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最後の四十七士  作者: ロッド
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詮議

(・・・これはどうしたものか)


 その日、吉右衛門は丸山与五郎の屋敷にいた。

 釈真和尚のお供であったのだが、様子がおかしい。

 武士が二名、同席していた。

 片山久兵衛、それに南園平十郎と紹介されたが共に訛り言葉ではない。

 与五郎と同様、関所勤番の武士であるのだという。

 問題はその視線であった。

 明らかに、好奇の目をしている。

 それは与五郎も、そして釈真和尚も同様であった。


「お(ごう)よ、酒を持って参れ」


 与五郎がそう言うと控えていた女が目礼して座を退いた。

 そのお江という女の視線も気になる。

 何故か、睨まれてしまっていた。

 それに久兵衛と平十郎がお江を見る目も少し気になっていた。

 何かに恐怖するような感じがしていた。


「さて・・・そろそろ御身の話を聞いてみたいが・・・如何じゃ?」


「拙者の、でございますか?」


「いかにも、寺坂吉右衛門(・・・・)殿」


 与五郎は普段から吉右衛門を山右衛門と呼んでいる。

 それを吉右衛門と呼ぶ、その意味は?

 聞くまでもなかった。

 彼は赤穂浪士であった事を知っているのだ。

 吉右衛門自身の詮議をするつもりであるのに違いない。


「儂は江戸の薩摩藩邸で勤番をしておった時、吉良邸仇討ちの報を殿に言上した事がある」


「・・・」


「あれは痛快であった。近来稀に見る、な」


「・・・何故、拙者が赤穂浪士と?」


「最初に運び込まれた際、譫言(うわごと)でな」


 譫言で?

 吉右衛門には当然、覚えがない。

 一体、何を呟いていたのであろうか?


「話したくない事があれば話さずともよい」


「・・・」


「まずは身の上話から聞いて参ろうかの」


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