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最後の四十七士  作者: ロッド
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助太刀

 吉右衛門の目の前で言い争いが起きていた。

 お江、それに与五郎と呼子衆の弥助だ。

 いや、言い争いというよりもお江が一方的に与五郎と弥助に噛み付いている格好だ。

 言い争いの種は、決闘の際の助太刀だ。


「私がやる!」


 お江がそう言って譲らないのだ。

 最初は与五郎と弥助が助太刀をしよう、と話がまとまりかけたのだが・・・

 お江が決闘の話を聞きつけて与五郎の元に飛び込んできた。

 そして強行に反対し始めた。


父上(おやっどん)に任せておけぬ!」


 確かにお江は強い。

 与五郎が知る範囲で、お江より強い武士は島津家中にいない。

 国境を守る呼子衆でさえ、お江より強い者はいない。

 少なくとも一対一で勝てそうな者が見当たらない。

 だが女であるお江が助太刀になる、というのは問題がある。


「・・・外聞が()しゅうなるだけじゃ!」


「全員、討ち取れば外聞など関係ない!」


 いや、この場合は出水郷内に面目が立たないのだが与五郎もそこまで言えない。

 与五郎を始めとした武士、そして呼子衆までもが立つ瀬を失いかねない事態なのだが・・・

 口にするには自尊心が邪魔をしていた。

 呼子衆の与右衛門、治五郎、佐平次もお江の前では口を出さない。

 説得は弥助に投げっぱなしである。

 剣の腕前は勿論、口論でも勝てると思う者はいなかった。


「・・・申し訳ござらぬ」


「「「ッ?」」」


 口論の中、吉右衛門が初めて口を開いた。

 皆が動きを止め、その視線が吉右衛門に集中する。


「・・・助太刀は無用でござる」


「何じゃと?」


「・・・拙者にお任せを。考えがございますゆえ」


「・・・」


 これにはお江も口を閉ざすしかなかった。

 吉右衛門とは急激に打ち解けているお江にもその考えが如何なるものか、分からない。

 その目に迷いが見えなかった。

 ・・・吉右衛門の剣の腕前をお江は良く知っていた。

 上杉家の者達がどれ程の腕前であるのかは知らない。

 だが、三名の武士を相手に吉右衛門が勝てるとは思えなかった。


「お江、分かるな?」


「・・・」


 不機嫌な様子を隠そうともしないお江。

 父である与五郎には不安しかなかった。


(・・・決闘の当日に乱入せねばよいが・・・)


 実質、このお江を単独で押し留められる者はいない。

 与五郎は本気で呼子衆を全員、動員することを考えざるを得なかった。

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