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最後の四十七士  作者: ロッド
17/36

語り部

(・・・これは・・・どうしたらいいのだ?)


 吉右衛門の目の前には三人の武士。

 丸山与五郎、片山久兵衛、南園平十郎だ。

 泣いていた。

 三人が三人とも、泣いていた。

 号泣であった。

 吉右衛門の隣に座る釈真は平然としているというのに。


 吉右衛門が語ったのは赤穂城の明け渡しから吉良邸討ち入りまで。

 それなりに丁寧な語りであったと思う。

 途中で与五郎達の問いに答えながらであったから、かなり時間が掛かっていた。

 既に陽が沈んでいる。


「・・・父上(おやっどん)、夕餉じゃぞ?」


「・・・む、そうか」


「お客人もどうぞ」


 お江が三段重ねのお膳を運んで来ていた。

 お盆に載るのは一汁二菜で、与五郎と釈真、吉右衛門の前に置く。

 それを見て片山久兵衛と南園平十郎は涙を拭い立ち上がろうとしていた


「久兵衛(さぁ)、平十郎様(さぁ)もどうぞ」


「「・・・む」」 


 お江の言葉は丁寧であったがその目付きは鋭かった。

 片山久兵衛も南園平十郎も座り直すしかなかったようだ。


(・・・何とも奇妙な・・・)


「・・・今の娘御は?」


「お江は(わし)の娘じゃ」


 吉右衛門は横目で久兵衛と平十郎を見た。

 先程まで涙を流していたとは思えない狼狽振りである。


「久兵衛、平十郎。今宵は語り明かそうか?」


「・・・うむ」


「吉右衛門の話を肴に飲みたい所じゃのう」


「・・・そうじゃな、用意させようか」


 どうやら食後も語る事になりそうだと吉右衛門は覚悟した。

 同時に久し振りの酒にありつけそうに思えた。

 与五郎の娘よりもそちらに気を取られる吉右衛門であった。


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