるように閉め、様子を窺った。

 数十秒……あるいは数分か……息を潜めたあと、追って来ないことを確信してーーようやく、息をついた。



 扉の取っ手を全力で押さえていたことに気付き、手を離してへたり込んだ。

 それからさらに数分、荒れた呼吸を整えた。

 ……さすがに、やばかった。

 どこかで一手間違えれば死んでいたかもしれない。


 緊張から解放された身体を痛みが襲う。顔をしかめつつ、受けたダメージを確認する。


 まず左肩。魔法の矢がモロに突き刺さって穴が空き、血が流れている。骨や動脈、筋肉はやられていない。

 両手はシュートを落ちた時に皮がむけ、爪が剥がれかけている。

 転がり落ちた際に全身に打撲……さらに魔法の矢の雨がかすめた無数のかすり傷。背中の刀傷。全身血塗れだ。


 はあ……満身創痍だ。ゴブリンボスを倒した一瞬の油断でこのザマだ。命懸けで「油断大敵」という言葉の意味を勉強する羽目になってしまった。


 今が使い所だろう。インベントリからヒールポーションを取り出した。左腕が上がらないので歯でコルク栓を開け、わずかに口に含んでみる。特に味はしない。

 これはどれだけ飲むものなのか……考えた挙句、一気に煽った。ケチる場面ではないだろう。回復しないと動けないのだ。


 全身がカーッと熱くなり、傷が塞がっていく。肩の穴も肉が盛り上がり、あっという間に元通りだ。なにこれ気持ち悪い。



 傷が癒え、気分もようやく落ち着いたところでマップを確認する。


『廃ビルのダンジョン 地下5階』


 ……3階分落とされてしまった。地下777階じゃないだけマシか……

 にしてもちょっとシビアすぎないかコレ。ゲームバランス仕事しろ。ゲームじゃないのか。


 ステータスを確認する。


 ===================

 笠木詠介 探検家(スペランカー)

 レベル 8 MP 45 / 45 SP 25

 気配察知Lv1 剛力Lv1 頑健Lv1 敏捷Lv1

 軽業Lv1

 解錠

 ===================


 地下2階でボスを含めてそれなりに敵を倒した分レベルが上がっている。それはいい。


「なんか不名誉な職業がついてる……」


 これ段差とかコウモリの糞ですぐ死ぬ人のやつじゃん。縁起でもない。

 ……ついたものはしょうがない。スキルを見てみよう。


 ===================

 体力Lv1   3SP

 罠感知Lv1  3SP

 魔法耐性Lv1 3SP

 気配察知Lv2 5SP

 頑健Lv2   5SP

 敏捷Lv2   5SP

 ===================


 結構増えたな。いくつかのLv2スキルが解放されている。

 消費SPが多いな……一応全部取ろうと思えば取れるが……

 迷ったが、【体力】【罠感知】【魔法耐性】【敏捷】を取る。罠怖い。マジ怖い。残りSP11。


 【体力】を取った途端、疲れ切った体がスッと楽になる。これはいいものだ。あと10年は戦える。無理だ。


 【頑健】でなくて【敏捷】を取ったのは、回復手段がないからだ。ノーダメージになるならいいのだが、そういう訳ではないだろう。そもそもダメージを食らわないことが重要なのだ。


 【魔法耐性】を取ったのは、魔法を使う敵が現れ始めたことと、回避不能な魔法攻撃を警戒してのことだ。

 広範囲攻撃や精神攻撃系の魔法があったら【敏捷】だけでは無理だろう。



 さて、いつまでもここに居るわけにもいかない。安全とは限らないし。

 俺は残る気力を奮い立たせ、立ち上がった。

 インベントリから予備の剣を取り出す。


 さあ……生きて帰るぞ。



一章の折り返し地点というところです。

詠介くんが生きて帰れるかは皆様のご声援にかかっています。

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