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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第四部:強欲若人は幸せを語る
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幕間:怠惰の友情・会

 


 俺様には、古馴染みが二人いる。


 出会いは五十年くれぇ前で、そん時ぁ今みてぇに色んな(しがらみ)なんぞ無い、ただただ偶然が重なって出会った、バカなガキの集まりだった。


 あれは、そう。ウチのマスグラバイト王国とシュターデル複獣合衆国がティリーザラ王国と同盟国会談を催した時だ。


 俺様はぁ当時の外交官だった親父に連れられてティリーザラにある大使館に来てた。


 つっても、俺様はガキだったもんだから待ちぼうけ……。社会見学つってムリヤリ連れて来られたってのに、ヒデェ話だ。


 んで、俺様は大使館中で出歩いていい場所を、ひたすらに暇潰しで歩き回って……アイツ等に出会った。


 そこは大使館の中庭で、立派な一本の木が植ってる根本で、楽しそうに談笑してたのを覚えてる。


 一人は人族のガキで、見るからに頭の良さそうなヒョロヒョロの男。


 着てるもんもガキの目線でも分かるくれぇの一級品で、一発でこの国で一二を争う権力者のガキだってのが分かった。


 んでもう一人が、狼のツラをしたガキ。獣人族だ。


 銀色の燻みの一切無い毛並みに、ガキのクセに妙に知性を感じさせる鋭い眼。身なりも人族のガキ程じゃあなかったが、それなりに整えたもんを着てた気がする。



 俺様はぁ暫く、そんな楽しそぉに談笑してる二人を遠目から覗いて、盗み聞きをしてた。当時の俺様はぁシャイだったからなぁ。ズケズケ行けなかったんだ。


 談笑内容は、これまたまぁ理知的。


 人族の方は魔法や魔術の知識や理論を。


 獣人族の方は錬金術の知識や理論を。


 そりゃあもう専門家(さなが)らに語り合ってた。実に頭の良い会話だったなぁ。


 盗み聞きしてた身としちゃちんぷんかんぷんだったが、不思議と聞いてて飽きなかった。


 だがそれも長くは続かない。


 獣人族ってのは基礎的な身体能力が高ぇらしくって、俺様が盗み聞きしてたのを獣人族の方が耳だから鼻だかで突き止めたんだと。


 観念した俺様はそこから出て二人に面と向かって……。んで、盛り上がった。


 不思議だったなぁ。初対面であんだけ気が合って、一瞬で打ち解けたんは同種でも無かった。それがまさかバラバラの種族同士でよぉ。


 人族の──ティリーザラ王国第二王子のルーブスは俺様に魔術によって鍛治技術が飛躍するって話を。


 獣人族の──シュターデル複獣合衆国の外交官の息子だったニコラスは錬金術で未知の素材のを構成する夢の技術の話を、それぞれに熱弁してくれた。


 俺様は──このバナー・キャリウムサニッド様はそんな二人に武器や道具について熱く語った。


 それを二人は目を輝かせながら聞き耳を立てて……。


 今思えば、あの時、あの瞬間が、俺様達にとって一番幸せだった時かもしれねぇ。


 策謀や裏の思惑……。後ろ暗い過去や犯した罪の数々……。そんなもんが一切絡まなかった、あの瞬間が、一番……。


 ……。


 ……はぁ、もうよそう。


 少し前に久々に三人と長時間話しちまったせいで、少し感傷的になってやがる。情けねぇ。


 《怠惰》の内包スキル《忘却》のせいでたまぁに記憶が飛ぶからって理由で日記をこうして書いちゃいるが、いくらなんでもこんな事を書いてもなぁ……。


 ……いや、寧ろ増えちまうかもな。


 ルーブスが──ああ、今は確かサンジェルマン、だったか? またケッタイな名前を名乗りやがって……。


 で、そんなヤツがアールヴでの長期的な潜入から戻った事で、度々また顔を合わせるだろうよ。


 そうなったらまた、繊細な俺様の心はきっとつい感傷的になっちまう。そしたらまた書いちまうかもな。


 ……。


 ……あん時から、状況は一変した。


 ルーブスが壊れて、ニコラスが壊れて、俺様が壊れて、何もかもが変わっちまった。


 オマケに変な黒尽くめのヤツまで混じりやがったから更にだ。本当、ややこしくて敵わねぇ。


 だがこれも、俺様達の夢の為だ。未来の為だ。


 《怠惰》の〝意志〟に逆らって、権能の制御がままならなくなってまで働いて、動いて、暴れる……。それがルーブスの……ニコラスの為になる。


 壊れちまった俺様達の、最大限の足掻きだ。


 それを少しでも……少しでもマシになるってなら、俺様は……。


 ……これ以上は余計、だな。


 そろそろ〝休息月〟だ。でねぇと《怠惰》が暴走しちまう。アイツ等に迷惑、掛けちまうならな。


 酒呑んで寝る。


 んで、万全を尽くすんだ。


 例えそれが、非道と邪道と罵られる道でも……。

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― 新着の感想 ―
怠惰のユニークスキルの人、スキル関係無い元の性格もしかしてスキルと相性悪い? 「忘却」のデメリットが辛いなぁ
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