番外編2 隠しモンスター
学校での戦いから3ヶ月。
俺たちは学校を拠点として街の探索を続けていた。
街は完全にダンジョン化しており、地下鉄は言うまでもなく、道路まですべてが迷路。
街の生存者を迎え入れ、校舎も校庭も人で溢れている。
一刻も早く郊外への脱出ルートを見つけなければ……
というところで、山口が妙なことを言い出したのだった。
「隠しモンスター?」
「ああ、その噂で持ちきりだよ」
見慣れた学食は人でごった返している。生徒だけではなくかなりの数の大人が混じっているのがあの頃と違うところだ。
食料は配給制となっている。学校に備蓄された非常食が尽きた後はダンジョンのショップ機能で購入した食材を使っているのだ。
気持ち悪がる人もいるが、背に腹は代えられない。
向かいに座っている山口は相変わらず食いながら喋り、滝田は黙々と食べている。
「この状況で隠しもクソもないと思うが」
「見るからに隠しモンスターなんだってよ」
「なんだそりゃ、胡散臭い」
山口の次のセリフが予想できた俺は無理やり話を打ち切って席を立とうとした。
「いや、こちらにも報告が上がっている。山口くんの言う通り、普通のモンスターとは違うやつがいる。出会っても攻撃を仕掛けてこないらしい」
「小笠原先輩……」
会話に入ってきたのは避難所のリーダー、生徒会長の小笠原だった。
「友好的なモンスターってことですか?」
「友好的かどうかは知らないが、危害を加える気はないようだ」
「……こちらから攻撃するとどうなるんです?」
それまで黙って聞いていた滝田も口を挟む。
興味ないのかと思っていたが、目のキラキラ具合を見ると……実は興味津々か。
お宝好きだから隠しモンスターのレアアイテムでも期待してるのだろう。
「記憶が飛んだ状態で発見された者がいる。おそらく攻撃を仕掛けて反撃されたんだろう。彼らは気づいたら安全な場所にいたそうだが……」
「……だが?」
「カラカラに干からびた状態で発見された。命に別状はないらしいが」
エナジードレインでも受けたのだろうか。
でも、殺されたりはしないのか……
「笠木……」
「断る」
「笠木……」
「イヤだ」
「笠木……」
「ああ、うるさいな、分かったよ! そいつはどんな奴なんですか、先輩」
「ああ、見た目は──ハニワ、だそうだ」
──────
結局根負けした俺と山口・滝田のパーティーはハニワの目撃情報があった地下鉄の駅構内に向かった。
ここから線路に降り、隣駅の方に向かっていたところで遭遇したらしい。
こちらを探索しているのはレベル10を超える、それなりに経験を積んだパーティーだったはずだ。それがなすすべもなくやられたとしたなら、警戒が必要だな。
「白河さんとか連れてこなくてよかったの?」
「あっちはあっちで忙しいらしい。こんな趣味に付き合わせてられるか」
真帆や笹島は志願者のレベリングを手伝っているのだ。探索者を増やす必要があるからな。
「滝田、探せるか?」
滝田は頷くと、スキルを発動する。【発見】だ。
「……多分、あっち……!!」
「あれか!?」
滝田が指差した方には壁の陰から小さいものが顔を出していた。
つるんとした体、丸く穴の空いた目、三角形の口。教科書で見たものと比べるとだいぶシンプルだが、確かにハニワのように見える。
山口が叫ぶと、ハニワはすぐに壁に隠れてしまった。
「か、可愛いな!?」
「よし、追うぞ」
線路の横の穴に入っていったようだ。
俺たちも追って穴を潜ると、周囲の視界が歪んでいく。
懐中電灯の明かりがあるにも関わらず、周囲を闇に包まれる……
「罠か……!?」
「真っ暗……じゃないな。これは……」
一見真っ暗闇だが、よく見ると壁や天井との境目には白い線が入っている。
「これは──ワイヤーフレームダンジョンだ」
「知っているのか笠木!」
「最初期のダンジョンRPGは黒背景に線だけでダンジョンを表現してたんだよ。こんなところで本物にお目にかかれるとは……ちなみにウィザー○リィが元祖だと思われがちだがウルティ○作者のア○ラベスってゲームが先で、それ以前にも……」
って聞いてないなこいつら。
レトロゲーム感溢れるダンジョンに来て俺のテンションはいやがうえにも高まる!
「いた! 逃げてくよ!」
再びハニワを発見した滝田はワイヤーフレームの通路を走り出す。
「あっ」
真っ黒の通路には落とし穴があり、滝田は真っ逆さまに落ちていった。
「おい、滝田!?」
ぐしゃっ。
と音を立て、俺の背後に何かが落ちてきた。
振り向くと、そこにいたのは……
「た、滝田!?」
糸でぐるぐる巻きにされ、気を失っている滝田だった。
敵じゃなかった……ホッと一息。
「いや、ホッとしてる場合じゃないだろ」
うむ、あの一瞬で無力化する手腕。敵は相当なものだ。警戒を強める。
「滝田は?」
「どうやら噂通りこちらを殺す気はないようだ。置いていこう」
「いいのかなあ……」
罠に引っかからないように慎重に進むと、9マス分の部屋に出た。
その中心にいるのは……
「ハニワだな。待ち構えていたのか」
隠しモンスターのハニワ……
某RPGでは7回しか使えないが最強クラスの攻撃力を持つ武器をドロップするのだ。
だが……
「オレにやらせてくれ」
「山口!」
「ここらでお遊びはいい加減にしろってところを見せてやりたい」
山口が前に進み出ると、ハニワの口が逆三角形になる。笑っているのか──
次の瞬間、ハニワの周囲の空間に魔法陣が描かれ、無数の光球がワイヤーフレーム空間に浮かび上がった。
背中をオカンが走る!
「来るぞ、山口!」
「バ、【障壁】!【鉄壁】!」
直感でヤバさに気づいた山口は防御魔法を重ねがけして衝撃に備えた。
カッ──!
飛来した光球が障壁にぶちあたると小爆発に埋め尽くされ、山口の体が見えなくなる。
爆発が収まったところには──ボロ雑巾のようになった山口が横たわっていた。
「ヤム……山口! くっ、よくも滝田と山口を!」
ハニワの周囲に再び魔法陣が展開される。
だが、それが発動する前に抜き打ちで放った俺の【魔撃閃刃】が炸裂する──
「なにぃッ!」
ハニワが突然後ろにスライドし、俺の攻撃を回避する。
【瞬動】!? いや、違う!
ハニワの足にタイヤが生え、背後から伸びる糸で引っ張り急バックしたのだ。
ニョホホホホ!
謎の哄笑を上げながら動き回るハニワ。
俺も負けじと【魔手】で追いすがる。距離を取られたら負ける!
「いてぇっ!」
ハニワが逃げながら魔法のボールを放ち、俺の顔面に激突する。
さながら千本ノックのように顔面にボールを受けながらもなお追いかける。
もう少し!
手が届く!
「捕まえ……!」
逃げるハニワを思い切り掴むと、ハニワは砕け散った。
「……え」
脆すぎる……
あんまりな終わり方に呆然と立ち尽くしていると、いつのまにか元の地下鉄の線路内に戻っていた。
ワイヤーフレームダンジョンはどうやら異空間だったらしい。
近くには滝田と山口の姿もある。
「……なんか、俺もヘンなテンションだったな」
夢でも見ていたのだろうか。
顔を上げると、その先には地上の光が見えた。
──────
学校、視聴覚室。
ここは現在探索者の溜まり場となっている。作戦会議などを行うためだ。
「……じゃあ、それで街からの脱出ルートを見つけたの?」
真帆が怪訝そうな顔で問い、俺は魔力球千本ノックのせいでボコボコに腫れ上がった顔で遠い目をして答える。
「ああ。ひょっとしたらあのハニワは……俺たちを試した神の試練だったのかもしれない」
「頭、大丈夫?」
笹島が酷いことを言う。
大丈夫だ……おれはしょうきにもどった!
「……山口くんと滝田くんは?」
「なんかゲッソリやつれて医務室で寝てる。山口なんかはスマートになって見慣れない感じだ」
「山口、痩せると意外に2枚目だったり……?」
笹島……何を期待してるか知らんが、それはない。
「ともかく、おかげでプロジェクト・エクソダスが実行に移せる。さすがだな、笠木くん」
「……そんな名前でした?」
小笠原先輩が聞き覚えのない計画名を口にする。
この生徒会長もたまにヘンなことを言い出すんだよなぁ。
なんにしろ、そのへんが全部ダンジョンになってもみんなたくましく生きてるようだ。
めでたしめでたし。
お久しぶりです。作者です。
ブックマークして頂いてる方はビックリしたと思いますが、いまさらの番外編です。
正直に言うと宣伝更新ではあるのですが、1年ぶりでもキャラとか覚えてるもんですね。書くの楽しかったです。
今はランキング隔離により魔境と化した異世界転生ものを書いてます。この番外編みたいなノリのコメディです。
導線が少なくなかなかPVが増えない(力不足説も有力ですが…)ため、恥を忍んで宣伝させてもらいます。
なお、当番外編のキャラと新作のキャラは一切関係ございません!
「転生プログラマーのダンジョン建国記 〜ハニワがいつのまにか魔王になってた話〜」
画面下部、評価欄の上あたりにリンクを置いてあります。
ジャンルは違いますが、拙作を気に入って頂けた方にお届けできれば幸いです。
よろしくお願いします!




