第一章:四天王の華麗なる艱難-11
「──……ホントに連れてくのか?」
「だーって、しょーがないでしょ? 連れてかなったらいつまでもボクの服の裾離してくんないんだからー」
「ブルルンッ!!」
翌日。特殊個体ゴーレムが徘徊する洞窟遺跡に向かうためボク等三人は森の入り口に集合した。
道のりは獣道で多少歩きづらくはあるものの、距離的にはそこまで遠くはなく簡単な登山程度の労力で到達する事が出来るみたい。
だから別に、ボク等だけで行くのに支障はぜーんぜん無いんだけど……。
「ねー竣驪? ホントーに一緒に行くの? ボク等だけならまだしも、キミだと道としちゃー狭いから歩きにくいよ?」
「ブルルンッ!」
このとーり、竣驪が一緒に行くんだと一歩も譲らない。
昨晩ご飯あげるついでに深く考えずに竣驪に予定を伝えちゃったんだけど、それが良くなかったのかなー?
一晩、彼女なりに色々考えたみたいな雰囲気を感じるんだよねー……。
「いやまぁ、オレとしちゃ荷物持ってもらえるから楽で良いんだが……。このデケェ馬、お前等のってワケじゃないんだろ?」
「はい。ボスの愛馬で名前は「竣驪」。特別に貸していただいた大事な馬です」
「しょーじきな話、ボスからは最近体調が良くないって聞いてるからあんまり危なっかしーとこに連れてきたくないんだけどなー」
旅の道中は、側から見た感じ体調不良は感じられなかったけど、ボスの見当違いってワケでも無いだろうから多分我慢してんじゃないかなと思う。
下手に心配されたくないって気丈に振る舞って強がるところとか、ホント人間くさいよなーこの子。
「……因みになんだが」
「うん?」
「コイツやたらデカイし見るからに賢そうだが……別に魔物化しちゃいないんだよな?」
え? 魔物化?
「してるワケないじゃないですか。もしそうなら、少なくとも貸して下さった時点でボスから一言あるはずですし」
「確かに色々規格外な子だよー? 下手すりゃ弱い魔物くらいなら倒せるかもしんないけど、さすがに魔物ではないよーっ!!」
「ブルルンッ!! ブルルンッ!!」
ホラ。竣驪も「失敬な!!」っていなないてる。まったく、弱い根拠で何を言い出すんだか。
「ふーん……。そんなら構わねぇんだが……」
何やら腑に落ちない様子のオッサンは竣驪から視線を外しながら小さく頭を傾げ「でも魔力が……」と小さく呟く。
これでもオッサンって魔物討伐ギルドの調査員だから、何かしらのスキルで竣驪の様子でも見たんだろーけど、一体何が見えたってんだろー?
……もしかして、竣驪の体調不良と何か関係してる?
「……ブフッ」
竣驪も竣驪でなんか隠してるような素振りだし……。あー、討伐前に余計なことに気ー回したくないんだけどなー。
「どうかしました?」
「あーうんっ! なんでもないよっ! 気にしないでっ!」
「……」
あんまり曖昧過ぎることを教えるワケにはいかないよねー。
顔にも態度にも出さないけど、下街で他の子達より実戦ちょっとかじったとはいえ、同期無しの遠征任務でガチガチだし。
今は余計なことは言わんとこーかな。
「──んじゃ、ヤツの居る洞窟遺跡まで行くぞ。獣道があるとはいえ森ん中だからな。オレをちゃんと視界に入れて着いて来いよ? はぐれられたら面倒だ」
「りょーかい」
──歩くこと三十分弱。
少し油断すれば足を滑らせてそのまま滑落しそうな獣道を踏破し、目的地である洞窟遺跡のその前に到着した。
「す、スゴイ道でしたね……」
「うん。思ってたよりぜーんぜん道してなかった。意識してないと分かんないくらいのただの山肌だったんだけど……」
「だぁから言ったろ? 気ぃつけろって」
「ほ、舗装は無理でも、もうちょっと歩きやすく整えられないんですか? 定期的に通うように出来てないですよっ!」
「採取する人で歩きやすかったり慣れてるってんで使う道が違うんだと。本人たちはベテランさんだからもうあんま気にしてねぇみたいだしよ」
「だからってこれは……」
「非効率的すぎない?」
「これでも択ん中じゃ一番マシなルート歩いてたんだぜ? ブツクサ文句タレんな」
──と、オッサンがなんかドヤ顔混じりにボク等を煽ってくる。
調査員という職業柄、こういった荒れた道とか場所なんかには慣れてるのかもしんないけど、オッサンのクセに生意気だなー。
「──それで、この中に遺跡があって……」
「例のゴーレムが居るんだよねー?」
そしてボク等の目の前には、明らかに自然のものではない巨大な穴が崖にポッカリと空いてる。
二階建ての家くらいなら余裕で入りそうな入り口の周りは、これまで通ってきた鬱蒼とした森とはまるで違う草木の一本も生えてない閑散と荒れ果てたものになっていた。
どう見ても異質。どう見てもただの洞窟で終わりそうにない異様さを漂わせてる。
「中も遺跡が丸々収まってるだけあって中々広いぞ? 家具持ち込みゃあそれなりに生活出来そうな快適さがある」
「洞窟に住んで快適なワケないじゃん」
「いいやっ! これでもオレは魔物調査のために一月近く狭い洞窟で──」
「そーいうのいーから。んじゃ、入るよー」
「なっ!?」
オッサンを置いて洞窟に入る。
事前に洞窟内は別に複雑な構造してない一本道って聞いてたし、案内なくても問題無しっ!!
「いやちょ……。一応洞窟だって歩き方とかあってだなぁっ!! そもそもお前ら灯りとか──」
「はいはーい。歩きながら灯り兼、先導兼、解説よろー」
「くぉんの、ガキぃぃ……」
──そうして洞窟内を進むこと約五分。
そう長くない道程をオッサンの《光魔法》による灯りで歩く。
途中、突如現れた光に驚きコウモリなんかが何十と飛び立ったり、天井から滴る水滴に当たってキャサリンが驚いたり、初めて訪れた洞窟という環境に少し竣驪が怯えてたりと、短いながらも変に色々と下らない事があったりして、緊張感のカケラもなかったなー。
……んで、気付けばもう遺跡があるっていう入り口なんかよりももっと広い最奥の空間に辿り着いて、近くにあった大岩に一旦身を隠した。
一応作戦会議を兼ねての潜伏なんだけどー……。
「……オッサン」
「いや、その……」
「どういう事ですか?」
「だから、その、な?」
「ブルルンッ!」
「だからっ! 知らんのよオレもっ!!」
遺跡の周りは明るく、どうやら村人達がサワリガエシを採取しやすいようにって篝火を周囲に焚いてるみたい。
どうせなら洞窟の道中にも置いといて欲しかったけど、歩いて来るだけなら手持ちので充分って発想なのかな? はははは──じゃないよっ!!
「聞いてたのはさーっ!? 人型のゴーレム一体って話だったよねーっ!? なーのに何でそんな人型ゴーレムの隣に──」
ボクは勢いよく遺跡の近くに居る件のゴーレム……の隣を指差す。
「よー分からん獣型っぽい四足歩行のゴーレムまでいるのかなーっ!?」
想像してたよりなんかシュッとした鮮麗されたデザインした人型ゴーレムの隣に、なんか話に聞いてない明らかに狼やらの肉食四足獣を模したようなゴーレムが側にいた。
「……推測なんだが」
「えー?」
「何かが原因でゴーレムの本体が急速に増殖して分離──いや〝分拠〟した可能性があるな」
「ぶ、分拠って?」
「ゴーレムの本体である細菌型魔物の殆どは〝従属栄養細菌〟って有機物を分解して主なエネルギーとして利用してる細菌が魔物化してるものなんだが」
「え? う、うん……」
「ゴーレムの特徴として、ある程度の大きさや強さを獲得して生息圏で自分達の生存が安定すると、また別の身体を作る場合があるんだ」
「別の、身体を?」
「生息圏の環境にもよるが、その地が細菌にとって住みやすく有機物が豊富な場だと細菌は際限なく増殖を繰り返すんだ。だがそれ以上ゴーレムとしての強靭さを必要としない場合、細菌達は元のゴーレムから離れ、また別の依代を得て新たなゴーレムとして自立する……。それをオレ達は〝分拠〟と呼んでんだよ」
……つまりはアレ?
元々ここに居たゴーレムは話の通り一体だけだったけど、オッサンの調査後からボク等がここに来るまでの間にその分拠ってヤツが起こって新しいゴーレムが増えたって事?
なんじゃそりゃ……。
「えっと……じゃあなんであんな獣型なんですか?」
「……恐らくオレが一時的に洞窟の閉鎖を村人達に言い渡してたから、ゴーレムも人の模倣が出来なかったんだろう。だから迷い込んだかした野犬やら狼やらを模倣して獣型になったんだと思う」
「えー、でもコウモリとかの方が沢山いるよ?」
「言ったろ? ゴーレムは自身を脅かす存在を模倣すんだよ。コウモリがゴーレム襲うか? 野犬や狼なら、もしかしたら臭いかなんかで細菌の凶悪性に気付いて威嚇ぐらいならするかもしれん」
ふーん。なるほどねー……。
……ん?
ゴーレムは自身を脅かす存在を模倣する?
でもそれじゃあアレって……。
「とにかく、作戦の練り直しが必要になりますね……」
「え? あー、そうだね」
「戦闘要員がアタシ達二人である以上、やはり二手に分かれて各個撃破するのが定石ですかね。そうなると私が人型で牽制しつつ時間を稼いで、その間にグラッドさんには獣型を……」
「え。いやちょっと待ってっ!!」
キャサリンが何やらさも当たり前みたいに自分を囮にしようとかいきなり言い出したんだけどっ!?
「上司であるボクが部下のキミを囮になんて出来るワケないでしょっ!! なに言っちゃってんのさっ!!」
「お、囮だなんて大袈裟な……。アタシはただ純粋にそれぞれの戦闘スタイルから相性を決めてですね」
「だとしてもダーメっ!! 適性だとしても戦闘経験浅いキミにアレの相手なんてさせらんないよっ!!」
「……アタシを、信用してくれないんですか?」
……理由はどうあれ、分拠なんてするくらいには強さの限界にあるっていう人型の方を、未熟なキャサリンに任せるなんて出来ないに決まってる。
オッサンからゴーレムは依代にもよるけど基本的に鈍重だって聞いてはいるけど、だからって何かあってからじゃ遅い──
『ウィリアム……。妹、お願いね……』
──……。
彼女は、妹じゃない。でも……。
「ボクには、キミを守る義務がある。それを出来ないんじゃ、ボクみたいなのはボスどころか誰にも顔向け出来ないよ」
「グラッドさん……」
ただでさえ碌に罪も償ってない罪人上がりの身で、誰かを犠牲にしちゃうような選択なんて出来ない。
ボクはもう、ボクの周りで誰も死なせない。
「やるんなら二対一は原則。人型より獣型の方が多分動きとしては機敏だろうから、まずは二人で獣型を始末しよう。それから人型を──」
「やめた方がいい」
ボクの立案に、オッサンが横槍を挟んでくる。
「オレが言ったゴーレムの鈍重さは、あくまでも通常個体の話だ。見るにあの特殊個体の外見は通常個体のモノより大分スッキリした見た目をしてて得体が知れない。もしかしたら従来よりも遥かに俊敏な可能性もある」
「はー? 事前の打ち合わせじゃそんな事一言も……」
「二対一を確立出来んならそう大差ない違いだろうって判断したんだよ。だけど相手が増えたなら話は別だ。俊敏な相手二体にそれぞれ対処出来ないのは悪手なんじゃないのか?」
い、今更そんなこと言いやがってこのど素人めが……。
……はー。ならもう……。
「じゃー、一旦撤退するしかないかー」
「え?」
「情報が足んなすぎるよー。せめてある程度行動を観察して、その俊敏性がどれほどのもんかちゃーんと確認してから改めて挑もーよ」
なにも焦る必要は無いんだ。
村人達には悪いけど、サワリガエシの採取はもう少し延期してもらって、そんでしっかりと対策を練った後でも充分に──
「いや、オススメしない」
……はー。
「そ、そんなに睨むんじゃねぇよ……」
「……で? 今度はなに?」
「いや考えてもみろよ? 短期間の間にゴーレムが分拠して増えたんだぞ? 時間を掛けて作戦練んのはいいが、その間にまた一体ゴーレムが増えたらどうすんだ?」
「あー……。なるほど?」
「しかもその間にも獣型のゴーレムの方も増殖して今よりデカくなるかもしれねぇし、なんなら人型と獣型からそれぞれ一体ずつ増えて四体になっちまうかもしれない。そうなったらいよいよ手が付けらんなくなるぞ」
「え。ゴーレムって、そんな速さで増えるんですか?」
「通常個体ならそんな事ねぇよ。例え意図して栄養与えたとしても、少しずつ魔力が欠乏していって最終的には普通の細菌に戻っちまう」
……意図して栄養を……。
「な、ならアレも……」
「可能性は無くはないが、この短期間で増えた事を考えると望み薄だな……。洞窟内で遺跡近くだから材料だって山ほどある。楽観視はやめた方がいい」
……まー、オッサンの言い分は一理ある。
今ここでゴーレムがマシな状況で叩かないと、取り返しの難しい事になる。
後々になってボク等じゃ処理出来ないだなんて報告出来ないし、ボスに尻拭いをお願いするハメになりかねない。
何より洞窟を飛び出して村にまで降りて来たら最悪だ。
……でもなー……。
「そーは言っても、ボク等二人でアレを相手取るなんて結構な無茶だよ。せめて後一人くらいは……」
そー口にしてオッサンに目を移す。
するとオッサンは慌てて頭を振り、両手で明確に拒否する素振りを見せた。
「無理に決まってんだろぉっ!? 護身用の剣ぐらいは一応持って来ちゃいるが、お前等のやろうとしてるような技術オレにはねぇぞっ!?」
「……囮にくらいなら」
「バッカ体力持たねぇよっ!! オレを殺す気かっ!!」
んー、まー、最悪そうなったらボス評判に関わるかもしれないしなー。
でもなー。色々と腑に落ちないところもあるしなー。
オッサンに囮にしたらそっちの確認も──
「ブルルンッ!!」
「え?」
ボク等は振り返る。
そこには「なんで私は除け者なワケ?」とでも言いたげな顔をした竣驪がボク等を覗き込んでいた。
「……マジで?」
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「……」
「……」
「ロリーナ、そっちのオイスターソースを取ってくれ」
「はい。あ、クラウンさんコチラの塩加減なのですが……」
「……うむ。流石だ素晴らしい」
「ありがとうございます」
あたし達は今、食卓に座ってる。
それも普通の家とかじゃない。あたし達をムリヤリ捕まえた悪い人たちのおっきな家……そのダイニングテーブルを前に座ってる。
「ホラ、出来たぞ。キノコとベーコンのパスタ、オイスターソース仕立てだ」
赤と黒の髪の人が、あたしとポーンの前に二皿の料理を置く。
作ってる最中からずっとしてた匂いが強くなって、お腹が大きな音を鳴らす。恥ずかしいけど、でもそれどころじゃない。
「遠慮するな。使った食材も調味料もこの屋敷にあったありモノだが、味は保証しよう。当然、毒なども入ってないからな」
赤と黒の人がエプロンをどっかにしまいながら優しい声でそう言ってくれる。
あたしはもう食べたいけど、ポーンが全然、用意されたフォークを手に取らない。
「……何、考えてんだ」
「む?」
「オレ達みたいな汚いネズミに、なんでいきなりメシなんか作るんだって聞いてんだよ」
ポーンは赤と黒の人を怪しんでるみたい。
気持ちは分かる。あたしも色んな人に騙されてきたから。
でもさっきの──この人から感じたあの重たい感じのヤツがあたし達に来たらと思うと……。
「なに、そう難しい話じゃない。……お前達に、単にそうするだけの〝価値〟があるからだ」
「……価値?」
かち? それってお金とか、そういう話なんじゃないの?
あたし達、売られちゃう?
「子供というのは可能性という名の宝石の原石だ。正しい手順と環境で丁寧に磨き上げ、最上級の輝きを宿してやる……。そしてそれがいつしか私を楽しませる未来へと至るのだ」
「……意味分かんない」
「そうか? 要はお前達に面白い可能性が見えたから、こうして手ずからもてなしてやっているというだけの話なのだよ。ただの私の自己満足と我欲の為。決してただの慈善ではないから勘違いするなよ?」
──? つまり、あたし達を助けてくれる……って事?
「ウソだっ! どうせお前だってオレ達を食いモンにしようって──」
「だからそう言ってるだろう? 私はお前達を利用して楽しい思いを将来的にする為に世話をする、と」
「え? あ、そ、そっか……」
んん? どういう、こと?
「さぁ、冷めん内に食べてしまいなさい。マルガレン、二人に紅茶を」
「はい坊ちゃん」
料理の横にお茶まで出される。
えっと……。
「ああ、もしおかわりが欲しかったとしても後でな。これでも私は仕事中でな。食事の続きは私が世話をしている子達の元に送ってからに──」
「ちょっと、元帥閣下っ!!」
赤と黒の人の話を途中で止めて、ここの一番偉い人が入って来る。
なんか少し怒ってる感じで……。
「なんだ?」
「なんだではありませんっ! 勝手をされては困りますっ!」
「それは私がお前達の食料を使った事にか? それともこの子達に料理を振る舞った事にか?」
「両方ですよっ!!」
「そうか。なら飲み下せ。器量の狭さが透けて見えるぞ」
「──ッ!?」
赤と黒の人が、ここの偉い人を突き放す。
これって、仕事なのかな?
「こんの……いい加減にぃぃ──」
「ただいま戻りました頭領っ!!」
偉い人が何かを言いかけると、その後ろから背が高くて細い人が入ってくる。
偉い人がその人の方に振り返ると、偉い人はさっきまでしてた怖い顔をすぐに明るくした。
「おおっ! 帰ったかシェイっ!!」
「遅くなり申し訳ありません。なにぶん、無差別に襲ってくる故に……」
「言い訳はいいっ!! ……へ、へへへ」
偉い人が笑って、赤と黒の人をいきなり指差す。
「……随分と下卑た笑いを浮かべるんだな」
「へへへ、言ってろクソガキっ! 散々生意気を──」
「おっと。獣は獣でも鶏の類だったか? さっきまであった最低限の礼節が抜け落ちているぞ? 抜け落とすのはその薄ら禿げ出した禿頭だけにしておけ」
「ぬぁっ!? い、言わせておけばァァッ!!」
「ふふふ、凄んでも滑稽なだけだぞ? ……それで? そこまでのピエロになってまで用意してくれたサプライズというのはどんなものだ? 期待していいんだろうなァァ?」
「くっ……。ぬぅぅ、つ、ついて来いっ!!」
そう言ってポーンとあたしを残して全員が出ていく。
あるのは目の前のまだ湯気を出すパスタと紅茶の二つだけ……。
「……ポーン?」
「な、なんだよ」
「……食べよ?」
「……そう、だな」
……パスタは、今まで食べてきたものの中で一番おいしかった。
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