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最後の四十七士  作者: ロッド
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鬼女

 朝熊の弥助。

 六月田の与右衛門(ようえもん)

 関外の治五郎。

 薩摩の国境を守る屈強の者達がお江の前で食事をしていた。

 ・・・お江の視線は彼等に向けられたままだ。

 味など分からなかった。


(・・・不覚もいいところじゃな)


 弥助が僅かに(こぼ)した言葉にお江が反応する。

 殺気。

 否、そう表現するのも違う。

 狂気であった。


(治五郎はお江があのような女子(おなご)なのを知っておったのか?)


(・・・幼馴染みでしたから。弥助(さぁ)もご存じなかったので?)


(あれ程とは知らなんだ!)


(・・・(おい)もあそこまでとは)


 お江がお盆を下げたその瞬間。

 弥助と与右衛門は治五郎を問い詰め始めた。


(・・・昔から男勝りやったが・・・)


(それにしても異様じゃ! 丸山(さぁ)の仕業か?)


(丸山(さぁ)が江戸に行ったのは十一年前、お戻りになったのは三年前じゃぞ?)


(まさか三年であれ程までに? あり得ぬ!)


(・・・まさか)


 言い淀む治五郎。

 思い当たる事があるとしたら?

 それはお江の男衆に対する嫉妬の念であった。


 治五郎とお江が一緒に野山を駆けまわっていたのは十歳辺りまでである。

 当時のお江はあらゆる点で治五郎を上回っていた。

 野山を駆けても、刀を手にしても、組み合ってそうであった。

 治五郎は、それ以降は呼子衆に預けられ共に遊ぶ事はなくなった。

 たまにお江の姿を見掛ける事ならある。

 元々、身分が違っていたし、そうなるのも当然と思っていたのだが・・・


 お江が男であったなら、と治五郎も思ったものである。

 周囲の評価も同様であった。

 そしてお江自身、男に生まれなかったのを嘆く事しきりであったのだ。

 それ故か、子供がやるにしては苛烈な鍛錬を自らに課していた。

 ・・・もし、当時のお江がそのまま、自らを鍛え続けていたのだとしたら?

 そう思うと戦慄するばかりの治五郎であった。


「・・・何を話しておる・・・」


 三人はそこに鬼女を見た。

 気配を断っていたのだろうが、ここまで近寄られていたとは!


「・・・治五郎、余計な事を喋ると・・・分かるな?」


 治五郎は頷くしかなかった。

 圧倒的な強者を目の前にしてはそうするしかなかったのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お江さんまるで女キース?w 面白いです
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