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渇夢を星夜に  作者: つなまぐろ
夢の死骸
24/47

決めたんだ

 放課後、公園へ足を運ぶ。

 冬の冷たい空気が、昼間の決意を何度も思い出させる。


 「お、来たな少年!」


 奏さんが、相変わらずの白衣姿で手を振る。

 僕は小さく笑って駆け寄った。


 「……提出しました。進路票」

 「ほう、それはめでたい! これで晴れて君は『星に生きる人間』だな」




 「まだこれからが本番ですけど……でも、怖いです。でも、嬉しいです」


 素直に吐き出した言葉に、奏さんは大きく頷いた。

 「それでいい。それが人間だ。怖さと嬉しさが混ざってるのが、生きてる証拠だよ」




 「……先生にも『お前ならできる』って言われました。でも、正直に言うと、信じきれないんです、自分のこと」


 奏さんは望遠鏡を調整しながら、ふと手を止めた。


 「君は、自分を疑うことで成長する。『できる』と簡単に信じきるより、何度も悩んで、試して、泣いて、それでいい。星もね、一度も迷わず輝いてるわけじゃないんだ」


 「え……?」

 「君が見ている星の光は、何百万年もかけて地球に届く。途中で何度も障害に遭い、曲げられ、散りそうになりながら、ようやく届くんだ。それでも光ろうとする……それが、星の生き様だ」




 (……僕も、そんなふうに……)

 「進むと決めた君は、もう十分強い。でも強いだけじゃなく、脆くていいんだよ。


 視界が滲んだ。

 涙が一筋、頬を滑り落ちる。




 奏さんはそっと肩に手を置いた。

 「これから何度も、進路票の文字を思い出す日が来る。でも、そのときにまたここへ来い。星は君を裏切らない。私も、ここで待っているからな」




 「……はい」




 夜空を見上げると、淡い星々が少しずつ瞬き始めていた。

 恐怖もある。でも、その奥にあるかすかな希望が、微光のように胸を照らしている

 (未来は怖い。でも、僕は僕を選んだ。これから先、何度立ち止まっても――また、歩き出せる)

 帰り道、進路票に書いた「理系」という文字が頭に浮かぶ。


 それはもはやただの文字じゃない。僕がこれから生きる、航路の始まりだった。



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