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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第二章 増えるダンジョン
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29 旅の仲間

 

 黒いモヤが晴れると、広い空間に出た。山口と滝田も一緒だ。はぐれなくてよかった。

 俺はあたりの気配を窺う。威圧的な空気に鳥肌が立った。


 広い、暗い空間。

 床や高い天井は石造りで、大きな部屋のようだった。四角い柱が点在し、いくつもの篝火が焚かれている。



 ……ってあれ。すごく見覚えがあるぞ。


 注意を払いつつ、スマホを取り出してマップを確認する。通った周辺しか表示されないはずのマップは見慣れた形を映していた。


 間違いない。地下5階……廃ビルダンジョンの地下5階だ。

 ダンジョン名の表示が『原初の迷宮 地下5階』に変わっている。


 いつもと違う方法で来たからウォルズがリポップするかとも思ったが、その気配はないようだ。



「なんだここ……テレポートしたってのか!?」


 山口が焦ったようでどことなく嬉しそうに言った。滝田はベルを持ったまま呆然としている。俺はベルを鳴らさないように気を付けながらその手からそっと取り上げた。


「笠木……ここは」


「別のダンジョンだな。よく分からんものを使うなよ。今回は危険はなさそうだが毎回そうとは限らんぞ」


 ウォルズは倒してるからよかったが、もし倒す前に来てたら普通にウォルズに「こんにちは。死ね!」されちゃうよな。理不尽過ぎる。



「スマホに、なんか……」


 来たな。『ダンジョンアシスタント』。やっぱりこのダンジョンに入るとインストールされるのか。


「笠木、落ち着いてるよね。なにが起こってるか、分かってるんでしょ?」


 ……こうなった以上、隠し通す意味はないな。俺の知ってることを説明してやった。


 既にここに来たことがあること。

『ダンジョンアシスタント』のこと。

 白河と構築者のことと……敵、禍神のこと。




「お前、そんなこと黙ってたのかよ!」


「構築者に口止めされてるし……言えば来たがるだろ? 危険なんだ。知らなきゃ知らない方がいい」


「……なんで今になって?」


「他にダンジョンがある以上、言わない方が危険だと思った。あの水路だけとは思えないし、構築者の口ぶりだと、今後さらに増える可能性もある。そのアプリの使い方も知っておいた方がいい」


 滝田から取り上げたベルをインベントリに収納すると、二人は驚きの声を上げた。こいつは危険だから没収だ。

 俺の説明に滝田は腕組みをして考える様子を見せる。


「笠木はどうするつもり?」


「俺はこのダンジョンにもう少し潜ってみる。構築者に会って聞きたいことが山ほどある。約束もしちゃったしな」


「俺たちも一緒に行くぞ……!」


 そう来るよなあ……どうしたもんか。

 だが、滝田がそれを遮った。


「山口、待って」


「滝田? まさか、知らんぷりする気か? 白河さんのお父さんが危ないってのに……」


「笠木は僕らに来て欲しくない、そうだね?」


 俺は一瞬躊躇ったが、頷いた。

 山口がショックを受けた顔をする。


「……そうだな」


「お前、白河さんと二人きりがいいからって……!」


 山口が色ボケたことを言いかけるが、珍しく滝田が被せて聞いてくる。


「違うって。僕らが参加するとなると、先に進むのに足手まといになる。レベリングが必要だ。その時間が惜しい、ということだよね?」


「そういうことだな」


 今日は饒舌だな。話が早い。


「じゃあ僕らは僕らでレベリングをすればいい訳だ」


「ん?」


「時間は有効に使わないとね。笠木と白河さんはダンジョン攻略を進める。僕らは笠木達の余ったアイテムを借りてレベリングして追い付く。そしたら一緒に戦えるでしょ」


「なるほど、名案だな!」


 滝田の案に山口も同意した。


「おい……?」


「危険だからやめろなんて言うなよ、笠木。お前よりこっちの方が危なくないし、ダンジョンがもし増えるならレベルを上げておいた方が危険が少なくなるだろ?」


 ……一理あるな。山口もアホじゃない。

 今ダンジョンを避けたとしてこの先突然巻き込まれることもあるかもしれない。俺のように。


「それに今すぐ参加して足手まといになるより、コッソリ鍛えて白河さんのピンチに颯爽と登場して助けた方がカッコイイしな!」


 ……前言撤回。コイツはアホだ。

 俺は嘆息した。


「分かった。好きにしろよ。ただ、無茶だけはするなよ。石橋を叩き壊して渡るくらい注意深くやれよ」


「……石橋を叩き壊したら渡れないじゃん……」




 その後注意事項やアプリの使い方など、探索する上での知識を伝えて、フレンド登録と俺の余った武器の譲渡を行い、帰還魔法陣に乗った。


 転移が終わるといつもの廃ビルのガレージではなく水路ダンジョンの入り口、梯子を降りたところに転移した。

 どうやら帰還魔法陣は入ったダンジョンの入り口に戻るらしい。これは俺も予想外だった。



 日はすっかり落ちていた。

 二人は草台の駅から帰るため、俺は一人で湯水駅まで歩く。


 ……歩きながら考えると、肩の荷が降りたように感じている自分がいる。


 友人に打ち明けることができ、彼らが仲間になってくれたことは俺が無意識に背負っていたストレスを軽減してくれたようだ。俺だって鉄で出来ているわけではないのだ。


 電車に乗って窓から街の夜景を眺める。

 ふと、見慣れたはずの風景が別のもののように思えてきて不安に駆られた。

 街のそこかしこから不穏な気配を感じるのだ。



 世界が音を立てて変わっていくような、そんな予感がした。



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