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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第三章 広がるダンジョン
39/48

38 わかちゃん

1話、笹山から笹島にへんこうしました。(篠山とかぶってたため)

 

 《白河真帆視点》



「真帆!」


「あっ、わかちゃん!」


 始業前にお手洗いに行っていたわたしは去年同じクラスだった笹島和歌子……わかちゃんとバッタリ会った。


 入学以来の友達で、いつもわたしを気遣ってくれる。

 今日は生憎の雨で朝練はなかったようだけど、大会が近いらしく最近は忙しそうであまり話せていなかった。


「真帆、最近ちょっと明るくなったでしょ。問題は解決した?」


「ううん、まだだけど、ちょっと進展があったからね」


「そっか、よかった。落ち着いたらまた遊ぼうね!」



 わたしが返事をしようとした時、大きな揺れが校舎を襲った。

 立っていられないっ!



「……わかちゃんっ!」


「真帆っ!」


 わかちゃんがわたしに抱きついて教室側の廊下にしゃがみ込む。庇ってくれたのだ。


 念のためこっそりと【障壁】を発動しておく。これだけ密着していれば二人共効果範囲だ。


 わかちゃんがわたしごと自分の頭を抱え込んだ。しっかり丸まっていないと床や壁に弾き飛ばされてしまいそうだ。


 上下も分からなくなりそうな激しい揺れの中で腕の隙間から周囲の様子を窺うと、信じ難い光景が目に入った。


 廊下がうねり、伸びていく。教室の間隔が開き、壁が裂けたかと思いきや、新たな通路が出来ていった。




 しばらくして揺れが収まると、そこは出来の悪いコラージュ写真のような迷路になっていた。


 廊下には他にも数人の生徒が居たはずだけどどこかに運ばれていってしまった。いや、運ばれてしまったのはわたしたちの方かもしれない。



「なに……これ……?」


 【スマホ中毒者】(フォンアディクト)の称号を得たわたしは念じるだけで鑑定できる。

 呆然と呟くわかちゃんを【鑑定】してみると……


 ===================

 笹島和歌子 学生

 レベル 1 MP 10 / 10

 スキルなし

 ===================


 やっぱり! レベル1になってる。

 つまり、学校がダンジョンになってしまったのだ。



「わ、わかちゃん……とりあえず、離してくれる?」


「あ、ごめん!」


 わかちゃんが抱え込んでいたわたしの頭をパッと離した。


 わかちゃんはかなり胸が大きいので、抱え込まれたわたしは埋もれて窒息気味だった。男子だったらご褒美だろうけどわたしにとっては二重の意味で拷問だ。

 それでいて他の部分は細く引き締まっているのだ。理想の体型だ。ずるい。



「で、なんなのこれ? いきなり迷路になっちゃって。窓の外もなにも見えないし、開かないみたい」


「ダンジョン……だと思う」


「え! ……なに、それ?」



 どうやらわかちゃんはダンジョンの噂をあまり知らないようだった。ゲームもしない人だし、よく分からないから「ふ〜ん」で流していたんだろう。

 細かいことは気にしない子なのだ。


「簡単に言うと怪物が棲む迷路……ってとこかな」


 最近そこかしこに現れているという噂についても一通りのことを説明した。



「へえー、リアルなお化け屋敷みたいなもんか。じゃあ学校がその、ダンジョンとやらになったってこと!? そんなオカルトみたいなことホントにあるんだね〜」


 わかちゃんは少し考え込んだ後、大きく頷いて手の平に拳を打ちつけた。


「よっし! 真帆、安心しなさい! 怪物が出たらあたしがぶっ飛ばしてやる!」


「ありがと、わかちゃん。一緒に出よう!」



 と、その時、通路から音もなくボロ切れを纏ったスケルトンが現れた。既に武器……剣と盾を構えている。


 さすがのわかちゃんも一瞬絶句したが、すぐに我に返った。


「コイツが……! 真帆、下がっ」


【魔矢】(マジックアロー)!」


 わかちゃんが言い終える前に、わたしの放った【魔矢】がスケルトンの頭を粉々に吹き飛ばした。


「ん? ……んん!?」


 頭部を失ったスケルトンがぐらりと倒れるのと手を突き出したわたしを見ながらわかちゃんは口をパクパクさせている。


「わたし実は……魔法使いなんだ」


「魔法使い、真帆……まほまほ……!」


 なんでそうなる。




「わたし、ダンジョンに入ったことがあって……だから、わたしも戦えるよ」


「へー、じゃあダンジョンで魔法を覚えたってことなのね……そんなことしてたなんてビックリだわ……」


「ゴメンね、黙ってて……」


 わたしの説明を聞いたわかちゃんは驚いた様子だったが、納得してくれた。


「いやー、いきなりそんなこと言い出したらこの子大丈夫かしら? って思っちゃうところだわ。それよりあんまり長話してるのもなんだし、どうするか決めよっか。どうすればいい? 経験者さん?」



 問われて今度はわたしが考え込む。


 うーん……闇雲に外に向かっても厳しいかもしれない。携帯を教室に置いてきてしまった。


 わたしはまだマップやインベントリがアプリなしで使えないし……なによりメッセージで詠介くんに連絡が取りたい。



「まず、自分の教室に戻りたいな。携帯があればえいす……笠木くんに連絡が取れるし」


「笠木? なんでアイツに……まさか、付き合ってるの?」


 唐突な言葉に、わたしは顔が一気に熱くなるのを感じた。


「つ!? つ……ち、ちちち違! いやその……! そう! えい……彼は、経験が……! いやそういう意味じゃなくて、ダンジョン! 得意だから!」


「……そんなに慌てなくても……つまり、アイツがダンジョンに詳しいのね? ゲーマーだもんねえ、アイツ」


「そそそ、そうそう!」


 我ながらしどろもどろな説明になったけど、なんとか誤魔化せたようだ。ホッ。



 だが、わかちゃんは悪そうな顔でニヤリ、と笑った。


「で、真帆はアイツが好き、と」




 あああああああああああああああ!



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