表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第一部:元老人は蒐集欲を抑えない
77/591

幕間:滑稽-2

 それは何の前触れもなく、突如として起こった。


 面談室を煌々と照らしていた燭台の炎が消え、部屋が暗黒に包まれたのだ。


 スーベルクは一瞬何が起こったのか理解出来ず固まる。自身の正当性を熱弁している最中に起こった予想だにしていなかった暗転に脳の処理が追いついていないでいた。


(な、にが?)


 少しの間を置き、異常事態であると最低限の理解に辿り着くと、全身を冷や汗が一瞬で濡らし、思わず口から声が出る。


「こ、これは一体何事だ!? 何が起きたのだ!!」


 面談室に控えていた使用人達も同様に戸惑いの声を漏らし場は混乱し始める。


「ええい貴様等!! 無様に喚いていないで状況を確認せんか!! 今は大事な面談をしておるのだぞ!!」


 その言葉にハッとなった使用人達が暗がりの中手探りで面談室の扉を開け、走り去って行く。スーベルクもまたこの混乱により客人であるディーボルツの存在を無視していた事に思い当たり、急いで体裁を繕う。


「も、申し訳ありませんモンドベルク公!! ただ今原因を究明しておりますので暫しの間ご辛抱下さい!!」


「ふむ……」


 こんな事態にも一切その姿勢を乱さないディーボルツは少し思案するかのように顎髭に手を当てる。


「面談中に起きた突発的な暗転……。もしこの部屋だけでなく屋敷全体がこの様な状態であれば……。スーベルク殿」


「は、はっ! 何でございましょうか?」


「私の推察が間違っていなければ恐らくこの暗闇、人為的な物によるものだと思われる」


「人為的……、でございますか?」


「左様。となれば必然、この暗闇を利用する輩が侵入したという事になる」


「輩の侵入…………。──っ!? まさか!?」


 スーベルクはディーボルツの事など御構い無しとばかりに一目散に面談室の扉へと手を掛ける。しかし、


「おや、スーベルク殿、どちらに行かれるのですかな?」


 咄嗟に出そうになった舌打ちを理性でなんとか堪えながら、スーベルク徐々に暗闇に慣れてきた目でディーボルツに振り返り、無理矢理作り笑いを浮かべる。


「い、いえ……。ただ賊が侵入したとなれば私自身が出向いて指揮を取らねば……」


「何を言うスーベルク殿。其方の様な御仁が自ら危険な場に出向くのは感心しませんな。それに先程この部屋に案内された際に見かけた多数の警備兵、お見受けするにこの国随一の実力者を集めた民間警備ギルド「白鳥の守人」が警備にあたっているのであれば十分ではないですかな?」


「で、ですがこの屋敷に一番詳しいのは私でして……」


「彼等とてプロ。既にこの屋敷の内部構造は把握済みと考えて良いでしょう。それにスーベルク殿。貴族とは常に堂々と構え、余裕を見せているもの。そんな貴族である貴殿が慌てていては下の者に示しが付きますまい?」


「ぐっ……、お、仰る通りで……。流石はモンドベルク公、勉強になります……」


 歯噛みしそうな感情を必死に抑え、笑顔を表情に貼り付けながらゆっくり元の位置に座り直すスーベルク。一刻も早く書斎に眠る数々の証拠の無事を確認したい気持ちを押し殺しながら、雇った警備兵達でなんとか賊を鎮圧してくれる様心の中で祈り、スーベルクは再びディーボルツとの面談に勤しんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ