第一章:四天王の華麗なる艱難-7
──『特殊個体の取り分はコチラが八、魔物討伐ギルドに二の分配だ』
『……え? はぁっ!? なんでっ!?』
魔物討伐に出立する数日前。
私達は討伐完了に際する〝分配〟についてボスから説明を受けた。
『い、や、待って待ってっ! 私達が討伐すんのに何で向こうに割合が発生すんのよっ!?』
ボスが言うには、今回私達にやらせる特殊個体魔物の討伐で発生する利益の二割を、魔物討伐ギルドに渡さなければならないという事らしい。
正直この時は納得のいかない話だと声を荒げちゃったけど……。
『じゃあ君は、倒した魔物の素材全てを自らで消費出来るか?』
『え?』
『小型の魔物ならばそれもあるだろう。が、今回君達に討伐に当たらせる特殊個体の魔物に共通している特徴の一つがその大きさだ。どれにしても最低十メートルは越える可能性があると、数少ない情報の中にある』
『じゅ、十メートル……』
『どんな魔物にもよるだろうが、十メートル級ともなれば実入りはそれなりの量になる。それこそ、最大人数で向かう君達五人分でも優に賄えるだけの素材と見返りがな。寧ろ消費し切れるかも怪しい』
『そ、そりゃそうでしょうけど……。だからって代わりに倒してやってんのに何もしてやないヤツらになんて……』
『別に何もしないわけではないぞ』
『え?』
『魔物の解体……君らは出来るのか? 有効素材の知識は? 繊細な素材の取り扱い方は熟知しているのか?』
『あ、あぁ〜……』
『分かったろう? 我々素人では魔物の解体は不可能だ。蓋しこの仕事はギルドからの依頼という形であり、それに関する情報提供や細かな処理に関しては協力義務があるが、解体に関しては別件。故にその解体料を事前に契約で済ませる形を取っている』
『それが二割? それにしたって少し多い気も……』
『特殊個体の魔物だぞ? 自然発生する魔物と違って生態や体構造は違ってくるし、解体難度も高いだろう。そうなれば解体師にはそれなりの腕を持つベテランを数名は充てねばならんし、魔生物学の専門家も呼び寄せる事になる。その人件費が大半だ』
『なるほど、ねぇ……』
『言っておくがこれでもまだ安いもんだ。通常はここに魔物の死体を運ぶ運搬ギルドやらその護衛と、そんな彼等を道中に養う食糧や飲料、緊急時の回復術士や医療品だって別件だ。通る領地によっては関税だって取られるだろう。そうなれば半額以上は最低でも持っていかれるな』
『うっっわエゲツなぁ……』
『その点、死体運搬は私が渡すこのポケットディメンションの魔法陣が刻まれたスクロールで全て解決。掛かるのは解体料のみだ。そう考えれば、大分マシだろう?』
『はぁ。分かったわ。納得する……』
『因みにだが』
『ん?』
『この件で文句を言ってきたのは君だけだ』
『は、はぁぁぁぁっ!?』
──というわけで、私達は何とか依頼されていた特殊個体魔物トレメンダス・センチピードの討伐を果たした。
その場で簡単な治療の後、死体は予定通りポケットディメンションのスクロールで回収してから宿に戻ろうとしたんだけど……。
「……」
「……」
「……なぁヘリアーテさんや」
「ぁによ。バカみたいな声出して」
「宿に……戻るんでないの?」
地面に汚れるのを厭わず寝そべるギデオンが気の抜けた声でそんな事を聞いてくる。
そりゃあ、私だって宿戻ってちゃんと身体と心を休ませたいけど……。
「……動く気力、無いのよ」
流石は特殊個体の魔物ってだけあって、かなりの強敵だった。
ただ、やっぱり魔物は所詮は野生生物の延長線上でしかなかったわね。
ギデオンを仕留めるためにやったあの小賢しい一芝居には驚かされたけど、別にあの後に同じような事はして来なかったし。
別パターンも少し想定したけど、結局は最後まで魔物らしい野生的な攻撃だけになった。
もしかしたらヤツに体力が残ってたら仕掛けて来たかもしれないけど、それまでに攻撃を食らい過ぎたんでしょ。
私の特大の一撃は勿論、ギデオンからもらってた攻撃だって動きが悪くなるくらいには明らかに効いてたし、ヤツも焦ってたんじゃないかしら。
まあ、虫──じゃなくて節足動物? 特有の無尽蔵のスタミナのせいで全然疲れ見せなかったからこっちもちょっとだけキツかったけど……結果としては勝ち。
はぁぁ……。疲れたぁぁぁぁぁ……。
「……なぁヘリアーテ」
「今度は何よ」
「……俺、役に立ててたか?」
……なに? 急に……。
「正直俺、全く自信とか無くてさ。つぅかここ最近は自信持ってた事の方が少ないんだけど……」
「……ええ。見てるこっちがイライラするくらいね」
「あはは……。……始めたばかりの両手剣もちょっとずつマシになって、近々魔法も混ぜられんじゃねぇかなって考えたりして、ホントちょっとずつだけど、自分のやり方ってのが出来て来た気がすんだよ」
──ギデオンは最初、自分オリジナルのスタイルを色々と模索してた。
槍だったり斧だったり短剣だったり飛び道具だったり手当たり次第に使ってみてて、私もそれに出来る限り協力した。
でも私も所詮はボスに未だ習う程度の知識と力量しかないから、暗礁に乗り上げたみたいに何も進展しない日が続いたり……。
私から見ても中々に苦しかったんじゃないかと思う。
それでも両手剣に何かの手応えを感じて、それを信じてがむしゃらに励んで……そう言えば両手剣の訓練に苦心してるのを見たボスが──
『……ほう』
『あ。ボス……』
『面白い事を考えたな。教本にはない奇抜な剣術じゃないか』
『わ、悪いかよ……』
『まさかっ。実に興味深い。正直お前にそこまで期待していなかったが……』
『は、はぁっ!?』
『ヤル気があるならば一層の事、そのまま新体系でも築いてしまえ。開祖として確立すれば、最早お前を凡夫などと思う奴は居まいよ』
『凡夫って……。つぅか、し、新体系とか開祖とか……んな大袈裟な』
『大袈裟なものか。……新たな道の開拓は須く険しいが、存外にお前みたいな奴が小さいながらも進んで生み出していくものだ。実に興味深く、面白い事この上ないじゃないか』
『……そういう、もんか』
『精進しなさい。ヘリアーテや他の上司、同僚やロリーナ……無論、私を存分に頼りなさい。険しい道を笑って歩める努力と研鑽を、私達は全力で助けてやる』
「──っっ!! ああっ!!」
──ホント、ボスって人をヤル気にする天才だと思ったわね。
アレからギデオンのヤル気も上達っぷりも上り調子だったし、おかげでこの場──特殊個体魔物を相手に危なっかしくも戦えるまでに仕上がった。
なんだか私じゃなくてボスに励まされてって部分はちょっと引っ掛かるけど……。少なくとも今私がコイツに言うべきなのは──
「なぁ。俺は、ちゃんとやれて──」
「なぁに言ってんのよ」
「え?」
「アレ倒せたの、半分はアンタの攻撃でよ? ちゃんとやれてたに決まってんでしょ」
「そ、そうか? ……でもただチクチク地味〜にやってだだけだぞ?」
「だから何よ? 言っとくけど私が入れたあの派手な一撃が出来なきゃダメなんて無いんだからね。そりゃカッコよくて決めれんならやり応えもあんでしょうけど、地味でも倒せりゃ結果同じよ」
「そういう、もんか?」
「これはボスの受け売りだけど、過程に拘りたかったらまず結果を安定させろ、って……。アンタのやり方はまだまだ発展途上なんだから、そんな焦るんじゃないわよ。ボスに「生意気だな」って笑われるわよ?」
「ゔっ……。わ、わぁったよ。勝ったんだからもうウダウダ言わねぇよ」
「そうそう。今は取り敢えず喜んで浮かれてなさいよ。私達が帝国の騎士学校に留学してる間、アンタ達が学院で睨み効かせなきゃなんないんだから。シャキッとなさいシャキッと」
「あはは……え?」
ギデオンが突如、微動だにしなかった身体を起こして苦笑いを浮かべながらコチラを見て来る。
髪とか化粧とか乱れまくってるし埃まみれだからそんなまじまじ見られたくないんだけど?
「あ、あの……ヘリアーテさん?」
「もう、今度は何?」
「いや、なんかちょっと聞き捨てならない事言わなかった? え? 睨みを効かせる?」
「当然でしょ? 今はボス率いる私達の派閥一強って感じで大人しくしてるけど、私達が留学したら学院の生徒達、これ幸いにって調子づいて派閥争い始めるわよ」
──学院には元々、権力者の嫡子や魔法強者を中心とした派閥が生まれ易い傾向にある。
一応学院内では親の権力とかは通じなかったりするけれど、それでも帝王学をある程度叩き込まれてたりする貴族家の嫡子なんかは、自然と他を引き連れるような構図にはなったりする。
そしてそれに対抗するような形で、親に強い肩書きは無いけど魔法の才能がある強者で徒党を組む派閥もまた、幾つか生まれるってわけ。
私が親から聞かされてたのは、今までの学院内の派閥はそんな感じで出来ては消えてを繰り返してるらしく、中には代々先輩後輩で派閥主を継承するような古株の派閥もあるって話。
だからそれを踏まえて私なんかは学院に入学したんだけどねぇ。完全に無駄になったわ。
どこの派閥に入ったらお得か、はたまた私が派閥を作るのか……色々悩んでたんだけどねぇ。
まさかそんな派閥云々の事情なんて路傍の石みたいに気にせず一蹴して、天辺で踏ん反り返っても誰も文句言えないような奴が居るなんて、誰が思ったかしら。
オマケにそんな奴に目を付けられて半ば強制的に部下にされて……。当初の思い描いてた学院生活なんてキレイさっぱり吹き飛んだわよ。
……んで、今じゃそんなボスの率いる私達の派閥──まあ、ボスに派閥意識なんて矮小なもの微塵もないだろうけど──が学院内での圧倒的な一強状態を保って安定してる感じ。
他の派閥なんて、古参含めて最早ただの仲良しグループくらいに縮こまってる始末。
みんながみんなボス率いる私達「十万億土」の面々に頭が上がらない状態で日々を過ごしてた……けど──
「魔法魔術学院は国一──いや世界一の魔法学校よ? そんなとこに在籍してるような奴等がこのまま大人しくなんてしてると思う? 絶対に私達が居ぬ間に盛り返してやろうって反骨精神燃え滾らせてる奴等が暴れるわね」
「ま、マジかよ……」
「そ。ボスは勿論、私達幹部やロリーナなんかは戦後のあの凱旋式の時に大々的に表彰されたから逆らおうなんて輩は現れなったけど、アンタらは私達の後ろに隠れちゃってたからねぇ。侮ってくるヤツも居んでしょ」
「そ、それは……まあ、うん」
一回移動教室で学院内を移動してた時、ロセッティの部下のミレー君が教室でちょっとヤンチャな連中に難癖付けられてたの見たのよねぇ。
確か「ただの腰巾着」だの「運が良かっただけ」だの「俺の方が相応しいから代われ」だのって喚いてて、気の弱いミレー君が隅に追いやられてたっけ。
助けた方が良いかなって思ってたら、その時はたまたまなのかロセッティがミレー君に用事があって教室に来て、囲んでたヤンチャな連中を絶句するような皮肉と毒舌でギタギタにして助けてたけど……。
まあミレー君は気弱だから絡まれやすい面はあるだろうけど、あの様子だと他の子達も強弱はありこそすれ色々と言われてるんでしょうね。
「正直な話、ボスは全く気にしてないわ。アイツにとって派閥なんてあってないようなもんだろうし、アイツからしたら生徒全員がいつか自分の部下になるかもしれない人材か、自分を楽しませる何かを生み出せるかもしれない未開封のプレゼントボックスでしかない。どうせ留学終わって私達が戻ったら元の木阿弥だろうしね」
「な、ならそんな頑張んなくても……」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。アイツは派閥は気にしないけど自分達の評価は気にするわ。アンタらが学院放ったらかしにして「なんだ案外大した事ないな」なんて学院に知れ渡ってみなさい? 別にアンタ達のせいにはしないでしょうけど、少なくともボスの心象は良くないわよ」
「それは……そうだな。うん」
「アンタも今更ボスが気に食わないわけじゃないでしょうし、私達が居ない間くらい気張りなさいよ」
「あ、ああ。やれるだけ……やるわ」
「ええ、頼んだわよ。……まあだけど」
「ん?」
「ボスに頼めば、私達簡単に帰って来れるでしょうけどね」
「……」
「手に負えなきゃ言ってきなさい。締めにいくから」
「……もうそれで良くね?」
──そこから三十分くらい地べたで動けずにいると、様子を見に来たジーデイの人達が私達の有様を見て駆け付けてくれた。
死体はしまってて無いから最初は討伐失敗を疑われちゃったけど、討伐の証拠に残してた身体の一部を見せて成功を認めて貰った。
その後は彼等の肩を借りて宿まで行き、町の治療院から出張してくれた回復術士に傷を回復させて貰い。
その日はもうベッドにダイブして熟睡して身を休めてて──
「……」
「やぁ。諸君。討伐ご苦労様。よくやってくれた」
「……ホントにそう思ってんなら、今日くらいはゆっくりさせて欲しかったんだけど?」
夜。空腹で目を覚まして少ししてからさも当たり前みたいにボスであるクラウンが宿に姿を現して、笑顔で私達を労って来る。
何日も掛けてちょっとした旅して来たのにこうもアッサリ訪ねて来られると割と複雑なんだけど?
「まあそう言うな。試練を乗り越えたばかりのお前達に追い打ちを掛けるほど人使いは荒くはないぞ? 私は」
そう言うとボスは一緒に来たロリーナとマルガレンと共に宿のロビーに何やら色々とセッティングを始める。
中央に大きなラウンドテーブルを設置してテーブルクロスを引いて次々と料理を──って、んむぅっ!?
「町の人から話は聞いた。碌に食わずに寝入ってしまったんだろう? 幸い宿の宿泊者は君達だけのようだったから貸し切ってな。ロビーで食事を堪能して貰おうかと思ってな」
ラウンドテーブルとは別のテーブルに並べられる料理の数々……。
ローストビーフの塊に芳醇な香りを漂わせる数種類のスープ。新鮮な野菜で好きなサラダを手作り出来るサラダバー。
大きな魚のアクアパッツァに、さっきオーブンから取り出したんじゃないかってくらいにテリテリしたチキン。
ビーフシチューみたいな煮込み料理に、確か一個銀貨数枚もする高級海鮮のバターソテー。
取り取りの種類のパンやパスタまで……。一瞬で少し広めのロビーに嗅いでいるだけで涎が垂れそうな香りが溢れ返った。
「今は出せないけど甘いものも用意してあるから、欲しくなったら言ってねヘリアーテちゃん」
「お飲み物も揃えてありますのでお申し付けくださいね。あ。オススメは一息つきたい時の僕特製のハーブティーですので是非」
「他に食べたい物があったら言いなさい。流石に手の込んだものは無理だが、ある程度の要望には応えよう」
……別に忘れてたワケじゃないけど、そう言えばウチのボスはこういった事をしたがる人だったわね。
なんというか、人を喜ばせたりするのが好きというか、笑顔が好きというか……。
「……アンタって、もしかして善人?」
「失敬な。私が甘やかすのは君達身内と私の為に身を粉にしてくれる者だけだ。善人などという薄気味悪い人種と一緒にされては困る」
「ひっっねくれてるわねぇ……」
ホント、側から見たらこんな事するヤツの何処が魔王なのよって感じだけど、やる時はやるからなぁ……。油断しちゃ痛い目に見るかも──
「甘やかされる側は大人しく私に懐柔されていなさい。ホラ見ろ。君の部下達は既に大盛り上がりだ」
「……え?」
振り返って見れば、ギデオン、ミツキ、ホーリー、ジョンの四人はまるで子供みたいに用意された料理に群がり、それぞれ思い思いの物を皿に盛って美味しそうに頬張っていた。
「あ、アイツらぁぁっ……。上司である私を差し置いてぇぇっ!」
「ふふふ。こんな場で上下関係をひけらかすもんじゃないぞヘリアーテ。別に簡単に無くなってしまう量でもあるまいに」
「そりゃ、そうでしょうけど……」
「細かい事は気にするな。今は取り敢えず部下達と労を労いながら料理に舌鼓を打っていなさい。それが今君のする仕事だ」
「……アンタも忙しいでしょうに。悪いわね」
「なぁに。これ含めてのスケジューリングをしているから心配無用だ。ホラ。君の好物のふわふわトロトロのオムレツもあるぞ?」
「えっ!? でもテーブルには……」
「作りたてでなきゃ萎んでしまうからな。さぁ、選べ。今すぐ食べるのか、それとも──」
「食べるっ!! 今すぐっ!!」
「ふふふ。では作って来よう。ああ因みにパンケーキの準備もしているからな。勿論、王室御用達ジーデイ産のイノセントドロップたっぷりのな」
「あ、悪魔的ねっ!!」
「魔王的と言いなさい。ふふふふふふ……」
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ヘリアーテの労いにジーデイに向かう、少し前。
エルウェの語った聖魔の性質を宿した魔物の話は私を誘き寄せる為の作り話であったが、彼女曰く元ネタがあるという事。
──それはかつて、我が愛蛇であるドーサの名付け元にもなった「嫉妬の魔王」の眷族であった魔蛇が、アールヴの守護聖獣シェロブと死闘を繰り広げたという。
その際に互いの最大火力攻撃による魔と聖の魔力がぶつかり合い、霊樹トールキンの性質も相まって小さく特殊な魔石が生まれた。
聖魔の魔石の特異性は異質を極めており、触れた者の魂の善悪や正邪の感情が暴走し、人格をまるごと変異させてしまう。
故に触れられるのは自身の魂がどちらか片方に極端に傾き、振れ幅を最小限に抑えられる者のみであり、それを有効的に扱える者となると更に極限まで限定される。
そうなると必然的に魔王か勇者くらいしか安全に扱う事が出来ず、発見当時は当代の「忍耐の勇者」がそれを管理する事で落ち着いた。
そして今現在その聖魔の魔石が何処にあるかというと──
「ええ。構いませんよ。お譲りします」
「……有り難き幸せ」
聖魔の魔石の管理は先代「忍耐の勇者」が亡くなりアールヴの王室で管理されていた。
どうやら密かに以前のユーリが運び出していたようで、ただ使い道が思い付かないが為に持ち腐れでいたらしい。
王室の管理とあって正当な入手は難しいかと懸念しながらダメ元で今の善良な精神性を有するユーリに願い出て見たわけだが……余りにアッサリ承諾されてしまった。
これでも色々と交渉する為に準備はしたのだがな……。
「貴方には随分とご迷惑をお掛けしましたからね。何らかの形で返礼は考えていたのですが、如何せん貴方は大概のものはお持ちのようでしたのでどうしたものかと思案していたのです」
「……左様ですか」
これは……アールヴの大臣達の差金も混ざっていそうだな。
私への無害アピールの一環なのだろうが……。まあ、害する意図が無いのなら構わんがな。
「ですがどうか扱いにはお気を付けを。貴方の事ですから対策は済んでいるのでしょうが、下手をすれば貴方へも少なからず影響が……」
「ご心配には及びませんよ女皇帝陛下。私は間違えませんので」
「うふふ。そうでしたね。今後の活躍に期待していますよ。クラウン」
「はっ。必ずご期待に応えてみせます。ユーリ女皇帝陛下」
……あぁ。本当に未だに慣れんな、このユーリには。
私がやった事とはいえ、多少は悪性を残しても良かったのかもしれん。
本当に、気持ち悪い。
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