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最後の四十七士  作者: ロッド
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釈真

「では釈真和尚、後は頼みますぞ」


「承知」


「山右衛門の件、いずれ知れ渡ると思うが・・・まあ仕方あるまい」


「何、ご心配には及びますまい」


 釈真がカカと笑い飛ばす。

 先程、本堂で奇声があったのは聞こえていた筈だが気にも止めていないようだ。

 一方の与五郎も全く気にする様子がなかった。


「・・・優秀な者が付いておるようじゃしの」


「・・・和尚」


 その言葉に与五郎も苦笑するしかなかった。

 呼子衆が釈真に気取られるとは・・・とも思う。

 この釈真、元々は呼子衆の頭目の息子であり幼少の頃から厳しい鍛錬を重ねている。

 だが地頭の命で剃髪し僧侶となって以降は、呼子衆としての鍛錬はしていない筈であった。

 与五郎はつい、聞いてみたくなっていた。


「和尚の見立ては如何(いかが)か?」


「・・・死にたがっているようにも見えるが・・・はてさて」


 禿頭をかいて釈真は困ったような顔をした。

 だがどこか楽しそうにも見える。


「拙僧は御仏の教えに従い迷える者には道を指し示すのが役目ですからの」


「ほう」


「何、悪いようにはならぬかと」


「・・・左様であるか」


 与五郎としても釈真和尚に任せるしかなかった。

 野間之関で預かる訳にもいかないからだ。

 それにこの和尚を信頼してもいる与五郎なのであった。





(・・・丸山(さぁ)


 善光寺の山門を出て暫くすると与五郎は足を止めた。

 周囲に誰もいない筈だが囁き声が聞こえていた。


「和尚には悟られておったようじゃな。だが叱責には及ばん」


(・・・申し訳なく)


「よい。それよりも吉右衛門・・・いや、山右衛門じゃ。目を離すな」


(・・・承知)


 一瞬だけ獣の気配がして、すぐに消えた。

 そしてすぐに思考が切り替わっていた。

 与五郎にとって当面の問題はまだ話を通していない同僚をどう説き伏せるかであった。

 ・・・心配はしていなかった。

 虚偽が通じるような者達ではない。

 既に話をしてある者達と同様に、包み隠さず話すつもりであった。

 例え地頭が相手であろうとも、薩摩藩主島津吉貴が相手であろうとも変わらない。

 それが最良であるのだと与五郎はそう踏んでいたのである。

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