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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第一部:元老人は蒐集欲を抑えない
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第六章:貴族潰し-22

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 スキル名:《焼失》


 系統:補助系


 種別:スキル


 概要:炎に対する燃焼率を高めるスキル。自身が行使する炎に関連したスキルの燃焼率を上げる。

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 ふむ、《炎魔法》を覚えた私には結構有用なスキルなのではないか? 単純に戦闘力が上がるというのは喜ばしい。


 さて、それはさて置き。


 私は改めて金庫へと向き直る。そこには最早一般的な金属の箱と化した金庫がどことなく悲壮感を漂わせている。


 私は懐から父上より受け取った万能鍵を取り出し、金庫に備え付けられた鍵穴へと差し込む。すると万能鍵はその形状を変形させ、遂にはその金庫を開けるのに適した物へと落ち着く。


 それを確認した私はそのまま万能鍵を回す。すると金庫はなんの抵抗もなくガチリッと音を立てて開錠し、その分厚い金属の扉が開く。


 一応この金庫にはダイヤルも付いており本来は暗証番号をダイヤルで入力する必要があるのだが、この万能鍵には関係ない。施錠された物を問答無用で開錠させる。それがこの万能鍵に封じられた《開錠》の権能。まったく便利この上ないな。


 開いた金属に燭台を向け、その中身を確認する。中には二段の棚と引き出しが備え付けられており、棚には少ないながらも幾つかの書類が収められている。


 積まれた書類を上から手に取り、燭台で照らしながらざっと目を通す。そこにはスクロールや武器類の横流しや密輸入の記録。スーベルクの交友関係者の個人情報や弱味がまとめられた書類。そしてこの国の地図や防衛戦力の詳細なデータ等の様々な証拠書類の数々が記されていた。


 これは……。こうなるとスーベルクはもはや逆賊だな。国家転覆なんて大仰なものではないだろうが、明らかな国家反逆が認められる。これを公表すればスーベルクは確実に破滅するし、もしかすれば死刑宣告だってされる可能性が高い。


 まあ、今更スーベルクに同情などしない。自ら引き起こした火種だ。それが手に負えない程に炎上したとして自業自得。私にはなんら痛痒もない。


 書類を全て懐に仕舞い込み、この場を早々に立ち去ろうと立ち上がる直前、金庫内の引き出しを見ていない事に気が付く。まあ、もう証拠は十分に手に入れたし、これ以上は荷物になってしまう為不要と言えば不要なのだが……。


 私は好奇心に負け、金庫内の引き出しを開ける。するとそこには一つの小さな木箱が収められていた。飾り気のない、しかし丁寧に仕上げられている木箱はこの装飾だらけの書斎に少しだけ浮いているとさえ感じる。その木箱を手に取り、《罠感知》で罠が無いのを確認してフタを開ける。そこにはシルク生地に包まれた一つ宝石が収められていた。


 宝石は虹よりも複雑な様々な色によってグラデーションが掛かっており、ジッとみつめていると目を回してしまいそうになる。燭台を近づけてみるとそのグラデーションは更に複雑に入り混じり、一見とは違った印象の色味を帯びる。


 なんだ、これは? 宝石……、なのか?


 私は宝石の様な物を手に取る。すると驚く事に、それはほんのりと熱を帯びており、触っていると不思議と心地良い温みを感じるのだ。


 これは、ただの宝石なんかじゃないな。


 そうして私は迷わず《解析鑑定》を発動させ、その宝石のようなものを調べる。


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 アイテム名:主精霊の涙


 種別:エレメンタルアイテム


 概要:主精霊が消滅する際にごく僅かな確率で濃い魔力と結び付いた事によって生まれる精霊結晶。これを所持している者には精霊の加護が与えられる。

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 …………うむ、詳しくはわからないが、とんでもなく貴重な代物であるのは理解出来た。


 精霊……。本で読んだ事があるが、まさかコレが……。


 精霊とは、私達人族の様に確固たる「文明」を築いたりしない知的生物の一つ。


 肉体を持たず、霊的エネルギーに似た体を持ち、見た者によってその姿形を変容させる生命体。


 文明との交流はほぼ無く、それぞれにコロニーを独自で作り、この世界の大地を流れる〝地脈〟と呼ばれる巨大な魔力の奔流からエネルギーを得ているらしい。


 そしてそんな数少ない交流を持った者には通常の魔法とは別系統の魔法を行使する事が出来るという。


 私がこの話を知ったのは四つの時。その時点で好奇心が抑えられなかった私は早速地図やら資料やらを大量に広げ精霊のコロニーがある場所を探した。


 しかし、いくら探しても一切のヒントすら見付けられず敢え無く断念したのをよく覚えている。


 だがコイツがあれば何か進展が見込めるかもしれない。よし、コイツは私が有効活用しよう。


 そう思い主精霊の涙を元の箱に戻し、同じく懐へと仕舞う。


 そもそもだ、スーベルクが捕まり没落してしまったら恐らくコイツは押収されてしまう。そうなればもう二度と手には入らないだろう。今、この場でコイツを手に出来たのは僥倖、持っていかない手はない。


 私は立ち上がり、何か忘れ物はないかと軽く辺りを見回す。すると同じタイミングで書斎の外から複数の足音がこちらに迫ってくるのを耳にする。


 おっと、少し長居し過ぎたかな?




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