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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第二章 増えるダンジョン
23/48

22 地下3階

 

「白河! 逃がすな!」


「うん、【魔矢】(マジックアロー)!」


 白河の持つ杖から放たれた二筋の青い光の矢が、逃げようとする猿のような敵の背中に突き刺さる。敵はそのままもんどりうって倒れた。

 即座に俺が駆け寄り、とどめを刺す。猿はビクン、と一回大きく痙攣した後、動かなくなった。


「あー、やっと終わりか。こいつめんどくさいなぁ……」




 木・金は中間試験だった……

 すっかり忘れていた俺は水曜に必死で一夜漬けした。結果は考えたくもない。

 そして土曜。現実逃避するように白河と共に再び廃ビルを訪れている。


 このフロアは中央に広くて岩や柱などの障害物がある部屋があり、猿に似た生物が巣食っていた。腕は長いが体は小さく、表皮は岩のようにゴツゴツしている。


 こいつらは接近戦を避けて距離を取り、石を投げて攻撃してくる。その上残り一体になると逃げて仲間を呼びに行く。強いわけではないが、非常に面倒な相手だった。

 最初は3体だったが2回仲間を呼ばれ、今周囲にはやつらの死体が8体も転がっている。


 ===================

 ロックエイプ

 レベル 7 MP 0 / 0

 敏捷Lv1 投擲Lv1

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 俺からするとだいぶレベル差があるのだが、苦戦とは言わないまでもかなり手こずらされてしまった。

 白河が素早い標的を狙う練習にはなったか。


 しかし、やはり相手に合わせた戦い方は考えるべきだな。ゲームと違ってレベルを上げて物理で殴るだけでは通用しないのだ。


 さらに、定番の敵もいた。


 ===================

 スライム

 レベル 7 MP 0 / 0

 擬態Lv2 再生

 ===================


 こいつは普段は壁や天井を這いずっており、近くを通ると覆い被さるように落ちてくる。

 寸前に気配を察知して【瞬動】で回避したが、包まれてしまうと引き剥がすのは大変そうだ。


 核部分を破壊しないとすぐに再生してしまう。

 ……とは言え、動きはかなり鈍いのでちゃんと核を見極めて丁寧に突けば倒すのはそう難しくない。


 さらには、こいつだ。


 ===================

 フライングアイ

 レベル 9 MP 40 / 40

 気配察知Lv1 飛行

 呪縛(バインド) 空弾(エアバレット)

 ===================


 見た目は名前通り、蝙蝠のような羽の生えた目玉だ。実際かなりキモい。

 こいつは能力的には厄介そうに見えるが、鈍いので【魔矢】一発で沈むお客さんだ。【魔力】もないので魔法の威力が弱く、たいして怖くないのだ。

 遠距離攻撃がなかったらかなり面倒臭そうだが。


 こいつに加え、猿とスライムのどちらの敵にも命中率の高い白河の【魔矢】は非常に有用だ。いい買い物だったな。


 白河自身の成長も著しい。猿との戦いを終えて息を整えている白河をチラリと見て【解析】すると、今のステータスはこんな感じだ。


 ===================

 白河真帆 学生

 レベル 8 MP 25 / 70 SP 13

 気配察知Lv1 魔力Lv2 回復Lv1 敏捷Lv1

 体力Lv1 連射Lv1

 魔矢 障壁

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【体力Lv1】は自然に習得し、それ以外はアプリから取得している。

 戦闘方法のせいか素質のせいか、あるいは両方か。魔法関係のスキルを覚えやすいようだ。


 特筆すべきは上級スキル【連射】を取得できたことだろう。魔法を連続で放てるスキルで、MP効率の良い【魔矢】とは非常に相性がいい。

 俺は連続で使うような魔法はない。悔しくないぞ。


 ちなみに俺は。


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 笠木詠介 探検家

 レベル 18 MP 54 / 95 SP 22

 気配察知Lv3 剛力Lv1 頑健Lv2 敏捷Lv4

 軽業Lv2 体力Lv1 罠感知Lv1 魔法耐性Lv1

 回復Lv1 隠密Lv1 加速Lv1

 解錠 魔手 雷掌

 瞬動

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 まるで成長していない……!


 アゴ肉タプタプの先生もビックリである。

 どうやら低レベルな敵を倒してもレベルが上がらない補正がかかっているようだ。甘くないなあ。


 上級スキルをすぐ取れるようにSPを残しているのだが、取得リストには出てこない。悲しい。


 一応【投擲】のみ新しく出たのだがSP温存のために取得していない。自然上昇を狙って、地下5階で俺の窮地を救ってくれた【切り裂きの短剣】は毎回ぶん投げられている。ごめんよ。



「あっ、あのドア…… 休憩室だよね!?」


 猿の部屋から出て通路を歩くと、いつものような扉があった。猿との追いかけっこで疲弊していた俺たちは当然のように休んでいくことにした。




「詠介くん、紅茶飲む? アールグレイだけど」


「おお、もらうよ。サンキュー」


 白河はインベントリから水筒とマグカップを取り出し、紅茶を注いだ。休憩室に独特な香りが立ち込める。


「アールグレイっていい香りするよな」


「ベルガモットっていうオレンジの香りらしいよ」


 へー。知らなかった。

 そんな他愛もない会話をして朗らかに笑っている白河を見ていると目的を忘れかけてしまうな。いかんいかん。


 白河も本当に気を緩めているわけではなく、焦りを見せて俺に心配をかけないように振舞っているのだろう。




 休憩室で英気を養った後、この階層をきっちりと探索することにした。今日は土曜なので時間はたっぷりある。


 この階層は致命的な攻撃をする敵がいないため、比較的楽だ。特にフライングアイは倒しやすくレベルが高めなのでレベリングには丁度いい。猿は疲れるけどな。


 そんな感じで3階のマップをコンプリートした。

 宝箱は一つ。


 『頑丈な大剣 【強靭】 190$』


 うーん……あまり使う気にはならないが、俺のインベントリに入れておく。


 階段も発見したが、結局魔法陣は見つからなかったな。そうするともう一つの考えが有力になってくるが……



「もう18時だね……」


「随分時間食っちゃったな。よし、今日は帰ろう」


 俺たちは踵を返し、休憩室に向かおうとした。



 が。



 唐突に強烈な悪寒を感じ、辺りを見回す。

 石造りの迷宮の通路……

 それが一際暗く冷たく、霊気を放っている。


 帰還を考えて弛緩しかけていた意識が一気に覚醒する。

 この感覚は……!


「白河! 指輪!」


「えっ? あっ! はい!」


 白河が指輪の効果で姿を消すのを傍目でみながら俺は警戒を強める。

 冷や汗が頰を伝い、顎から床にぽとりと落ちた。


 プレッシャーは際限なく強くなっていく!



 俺は【斬魔刀】を握る手に力を込めた。


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