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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第二章 増えるダンジョン
29/48

28 ベル

 

「おい、篠山……さすがにやり過ぎじゃあないのか?」



 傍にいた朴訥そうな顔でがっしりした体格の短髪の男が口を出した。

 良かった、全員がイカレている訳ではないらしい。


「松前、俺に意見する気か?」


 篠山がギロリと短髪の男ーー松前を睨んだ。

 松前は狼狽えながらも続ける。


「だって、どうすんだよこの後……殺すとか言うなよ?」


「痛めつけるだけだ。二度と俺に逆らえないようにな」


「別に逆らっちゃいないし、そんなん意味ないだろ。ちょっと冷静になれよ」


 俺も口を挟みながら考える。さて、この状況をどうすべきか。


 篠山が使ったのは『呪縛のメダル』……使用すると【呪縛】の効果を発揮して相手の行動を制限するアイテムのようだが、【魔法抵抗】持ちの俺がその気になれば食らってすぐにでも無効化できる程度の感触だ。

 ついでに言えば【魔手】も待機中なので、いつでもなんとでもできる状態だ。


 有無を言わせず篠山をぶっ飛ばすのが楽なのだが……


 不良にビビっていたことをバラされて引っ込みがつかなくなっているイキリ野郎なだけだからな。

 仲間の見てる前でぶっ飛ばすのもなんか可哀想になってきた。もっと恨まれそうだし。


 やるにしてもバレないように、だな。



「俺は冷静だ。笠木、お前のそういうところが嫌いなんだ。なんでも上手くいくとでも思ってるんだろ? そんなに世の中甘くねえって思い知らせてやりてえんだよ」


 お前に言われんでもこないだウォルズに思い知らされたばかりだよ。


「魔法を見せてやりたいところだが、一瞬で焼け死なれても面白くないな。コイツの威力を試してみるか」


 言いながら警棒を伸ばした。新品か。ダンジョンのために通販で買ったのだろうか。

 だが、今のコイツのセリフでこちらの方針も決まった。


「笠木! 篠山てめえ、ふざけんなよ!」


 山口が叫んだ。いい奴だわコイツ。

 篠山が警棒を振りながらゆっくり近づいてくる。


 そして膝から崩れ落ちた。



「…………へ?」


 誰かが間の抜けた声を出した。


 間合いに入ったところで俺が【瞬動】を発動して掌底を顎先にヒットさせて脳震盪を起こしたのだ。



 予備動作なしにトップスピードを出せる【瞬動】……今までいまいち活躍していないように感じるが、はっきり言って対人戦では無敵だ。


 人間の反射速度の平均は0.2秒と一般的に言われている。予測した刺激に対して行動を開始するまでの時間だ。


 ボクサーのパンチは標的への到達時点で時速40キロ。1メートルなら約0.1秒で到達する計算になる。【敏捷Lv4】の俺のパンチはそれより遥かに速い。


 そして、普通は振りかぶる予備動作と加速の必要があるが、【瞬動】を使えば必要ない。



 お分かり頂けただろうか。俺の【瞬動】パンチには普通の人間は反応できない。予測していなければなおさら、知覚すらできないということだ。



「おい……篠山?」


 倒れた篠山の顔を覗き込む。だらしなく涎を垂らして気絶している。

 あ、動けないはずだったな俺。まあいいか。


「……死んでる……!」


 俺がジョークを飛ばすと、みんな真っ青になった。


「嘘だ、嘘。なんか寝てるみたいだな。怒りが有頂天になって意識が飛んだんじゃないか?」


 俺が適当な事を言うと、平井が駆け寄ってきて確認する。


「おい、篠山? なんなんだよ……」


「まったく、こんなイカレた奴とは思わなかったな……」


 松前も溜息をついて、平井と二人で腕を肩に回して篠山の体を支えた。


「邪魔したな、俺らは帰るよ」


「気をつけてな」


 なんかぶつくさ言いながら篠山組は帰っていった。もう来なくていいぞ。



「いや、焦ったなあ。でもこのダンジョン、魔法がホントあるんだな……!」


「……笠木、なんかした?」


 動けるようになった山口が感動しているのを尻目に、滝田が俺に聞いてくる。俺は肩を竦めて見せた。


「あっ!」


「どうした?」


「宝箱の中身、持って行かれた……!」


 滝田が悔しそうに言う。俺はもう一度肩を竦めた。


「で、どうする?」


 二人は力強く頷いた。


「もちろん! 探索続行だ!」


「宝箱……! 次こそ……!」


 逞しい連中だ。

 俺もまだ調べたいことはあるんだが、こいつらと一緒だとなかなか難しいんだよな……




 枝道はすぐに行き止まりになっていたため、水路沿いの暗い道に戻った。

 他にも明かりのついている枝道がいくつかあり、大ネズミやスケルトン、大コウモリなどに何度か遭遇し、退治した。

 山口と滝田も戦いに慣れてきたようだ。目に見えて調子に乗っている。

 ……経験上、こういう時になんかあるんだよなあ。



「宝箱だ!」


 4つ目の枝道で宝箱を発見した滝田は、喜び勇んで飛びつくように開けた。

 俺は一瞬肝を冷やしたが、罠はないようだった。焦らせんなよ。


「滝田、罠があるかもしれんから勝手に開けんなよ」


 他では冷静なくせに宝箱を見つけると警戒心がどこかに行ってしまうらしい。

 最近のゲームは宝箱に罠があることが珍しいからな。せいぜいモンスターが化けてるくらいか。


「ごめん、気をつけるよ。……なんだろ、これ」


 滝田が持ち上げて見せたのは……短い棒の先に小さな鐘……ベル、か?【解析】してみよう。



『転移のベル 原初の迷宮の特定の場所に転移する』



「滝田! 使うな!」


「え?」


 遅かった。滝田はベルを振っていた。チリン、と高い音が鳴った。


 その途端、ベルから闇が溢れ……俺たちはあっという間に飲み込まれてしまった。


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