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そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第二章 増えるダンジョン
19/48

18 まほまほ

 


「わたしのお父さんが行方不明なことは……知ってる?」


 俺は少し躊躇ったあと、頷いた。


「ここのビルの会社に勤めてて……会社は引っ越したんだけど、その日に居なくなったの」


 このビルの上の階が空っぽなのは引っ越したからか。マリー・セレスト号的なミステリーかと思った。


「会社の方には事情を聞いてみた?いきなり社員が居なくなったら探すと思うんだけど……」


「社長さんはお父さんと昔からの友達で、もちろん探してはくれてたんだけど、このビルにはなにもおかしい所はなかったって。地下室の倉庫が片付け途中だっただけで」


 失踪してすぐの時は地下室に入れたのか。

 ダンジョンは後からできた……


「で、たまにここを見に来てたんだけど、今日来てみたら地下室が開いてたから……」


「様子を見ようとしたわけか」


 俺の言葉に、頷く。


「……ビックリしたけど、こんなゲームみたいなダンジョンがあるならお父さんがここに入って出てこれないでいるのかも」



 その可能性は……あるかもしれない。


 俺の脳裏に浮かんだのは、地下5階でウォルズを倒した後に出てきた幽霊のような男。禍神の敵対者。構築者。年恰好は合致する。


 先程の話によると、ダンジョンが出来たのは白河のお父さんが失踪してしばらく経ってからだ。彼はダンジョンに迷い込んだのではなく、ダンジョンを作っていた。


 そして……彼は俺にメッセージを送ってきた。白河の居場所を伝え、『頼む』『本来、あまり介入できない』と。

 ダンジョンのルールに反して、かなり無理をしたのかもしれない。娘を助けるため、と考えると合点がいく。



「……会ったかもしれない」

「えっ?」


 白河は一瞬目を丸くして……縋り付くように俺の腕を掴んだ。


「どこで!? ……教えて!」


 しまった。つい口に出してしまった。

 慌てて口をつぐむが、後の祭りだ。

 せがまれて仕方なく、一部始終を話す。



「地下5階……禍神……」


「姿だけだし、声も出せなかったみたいだった。今から行ってもいないと思う」


 考え込んだ後、縋るように言ってくる。


「でも、もっと奥に行けばひょっとしたら……」

「ダメだ」


 俺はピシャリと遮った。白河は食い下がる。


「やっと見つけた手掛かりなの! 見ないフリなんてできない!」


「ダメだ、危険過ぎる。……俺だって死にかけたんだ」


「わたし一人で行く!」


「なおのことダメだ! 見捨てる訳に行くか!」


「わたしの、お父さんを、見捨てられない!」


 俺と白河は睨み合う。

 白河の目に涙が滲んでくる。

 ……あー、ダメだ。勝てないよなこれ。


「……わかった。俺が見てくる。可能なら連れ帰る。それでいいか?」


「……絶対ダメ。無関係の笠木くんにだけそんなことさせられない」


 平行線だ。

 どうしろって言うんだ。


「……笠木くん、どうせ奥に行くつもりだったんじゃない?」


 ギクリ。

 俺の表情が一瞬固まった。


 そうはっきり決めていたわけではない。

 だが、きっとこの件がなかったとしても、俺はダンジョンに挑んでいただろう。


 危険は確かにあるのだが、このダンジョンの謎を放置して普通に生活などできない程度には関わってしまった。


 何より……認めよう。俺はダンジョンに惹かれている。日常生活では決して味わえないスリルに昂ぶっている。死にかけたせいでどこかおかしくなってしまったのかもしれないな。


 白河は俺の動揺を見透かしたようにニヤリと笑う。


「笠木くんが一人で行くんなら、わたしも一人でも行く。戦う必要があるなら、そうする」


「それはダメだって……」


「なら、連れてって。一人より二人の方がいいでしょ」


 あ、これ、「はい」を言うまで進まないイベントだ。


 >「いいえ」

「そんな、ひどい……」

「連れてって」

 >「いいえ」

「そんな、ひどい……」


 みたいな。


 俺は嘆息して答えるしかなかった。


 >「はい」


「やったあ、ありがとう!」


 白河は満面の笑顔を見せた。





「無理はしない、まずは……」

「レベル上げね!」


 おう、分かってるな。実はゲーマーなのか?

 疑問が顔に出ていたのか、白河が言う。


「お父さん、ゲーム開発者だもん。わたしもやってる」


 そう言いながらスマホを見せてくる。

 そこにあるアイコンは……俺のスマホにも入ってる、『ダンジョンルーラー』だ。

 マジかよ。マイナーゲーだと思ってたのに、世界狭いな。


「なら、基本はわかるよな。まず浅い階層で鍛える。扱える武器は……」


 ないよな普通。

 あ、そういえば……


 インベントリから【術師の杖】を取り出して、手渡した。


「……魔法系ビルドでいこう」

「魔法あるの!?」


 うわ、目ぇキラキラしてるわ……

 ただ、魔法を習得するためのスクロールは余っていない。ショップにあるだろうか。



 ===============

 1788$

 パン        10$

 水         10$

 カップ麺      20$

 棍棒        40$

 ナイフ       80$

 長剣        150$

 槍         200$

 両手剣       250$

 甲冑        500$

 ヒールポーション  600$

 マジックポーション 800$

 【魔矢】の巻物   1500$

 ===============


 ……うまい具合にあるな。

 操作してないだろうな、構築者。



 ウォルズ戦で使ってしまったヒールポーションを補充できなくなるのは痛いが、【魔矢】(マジックアロー)の巻物を購入した。


 これ、地下5階でシャワーのように浴びせられたヤツじゃん。嫌な記憶が蘇るが……まあ、いい。


 早速スクロールを広げて、白河の手を置かせる。

 スクロールの魔法陣が光を放ち、白河の手に吸収された。


「これでわたしも魔法使い……」


 ウットリしたような声で言う白河に、ふと思いついたことを言ってみる。



「魔法使い真帆…… 略して『まほまほ』だな」


 杖で頭を突つかれた。解せぬ。


表現をマイルドに修正。

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