表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そのへんのダンジョン  作者: どっすん権兵衛
第一章 始まりのダンジョン
1/48

1 そのへんのダンジョン

とりあえず始めてみます。

最初は毎日更新予定。

 


 ーーどう見ても。




 俺ーー笠木詠介は辺りを見渡した。


 そこは薄暗い通路だった。


 幅は4メートルほどか。

 不揃いなレンガの壁、欠けた石畳。壁には松明が間隔を開けて並んでいる。

 後ろをチラリと振り向くと、同様に通路が伸びている。



 どう見てもーーダンジョンだ。


 なんだ、夢か。

 俺は苦笑する。最近スマホでやっているゲーム、「ダンジョンルーラー」のイメージそのままだった。



 カタ…カタ…



 前方からそんな音が聞こえる。

 息を飲み、目を凝らした。


 徐々に視界へ入って来たのは、剥き出しの人骨だった。右手には剣が握られている。

 スケルトンか。定番だ。


 それは剣をゆっくりと振り上げながら、こちらに歩み寄って来た。



「うぉい!?」



 それまでからは想像しなかったスピードで剣が振り下ろされ、間一髪避ける。

 反射的に鞄を振り回し、スケルトンの肋骨あたりに叩きつけると、壁まで吹っ飛んでいった。


 その隙に、スケルトンが取り落とした剣を拾い上げ、反撃する。


「おおお!」


 剣はスケルトンの側頭部に直撃し、頭蓋骨は砕けながら通路の反対側に転がっていった。

 骨の体は糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。



 俺は剣を残骸に向けたまま、逆側の壁に縋るようにへたり込んだ。

 息がいつの間にか荒くなっていた。



「夢、じゃ、ない……?」



 今になって震えがやって来た。


 現状認識する間もなかったのが幸いだった。

 よくよく考えればこんな薄暗いところで骨が襲ってきたのだ。悲鳴を上げて腰を抜かしてもおかしくはなかった。



 何故こんなことに……



 俺はここに至った経緯を思い返していたーー




 ーーー



 五月。


 高校二年になって二ヶ月が経とうとしている。


 今日の様な陽気だと、もう詰襟の学生服では汗だくになるので脱ぎっぱなしだ。

 ホームルームが終わった後、いつものようにさっさと教室を出るべく、椅子に掛けていた学生服と鞄を引っ掴んで席を立った。


「笠木! 掃除当番でしょ!」


 くそ。


 ブレザーの制服を着た女子ーークラスメイトの笹島和歌子に速攻で呼び止められてしまった。

 ショートヘアの活発な娘だ。陸上部だったか?

 細く引き締まった体をしているが、出るとこは出ている。

 走るには邪魔そうだな。


 一年の時、初日に「古風な名前だね」と言ってしまって以来、敵視されているようだ。

 バックれようとした俺を睨みつけている。大魔王からは逃げられない。


 仕方なく渡された箒と塵取りを受け取る。

 適当にやって早く帰ろう。やりたいゲームがあるのだ。


 廊下を掃くべく教室を出ると、同じ様に箒を持った女子が隣の教室前の廊下を掃除していた。

 心ここに在らず、といったふうで同じ所を延々と掃いている。


 白河真帆。去年のクラスメイトだ。


 肩甲骨あたりまでの髪をうなじで纏めた、垢抜けない感じの小柄な娘だ。素朴な可愛さにより隠れファンがいるらしい。

 俺もファンではないがかわいいとは思う。


 以前はもっと明るい娘だったと思ったが……


「今白河がいたんだけど……最近あいつおかしくないか?」


 俺は教室に戻った後、小声で笹島に聞いた。去年も同じクラスだった笹島は、白河とは出席番号も隣同士でよく話していたはずだ。

 笹島は声を潜めて返答した。


「……お父さんが、行方不明らしいの」


 まずい話だった。

 バツの悪い気分になりながら、俺は掃除に戻る。


 ゴミ集めを終わらせた俺はゴミ箱を持ち、ゴミ捨て場に向かう。

 すると、またも廊下で白河に鉢合わせる。

 暗い顔で俯いてる白河に、思わず声を掛けてしまった。


「……大丈夫?」


 白河はハッと顔を上げこちらをチラリと見やると、少しの沈黙の後、顔を背けるように頷いた。


「笠木くん。……うん、平気。ありがと」


 俺は、そっか、と返すしかなかった。

 なにも出来やしないのだ。



 掃除を終え、校舎を後にした。


 俺は一年の時は先輩に無理やり入れられた柔道部だったが、この春めでたく部員不足で廃部になったのだ。

 今は立派な帰宅部である。


 いやー、部活で青春の尊い汗を流すつもりだったのになー。残念だわー。


 などと心の中で誰かに言い訳しながらそそくさと家路についた。


 どうせかわいい娘が声を掛けてくるような下校イベントが発生することはないのだ。一緒に帰って噂とかされると恥ずかしいもんな。

 帰ってゲームでもした方が有意義だ。


 駅までの近道の裏路地に入る。


 この路地には廃墟のようなボロボロのビルがある。

 元からボロだったが、ここのところ人の気配もなく、一段と荒れ果てたように感じる。入っていたはずの会社が夜逃げでもしたのだろうか。


 ガレージはシャッターが開きっぱなし。ガレージの中は地下に続く階段があり、その奥には金属製の扉があった。

 最初見た時はダンジョンっぽくて興奮したが、いつしか見慣れてしまった。


 そんな廃ビルの脇にある自販機の前で立ち止まる。

 ここは今時珍しく100円でジュースが買える。


「あっ」


 財布から小銭を出したところで100円玉を取り落とした。


 硬貨はコロコロと、ガレージの中に入っていってしまった。

 金属音を立てながら階段を転がり落ちていく。

 俺は舌打ちしながらそれを追って階段を降りる。


「ん?」


 そこで妙なことに気づいた。

 いつもあった扉がない。

 階段の奥は黒々とした闇が澱んでいる。


「真っ暗…… 真っ黒?」


 その中へ手を伸ばしーー



 ーーー




 思い返したところ、あまりにしょうもないところで記憶が途切れていることに気づき、俺は額を押さえて溜息をついた。


 まさかほんとにダンジョンだったとは。

 あとそういえば100円回収できてないぞ。



 なんとなく落ち着いたようなので今に目を向けることにする。


 まずは時刻を確認しよう。意識が途切れているのだ、体感では数分だが下手すると数時間、あるいはそれ以上経過している可能性もある。

 そして、助けが呼べるなら呼ぶべきだろう。


 ポケットからスマートフォンを取り出した。



「んん…… なんだこれ?」


 そこには妙なものがあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ