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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第三章 広がるダンジョン
36/48

35 魔剣

 

 あくる日。

 俺たちは地下7階に下りていた。


 地下7階は神殿の遺跡のようだった。

 あまりよく知らないが、古代ギリシャあたりの神殿の廃墟みたいに見える。


 ここのモンスターは定番のガーゴイル、火炎放射してくるヘビ・パイロスネークと、剣や槍で武装して集団で襲ってくるゾンビ兵士だ。


 あまり手強い相手ではないので順調に進んでいく。




「詠介くんさ、わたしのこと名前で呼んでくれないよね。わたしは呼んでるのに」


「ん? んん?」


 唐突な話題に、俺は面食らった。


 最近は探索中も軽く雑談くらいはする。

 ダンジョン探索は始終張り詰めていては持たないので、適度に気を抜くことも必要なのだ。


「そういや、なんで俺のこと名前で呼ぶようになったんだ?」


「あなたが先に呼んだんでしょー! そういう流れかと思って名前呼びにしたのに、わたしだけなんだもん。裏切られた気分だよこっちは。それに、構築者がお父さんだって分かったし、区別する意味でもわたしを名前呼びした方がいいと思うんだ」


 どや! と白河は控えめな胸を張った。


 ……そう言えば、「まほまほ」って呼んだな。どつかれたからダメなのかと思ったが、良かったのか。

 白河は期待を込めた眼差しでこちらを見つめている。

 ……すごくやりづらいな。


「まほまほ」


「……一回がいいな」


「……ま、真帆ちゃん」


「……呼び捨てがいいかな」


「真帆」


「……ご、合格! 今後それで!」


 白河……もとい真帆は顔を赤くしてソッポを向いた。照れるのにやらせるのか。女の気持ちはわからん。


 彼女いない歴イコール年齢の俺に女子を名前呼びしろというのは結構精神的ダメージがでかい。

【不惑】があっても感情を失うわけではないらしい。良かった良かった。




「む、広間だな」


 神殿の大広間のような部屋に出た。

 広間はだいたいボス部屋なので警戒を強める。


「真ん中になんか……」


 真帆の言う通り、広間の真ん中には台座があり、剣が突き立っている。

 その後ろには長剣を両手で捧げ持つ5メートルほどの兵士の石像が2体並んでいる。


 あからさまに罠の匂いがぷんぷんするな。

 抜くと襲ってくるパターンと見た。


「ちょっと離れてて。調べてみる」


「気をつけてね」


 他の罠がないとも限らない。台座周辺を調べてみる。……大丈夫そうだな。

 剣を見てみよう。


 台座に突き立っているのは大剣ほどの大きさではないが両手持ちを想定した剣のようだ。

 滑り止めの革紐が巻かれた柄は長く、わずかに突起した鍔の部分から幅の広い両刃の刀身まですべて一体成型になっており、光沢の弱いグレーの材質でできている。


復讐者(アベンジャー) 【不壊】【狂化】【剛力】【閃刃】』


 うわぁ呪われてそう……

 だが、使えるならかなりの戦力になりそうだな……


 えーと、とりあえず……石像が動かないうちに壊せないか試してみるか。


 インベントリからゴブリンの棍棒を取り出し、【魔撃】を使い野球のバッティングのように石像の足目掛けてフルスイングする。


 ホームラン。

 ……とはいかず、棍棒は砕け散った。石像は無傷だ。

 うむむ、無敵か。刀を使わなくて良かった。


「どうするの? それ、呪われてそうじゃない?」


 真帆も既に【スマホ中毒者】(フォンアディクト)を得ている。剣を【解析】したらしく、心配する言葉を投げかけてきた。


「試してみたい。周りの警戒を頼む」


 なんとなくだが……この剣はかなり重要な気がする。ただの罠とは思えない。


「よし、抜くぞ」


 柄に両手をかけ、一気に引き抜くべく力を込めた。


 その瞬間。


 俺の脳裏にイメージの奔流が流れ込んでくる。

 不鮮明な何者かの記憶。

 複数の人間の記憶だ。それらが混じり合っている。




 仲間が死んでいく。


 妻が、友達が、恋人が、子供達が、なすすべもなく闇の中に飲み込まれていく。


 ゆっくりと。あるいは一瞬で。


 無意味に。不条理に。理不尽に。



 憎い。



 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ



「黙れ」



 俺の言葉に、俺に侵入し支配しようとしていた意思はピタリと止まった。


「お前らがやろうとしていることは奴らと同じだ」


 魔剣の意思が揺らぐ。ぐるぐると回り、俺を包みこむ。



 この意思の源泉は無念のうちに禍神に飲まれていった魂達。おそらく前の世界のものだ。


 戦士であろうが戦うことすら出来ず、守るべき者達が飲まれるところを眺めることしか出来なかったのだ。

 ……さぞ、悔しいだろうな。



「俺がやってやる。お前らの代わりに、お前らを使って、目にものを見せてやる。だから、力を貸せ」



 意思は同意するように一つに纏まると、剣の中に引っ込んでいった。


 気がつくと、いつのまにか剣を引き抜き終わっていた。グレーの刀身は静かなオーラを湛えている。俺を持ち主と認めてくれたようだ。



「詠介くん!」



 真帆の声に、頭上を見上げる。

 2体の石像はもはや石像ではない。2体の巨人が剣を振りかぶり俺の方を見下ろしていた。


 ===================

 スプリガン

 レベル 26 MP 80 / 80

 剛力Lv5 頑健Lv3 敏捷Lv3 魔力Lv2

 魔法耐性Lv3

 魔盾 恐叫

 ===================


 2本の巨大な剣が床を破壊した。轟音と共に瓦礫が飛び散り、縦横にヒビが走った。


 だが、俺はもうそこにはいない。

【瞬動】を発動した俺は、片方の巨人の頭上まで跳んでいた。



「お前らの怒りを、見せてみろ!」



 魔剣が眩いほどの赤い光を放った。


「【魔撃閃刃】」


 大気を抉る音。

 赤い閃光に飲まれ、巨人の首から上は一瞬にして跡形も残さず消滅した。



 もう一方の巨人は床を砕いた剣を切り返し、恐ろしい速度で跳ね上げてくる。


 俺は【魔手】(マジックハンド)で巨人の兜を掴み自分を引き寄せて回避、すれ違いざまに【魔撃】を発動して首を刎ねる。


 刎ね飛ばされた首は天井スレスレまで飛んでいき、放物線を描いて床に激突した。



「うわあ……すっごい……」


 感嘆の声を上げる真帆に、着地した俺は親指を立てて応えた。

 たまには無双してもいいだろ?


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